増刊号 闘強導夢2000観戦記


 私は職業柄、2000年問題に思い切り関係があったのでその対応のため、今回のドームは行けないものとあきらめていました。それに、どうせ長州対大仁田をやるだろうと予想していたので、だったら別にいいかと思っていました。しかし、大仁田は出ず、小川が出るということになり、また2000年問題の方も思ったほどの混乱がなかったので、徹夜明けをものともせず行ってきました。これで新日の東京ドーム大会は皆勤賞継続です。
 昨年の1月、4月の東京ドーム大会、神宮大会と、大仁田起用の路線は私には最悪の興行でしたが、10月の橋本対小川の再戦、大仁田不出場は良かったです。今回のドームはその路線を進んでくれて満足できる興行でした。要するに猪木路線が私は好きなんだということですけど。
 今回のドームはカード的にはドーム級の豪華さというわけではありませんでした。前半はライガー対金本のIWGPジュニア戦が予想外れのライガー圧勝に終わり、藤田対キモが不透明な反則決着だったり、ノートン対フライ、サベージ対リック・スタイナーが凡戦に終わったりで、あまり盛り上がりませんでした。アメプロ自体は、私は嫌いではありません。海外に旅行したときにテレビでWCWやWWFの中継を見ていますが、非常に楽しく見ました。サベージもリックも向こうではトップのレスラーですから、きっとアメリカで試合をすれば大盛り上がりなのでしょうが、何故か日本では凡戦になってしまいます。日本とアメリカの文化の違いで しょうか。
 山崎の引退試合では、前田と高田が並んで観戦している姿がオーロラビジョンに写り、どよめきました。そこで観客のボルテージは上がったのですが、その後の藤田対キモの反則決着でテンションは下がってしまいました。タイガー服部は毎度のことながら、レフェリングが不明確で本当に下手クソです。レフェリーというのは非常に重要なポイントです。レフェリー次第で名勝負がぶち壊しになることもあるのですから、もっとしっかりやってもらいたいと思います。
 停滞気味の会場の雰囲気を一気に変えたのが猪木の登場でした。炎のファイターのテーマ、「道は例え険しくとも、笑顔で行けよ」のメッセージ、そしてダーで観客のボルテージは頂点に達しました。そのまま橋本&飯塚対小川&村上の因縁タッグマッチに突入しましたが、この試合がまた最高でした。最初は大混乱となり、一度はノーコンテストとなりましたが、ここで猪木が登場、「俺が立会人だ。お前ら正々堂々とやれ。試合続行!」の言葉で試合が再開。こうしたパフォーマンスも含めて猪木イズムを感じさせる試合でした。このところまったく日の目を見ることのなかった飯塚が久し振りの大舞台できちんと結果を出したことも良かったです。橋本と小川の再戦は橋本がある程度の実績を示してからにして欲しいと思っていましたが、このタッグ マッチの勝利で、再戦もOKだと思います。
 セミの蝶野対武藤も地味目ながらしっかりと自分たちのレスリングを見せてくれて良かったです。出来ればIWGPのタイトルを賭けて頂上対決をして欲しかったですが、黒の統一戦というテーマがありましたから、ベルトは不要なのかもしれません。今後、2人の関係がどうなっていくのかも興味深いところです。
 メインの健介対天龍もいい試合でした。流れからして健介が雪辱するのは確実に思えましたが、体ごと真っ向からぶつかったあの試合は2人でなければ出来ないでしょう。
 鈴木建三は、当然のことながらレスラーとしてはまだまだですが、その恵まれた体は将来性を充分に感じさせます。残念なのはゴールドバーグの欠場です。ビデオでしか見たことはありませんが、ゴールドバーグは非常にいいレスラーで、最後の「未だ見ぬ強豪」という感じです。早く来日して欲しいですし、日本人レスラーとの対戦が見てみたいです。
