Vol.55 プロレス最強神話復活成らず


 5月1日にはPRIDEGPが行われました。私は観に行きませんでした。平日の5時開始ということもあったのですが、1回戦を観た感じでは、とてもまた観に来ようと思えるような内容ではなかったからです。ダラダラと長くて、膠着状態になってしまったら退屈なだけです。あげくの果てにこの間の高田対ホイスのようなものを見せられたら、本当に金返せですから。格闘技性の追求と興行としての両立は総合格闘技の永遠のテーマかもしれません。
 その点、プロレスは完成されています。といっても何もプロレスは面白いだけではありません。最近のプロレスは闘いを忘れて話題性とか面白さだけを追求している感があり、レスラーがグレイシーに負け続けているので、とても堂々と言える状況ではありませんが、私はいつでもプロレスが最強の格闘技であると信じて疑いません。
 ともかく、桜庭は高田なんかよりは期待出来るし、藤田がどう戦ってくれるかも興味があったので、桜庭対ホイス戦、藤田対ケアー戦は気になっていました。もちろんプロレスファンとして2人を応援していました。テレビで見た限りでは、観に行かなかったことが後悔されるような素晴らしい内容でした。近年まれに見るベスト興行だったのではないでしょうか。でも、実際に6時間も遠いスタンド席から生で観ていたら、受ける感じは変わっていたかもしれませんが。それに桜庭勝利の瞬間に立ち会えなかったのは残念ですが、考えてみれば当然の結果で、何も感動するようなことではないのですから。
 桜庭の戦い方は本当に素晴らしかったです。ストロングマシーンのマスクでの登場も最高でした。モンゴリアンチョップにフットスタンプを見せるなんていうのも良かったです。ルールもすべてホイスの言い分を通して勝ったわけですから、もう言い訳は出来ません。
 藤田は相手が同じアマレス出身でバーリトゥードでも実績のあるマーク・ケアーということで正直なところ厳しいのではないかと思っていましたが、判定ながら見事に勝ってくれました。完勝といっていい内容でしょう。まず体格で見劣りしないというのが素晴らしい。真っ向からぶつかってパワー負けしなかったのが素晴らしい。プロレスラーの強さを存分に証明してくれました。
 ともに2回戦で棄権という形になってしまいましたが、トーナメントの組み合わせがすべてという気がするので、仕方のないところでしょう。コールマンが優勝したからというはわけではありませんが、バーリトゥードを見ていて、体の鍛え方も含めて技術的にはやはりレスリングが最強という気がします。ホイスよりケアーの方が強いと思います。ただバリトゥードには本当に強い打撃の選手が出ていないので、そういう選手の一発が決まるかどうかというのは興味があります。しかし、コールマンって高田に負けているんだよなあ。
 長い間の胸のつかえが半分取れた思いのPRIDEGPでしたが、もう半分のつかえはヒクソンです。グッと気分が盛り上がって迎えた5月26日。船木対ヒクソンのコロシアム2000です。
 結果は、船木惨敗。田村、桜庭がグレイシー狩りに成功し、試合前にはグレイシー柔術の技術なんてたいしたことない。船木が勝って、遂に打倒グレイシーが果たされると思っていましたから、ショックでした。そして見た限りでは、ヒクソンはやはりホイスより本当に10倍強いのではないかと実力を認めざるを得ませんでした。あのたたずまいは、今のプロレスラーが忘れてしまっている凄みがありました。一瞬のスキを見逃さないスピードと一気に決めてしまうパワーは素晴らしいです。
 それにしても、高田と言い、船木と言い、どうしても納得いきません。何でプロレスラーが体の小さいヒクソンにパワーで圧倒されてしまうのでしょうか?何で相手の土俵で戦おうとするのでしょうか?何でもありのバリートゥード・ルールと言っても、結局はグレイシー柔術のルールなんです。ヒクソンはルールについてまったく妥協しませんが、それは悪いことではなく、グレイシー柔術を守るものとして当然のことです。むしろ、ひとりの格闘家として闘ってみたいなどという理由でグレイシーに挑むレスラーの方がプロ意識が不足していると思います。
 ヒクソンのぺースで戦ったら、絶対に勝てません。打倒ヒクソンを果たすには桜庭のように自分のペースで闘うこと、そしてパワーで圧倒することだと思います。通常の試合を休んで連取に専念したり、体重を絞ったり、方向性が間違っていると思います。だからU系の選手ではなく、純プロレスラーがヒクソンを倒して欲しいと思います。誰も名乗りを上げないことが、本当に納得いきません。
 本来ならばキング・オブ・スポーツを、ストロング・スタイルをかかげている新日本が立ち上がるべきです。それなのにムタ対パワーだ、長州対大仁田だと、くだらない猿芝居をしているだけなのには本当に愛想が尽きました。
 最後に、船木は引退を表明しています。決してギブアップもしませんでした。本当にすべてを賭けて闘ってくれたんだなと、それでけは素晴らしいことだと思います。周囲で引き留めたりしないで、船木の思うようにさせてやって欲しいと思います。