Vol.51 ミレニアム・イヤーはプロレス逆襲の年


 ミレニアムイヤーも早1ケ月が過ぎました。プロレス界はその間、ダイナミックに動きました。その原動力となったのはやはり新日のドーム大会です。黒の頂上対決で蝶野が武藤に勝利してWCWでネオNWOと接触、天龍に雪辱しIWGP王座を奪取した健介が闘魂伝承を宣言、IWGPジュニア戦で金本に圧勝したライガーがヘビー級にも闘いの場を広げていくことを表明、大物ルーキーの鈴木健三がデビューなど様々な展開を示してくれましたが、何といっても最も注目を集めたのが橋本&飯塚組対小川&村上組の因縁タッグ対決です。
 試合のスタイルはバリトゥードに近かったものの、因縁というプロレスを面白くする上で欠かせないエッセンスが含まれ、漂うあの殺気、そして興奮。バリトゥードにはないものがプラスされていました。これがプロレスは「最強の格闘技」たるゆえんなのです。総合格闘技が脚光を浴びるようになってから、U系の選手は限りなく総合格闘技に近づいて行き、その他のレスラーは総合格闘技と一線を隔してエンターテイメント性を追求していきました。あの試合は、そうではない別の方法があるということを示してくれました。プロレスの凄さは異文化と交わり、それを取り込んで吸収してしまう奥深さにあるのです。有名な馬場さんの言葉を引用すれば「シュートを超えたものがプロレス」なのです。
 あの試合には最近のプロレスに欠けていたものがありました。それが猪木が小川に託したメッセージなのです。私がプロレスに望んでいたことなのです。試合前に猪木の登場がコールされた瞬間の会場の盛り上がり、昨年のドーム大会を上回る観客動員、深夜放送にしては異例の高視聴率、それが私や猪木世代のファンだけの思いではなく、今のプロレスの流れであるということを示しています。
 ドーム大会の後、藤田和之の退団、総合格闘家転向が発表され、早くもPRIDEグランプリへの出場が決まりました。このトーナメントでは高田対ホイスも決まり、期待の桜庭、アレクも出場します。リングスのトーナメントでは田村がヘンゾ・グレイシーと対決、そして船木とヒクソンの対決も正式に決定しています。
 アルティメット大会の衝撃的な開催、ヒクソンの日本上陸、道場破りを敢行した安生の返り討ち、高田の連敗と「プロレス最強神話の崩壊」とまでいわれ、プロレスファンとして苦汁を嘗めさせられてきたここ数年ですが、アレクのマルコ・ファスへの勝利、桜庭のホイラー・グレイシーへの勝利あたりでかすかに光が見えてきました。そして今年は遂に、プロレス逆襲の年になると私は信じています。
 そんな感じで気分が盛り上がり、迎えたPRIDEグランプリですが、高田の馬鹿がまたやってくれました。もう何も期待はしていませんでしたが、それにしてもひど過ぎます。頼むからもう引退してくれ、これ以上プロレスの足を引っ張らないでくれという感じです。桜庭も持ち味がまったく出せませんでした。判定という制度はどうかと思います。唯一の期待は藤田です。
 藤田のPRIDEグランプリ優勝と、船木がヒクソンに勝利することを今年は期待します。