 「ドームで長州とノーピープルマッチ」とぶち上げていた大仁田が現れなかったのも良かったです。試合開始前にドームに現れて「返事がなければ逃げたとみなす」と言っていたそうですが、別に大仁田に逃げたと思われても構わないので、もう関わり合わないで欲しいと思います。このままUFOとの対抗戦路線を進んで欲しいです。前田と高田が会場に来ただけで、気が早いですが、リングス、高田道場とも交流という夢も広がります。
Vol.50 99年総括

 今年のプロレス界で最大の出来事といえば、何と言ってもジャイアント馬場さんが亡くなったことでしょう。この悲報には本当に驚かされましたし、大きなショックを受けました。同時に、マスコミの大きな扱いを通じて馬場さんの偉大さを改めて知ることにもなりました。結果的に生涯現役を貫いたことになったのも本当に立派だったと思います。
 女子プロレスのジャッキー佐藤さん、往年の名レスラーであるヒロ・マツダさん、オーエン・ハートの転落死もありました。悲報が多かった1年のように感じます。
 前田日明、ジャンボ鶴田、マサ斎藤らのレスラーも引退しました。昭和プロレス世代の私にとっては何とも寂しい1年でした。
 結局、プロレス界は過渡期にあるということでしょう。馬場さん亡き後の全日本は、三沢が社長に就任し、多少の改革は見せつつも馬場さんが築き上げた王道プロレスを継承しています。全日本は本当に誠実な団体です。決してファンを裏切ることがありません。いつまでもその姿勢を変えないで欲しいと思いますし、全日本ならきっといつまでも変わらないという確信が持てます。他の団体も見習って欲しいものです。
 もう一方のメジャー新日本は、例年通り1月4日、東京ドームで、大仁田の参戦、橋本と小川のケンカマッチという波乱の幕開けでした。これによって猪木との完全決別、長州VS大仁田ストーリーを歩んでいったわけですが、この流れは古くからの新日本ファンである私にとっては実に腹立たしいものでした。藤波が社長に就任し、猪木とのラインを復活させ、大仁田を排除して、橋本と小川の再戦を組んだ10.11東京ドームには満足したものの、新日に対する不信感は消えていません。正直言って新日本に対する思いはかなり醒めましたし、将来に大きな不安を抱いています。
 インディーで何とか頑張っているのはFMWくらいでしょう。しかし、徹底したエンターテイメント路線が私は好きではありません。アメリカはショービジネスの国であり、日本には武道の精神があります。アメリカのプロレスはアメリカの文化を背景に、日本のプロレスは日本の文化を背景に進化してきました。ただアメリカの真似をしてもそれは単なる茶番にしかなりません。デルフィンが大阪プロレスを旗揚げし、みちのくプロレスが分裂しました。FMW以外のインディーはもはや寄り集まらなければやっていけない状態です。私はこの際、やはりコミッショナー制度を確立して、統合なり、排除なりするべきだと思います。
 1つだけ注目に値するインディー団体は闘龍門です。ウルティモ・ドラゴン自身がリングに上がれないのは残念ですが、レスラー養成学校を作り、多くの個性派レスラーを輩出して、完全に新たな世界を作り上げました。今後に期待します。
 女子の方も同じく単独では興行が成り立たず、混沌とした状態になっています。やはり団体が分かれすぎたと思います。全女がもっと求心力を持つべきだと思うのですが、あんな状態ですから、根本的な改革が必要でしょう。
 PRIDEシリーズの台頭も私にとっては面白くありませんでした。何だかプロレスは楽しいもので、強さを競うものではない。レスラーは強くないというような風潮が、どうにも我慢なりません。桜庭がグレイシー一族に勝利したことは明るい話題だと思いますが、それくらいでは心のモヤモヤは晴れません。来年こそは誰かがヒクソンに勝ってもらわないと、本当にもう我慢も限界です。と思っていたら、船木vsヒクソンが決定しました。もう、どうしても船木に勝ってもらわないと困ります。
 今年のプロレス界を振り返ってみると、何だか明るい話題はほとんどなかったように思います。来年はスカッとする1年にして欲しいです。