増刊号 新日ドーム観戦記


 大仁田との茶番劇に愛想が尽きかけ、猪木の復権、橋本対小川戦の実現で見直し、それでも長州対大仁田なんてふざけた話題が依然としてくすぶり、せっかくの生放送も「橋本真也34歳小川に負けたら即引退」なんてふざけたタイトルがつけられ、新日に対する信頼は半信半疑。それでもやはり橋本対小川はもの凄く楽しみな一戦で・・・。そんな心境で迎えたドーム大会でした。
 前半戦は、中西がノートンに長々とアルゼンチン・バックブリーカーを決めての堂々の勝利に驚かされ、吉江も天山に敗れたものの成長の後を見せ、ジュニア対ヘビーもそれなりにいい試合を見せてくれました。
 生中継が始まる8時となり、猪木、坂口、藤波が入場。やっぱりつかみは猪木かと思っているうちに始まった飯塚対村上。橋本対小川が生んだ副産物であるこの試合にはかなり期待していました。1.4ドーム以降の飯塚はとにかく素晴らしい。村上もいいヒール・キャラを持っています。結果も期待通りに飯塚が勝ち、ここまでは満足でした。
 しかし、その後がいけません。ムタ対蝶野は今どき反則決着とはお粗末過ぎます。健介対ライガーも凡戦に終わりました。ドームという大舞台で、IWGP王者対決というテーマはあるものの、新日本のナンバー1である健介が、ストロングスタイルの試合を見せるための対戦相手がライガーしかいないのかと思いつつ、確かにライガーしかいないかもしれないとも思いました。何とも寂しい限りです。
 ジュニア対ヘビーというのは面白い戦いではありますが、東京ドームの核となるテーマではないという気がします。ライガーは健介に完敗でしたし、他の選手は善戦はしたものの、結果はやる前から見えていました。
 そしていよいよ迎えた橋本対小川戦。試合自体はいい試合でした。しかし、すっきりしない幕切れでした。橋本を応援していましたが、結果にも納得出来ました。すっきりしない原因は、橋本が「負けたら引退」と口にしてしまったことです。最後に猪木が出て来てダーでお茶を濁すようでは、そこに本当に闘いがあったのかという感じです。
 ファンとしては橋本には引退して欲しくありませんが、この状況で引退しないのは明らかにおかしいと思います。その辺がうやむやで終わってしまったことで後味の悪さが残りました。やはり「引退を賭ける」なんてことはすべきではなかったと思います。
 新日本がいつまでもこんな状態ならば、いっそ小川にぶち壊してもらった方がいいでしょう。
Vol.53 大阪プロレス観戦記&新日本はどこへ行く

 仕事の出張にかこつけて本場の大阪プロレスを観てきました。観戦したのは3.18光明アムホール大会です。狭い会場でしたが、超満員大入りで、大阪プロレスは大阪の街に完全に定着したようです。
 前半戦は、デメキンのギャラUP要求に伴って、この試合に勝ったらギャラUPという設定で、期待通りにデメキンが敗れ、落ち込むという試合など、お笑い路線。食いしん坊仮面やえべっさんなどのキャラも登場しました。食いしん坊仮面はお笑いだけでなくかなり動けるのには驚きました。
 休憩を挟んで、星川対菅本はシリアス路線。なかなかの名勝負でした。メインはデルフィン率いる正規軍と東郷率いるLOVの6人タッグ。乱戦気味ではありましたが、迫力もあり、いい試合でした。試合後はデルフィン、星川、薬師寺の3人が出口で観客を握手して見送ってくれ、とてもいい気分で会場を後にしました。楽しさとシリアスさが適度にあり、いい興行だったと思います。
 話しはそれますが、ついでに大阪観光をして来ました。TWC大阪の阿南選手に案内してもらったので大いに大阪を満喫できました。光明アムホールは梅田にあります。この辺はビジネス街で、あまり遊ぶところはありません。かに道楽の大きなカニがいて、食い倒れ人形があり、グリコの大きな看板がある、いわゆる大阪という雰囲気なのは、なんば付近の道頓堀です。ビリケン像もある通天閣もこの辺りです。吉本新喜劇も見逃せません。なんばグランド花月で毎日興行がありますが、土日は立ち見の大盛況です。梅田にも花月スタジオがあって、こちらでも漫才などは見れます。食べ物は当然のことながら、お好み焼きとタコ焼きです。
