Vol.61 世紀末プロレス


 早いもので今年も残り1ケ月となりました。20世紀もあと1ケ月で終わってしまいます。本当に時の過ぎるのは早いもので、プロレス界の流も恐ろしく早く感じられます。橋本が小川に敗れたことや、桜庭がホイスに勝ったことなど、遥か昔の出来事のような気がします。その後も全日の分裂、長州の復帰、橋本の新日解雇など、大事件が次々と起こっています。
 この世紀末のプロレス界が、私にはおもしろくないものに思えます。何か非常に悪い方向に進んでいる気がします。猪木が言うように、最近のプロレスからは「闘い」が薄れていると思います。小川対橋本戦で、その忘れられていた闘いが蘇ったかに思われましたが、結局、今では小川と新日は絶縁状態で、橋本も引退騒動を巻き起こした後、解雇処分になりました。
 橋本は現在、弱くて嘘つきな男でしかありません。理想のプロレスだとか、新日の改革だとか、夢の対決だとか言っていられる立場ではありません。私には橋本の一連の行動を積極的に支持する気にはなれません。かといって新日が正しいかというと、そうでもありません。そもそも橋本がここまで追い込まれたのは、テレビ朝日の視聴率稼ぎのために「橋本負けたら引退」を話題集めの材料にしたからであり、新日がそれを止めさせようとしなかったからです。新日は確かに一大メジャー団体になりましたが、話題を集めてイベントを行っているばかりで、本当の「闘い」がまったく見えてきません。橋本に対する新日の処分を納得することもできません。
 とにかく橋本には、きっちりと汚名を挽回するような実績を見せて欲しいし、新日のレスラーたちには、現場監督とかフロントの人間の好き勝手にさせず、レスラー主体のプロレスを見せて欲しいと思います。
 桜庭がホイスに勝ち、藤田がケアーに勝ち、プロレスの強さが少しは証明されたと喜んだのもつかの間、船木がヒクソンに敗れてしまいました。小川対ヒクソン戦が実現に向けて進んでいるのは明るい話題ですが、結局、打倒ヒクソンは果たせぬまま21世紀を迎えることになってしまいました。
 今のプロレスが駄目だと感じる一番の理由は、ヒクソンへの借りが返せていないことです。今でも私はプロレスが最強の格闘技であると思っていますが、誰かがヒクソンを倒さない限りはそんなことは恥ずかしくて口に出せません。ヒクソンに挑んだ高田、船木には、結局プロレスを背負って闘うというような覚悟はなかったとしか思えないし、他のレスラーたちはプロレスと格闘技は違うものというような感覚で、ヒクソンの存在を何とも思っていないようで、そういう風潮がファンの間にもあるのが気に入りません。
 プロレスは見ていて面白ければいいというものではありません。本当の闘いがある上で見せることを考えているから凄いのです。今のプロレスはただ見せることだけ考えているように思えます。
 小川が最後の望みです。恐らくヒクソンと闘うラスト・チャンスでしょう。何としても実現して、勝って欲しいと思います。
 全日を離脱して三沢が旗揚したノアですが、旗揚戦と最初の後楽園大会を観に行きました。旗揚戦はそれなりの内容でしたが、後楽園大会には失望しました。ただ演出が派手になっただけで、内容は変わらないどころか、質が落ちているという気がしました。何のために全日を離脱したのか、それが見えませんでした。それでもチケット完売という景気のいい話しは続いているのかと思いましたが、後楽園は決して超満員ではありませんでした。
 新日がこんな状態で、実際は全日よりも全日であるといえるノアがこんな状態では、プロレスの将来を悲観せざるを得ません。
 そんな中で勢いづいているのがPRIDEシリーズです。課題はまだまだあるものの、今のどのプロレス団体よりも私にはPRIDEが一番理想のプロレスに近いことをしているように思えます。
 本当にプロレスはこれでいいのかと問いたいです。最近はプロレスを観ても心が晴れることがあまりありません。とぼやきつつ、21世紀もプロレスを見続けるのだと思います。何とかいい方向に進んでくれることを願います。