 大阪プロレスを観て、大阪見物をして、お好み焼きを食べる。なかなか楽しい旅行になります。皆さんも機会があったら、是非、大阪プロレス・ツアーをやってみて下さい。
 さて、話しは変わって、新日本ですが、4.7東京ドームに続き、5.5福岡ドームも決定し、相変わらず強気の攻めの姿勢です。新日本が活発に動くことでプロレス界全体が活発になっていくというのは事実ですから、いいことなのでしょうが、新日本の状況を見ると本当にいいのかと疑問が生じます。
 まず、現在のIWGP王者である健介がパッとしません。ライガーとの対戦は興味深いカードではありますが、ドームのメインにふさわしいとは思えません。蝶野が独自の路線で頑張ってはいるものの武藤と橋本揃っては欠場中です。それでも観客動員は落ちていないのかもしれませんが、逆に武藤と橋本は自分たちがいないのに新日本がまったく変わりなく動いていることに危機感を持つべきです。2人にそんな危機感はまったく感じられません。
 武藤は渡米して、ムタとしてWCWと契約。ドームにはWCWのグレート・ムタが逆上陸し、蝶野と対戦します。武藤なりに考えた復帰の仕方でしょうし、それなりにインパクトはあります。野球やサッカーのように日本のトップ選手が世界に出て行くという流れにも乗っています。でも、「ペイントすればケガが治るのか」という蝶野の言葉が正論に思えます。
 橋本は新日本を欠場し、3.11力道山メモリアルに出場しました。この大会の主役は猪木で、自らジャニーズJRの滝沢クンとエキジビジョン・マッチにも出場しました。この試合(?)自体はお遊びですからどうでもいいのですが、一部ではこれがこの日のベストマッチと言われ、もっとも注目を集めたというのは何ともお寒い内容でした。当然最も注目を集めるべきメインでは、試合前に橋本が村上に襲撃され万全の状態ではなく、小川との連携もまったくなし、最後は謎のマスクマンに橋本があっさりフォールされるという内容。まるで10年前のプロレスを見ているようです。これこそが猪木ワールドという言い方もありますが、もう時代が違います。ビッグマッチに向けての前哨戦というものはあっていいと思います。フラストレーションが貯まった方が、ビッグマッチで思い切りはじけられます。しかし、せっかく貴重なお金と時間を費やして足を運んだ人たちが不愉快な思いで会場を後にするというのは、見せる側はプロ失格です。滝沢クン目当てで集まったプロレスファンでない人たちの目には残念ながらプロレスが面白いものとは写らなかったのではないでしょうか。
 橋本が引退を賭けて小川と戦うと宣言したのも気に入りません。橋本としては素直な気持ちなのでしょうが、だったら橋本が勝つだろうと裏読みしてしまいます。これで小川が勝ったら、小川は本当にたいしたもです。プロレス界全体のことを考えたら、その方がいいのかもしれません。とはいえ正直なところ、橋本にはまだ引退して欲しくないですから勝ってもらわないと困るし、複雑な心境です。いづれにしても引退なんかを賭けるより、小川が主張するようにIWGPとNWAのベルトを賭けてダブルタイトルマッチにした方が単純明快で分かりやすいでしょう。
 依然としてくすぶっている長州対大仁田戦については問題外の一言です。こんなものプロレスとは認められません。蝶野がいくら頑張っても長州政権は揺るぎ無いようですし、小川がいくら吠えても新日本は目を覚まさないようです。
 さて、もう一つ、PRIDEにも触れておきましょう。ホイスが無制限ラウンド制、判定決着、レフェリーストップはなしにしろと主張しています。さもなければ試合を棄権するとのことです。また理不尽なことを言っているという批判もありますが、グレイシー柔術とはそういうものなのです。お金を取って人に見せるようなものではありません。プロレスの方がずっと上等です。しかし、プロレスの方が面白いの一言で片づけたくはありません。こんな状況に追い込まれていますから、強さでもプロレスが上ということを証明して、とっととグレイシー柔術なんてものは追放して欲しいものです。ホイスの要求を受けた桜庭の態度は立派でした。条件はすべて飲んだ上で、きっちりと結果を出して欲しいと思います。そして絶対に船木もヒクソンに勝ってもらわないとなりません。ここがプロレスの正念場です。応援しましょう。