Vol.63 猪木祭り、新日、全日、ドーム総括


 世紀末から新世紀の幕開けにかけて、大阪ドームでアントニオ猪木総合プロデュースの格闘技イベントが開催されました。その名も「猪木ボンバイエ」。PRIDEの選手とプロレスラーがプロレスルールで闘うという画期的なイベントでした。最近のプロレスにあまり魅力を感じなくなり、逆に桜庭や藤田などPRIDEで頑張るプロレスラーに注目したくなる今日この頃、あの猪木がどんなことをしでかしてくれるか、大いに期待していました。大阪の知り合いにテレビ中継を録画してもらって見ましたが、素晴らしいイベントでした。
 ヘンゾ・グレイシーにコブラツイストをかけてしまう猪木の凄さは取りあえず置いておきます。そもそも猪木の存在がなければ、このイベント自体が成り立っていませんから、猪木は別格です。
 良かった選手は、やはり小川です。安田との対戦は柔道対相撲というとても分かり易い図式、お互いに超ヘビー級とマッチメークにも恵まれました。短い試合でしたが、見所は充分でした。小川は凄みと華を身につけていました。試合後の乱闘も良かったです。中身のない試合を乱闘で誤魔化すのは茶番ですが、しっかりした闘いの後であればドラマを生みます。これがプロレスのいいところです。
 それから武藤。やはり最も天才と呼ぶに相応しいレスラーです。その華やかさには誰も敵いません。特にファイトスタイルが変わったわけではありませんが、スキンヘッドにしたことで新生武藤を強烈に印象づけてしまいました。WWFにムタで登場して欲しい気もしますが、もっと日本で素晴らしい試合を見せて欲しい気もします。
 それから桜庭はやはりさすがです。完全にプロレスラーとして闘っていましたが、見所充分の試合でした。20分ほどの試合でしたが、試合後に桜庭の息があがっていたのも印象的でした。
 宇野薫とサスケがタッグマッチで対戦したり、バス・ルッテンが参戦したり、あっと驚くカードの連続でした。PRIDE系の選手も素晴らしかったです。マーク・ケアー&マーク・コールマンは、今のプロレス界にはいなくなってしまった最強外人タッグという感じでした。グッドリッジの動きも素晴らしかったです。
 逆にパッとしなかったのは高田でしょう。もともと巧いレスラーだったし、華もあったと思いましたが、タッグを組んだ武藤に比べたら、かすんでいました。相手も悪かったと思います。プロレスをやるシャムロックはまったく魅力ありませんでしたし、フライもまだまだレスラーとしては未熟です。おまけにその2人が犬猿の仲なのですから。まあ、バリトゥードに借りを作りっぱなしで、何も返していませんから、今更プロレスといわれてもという感じです。
 それから橋本。ルールに救われてやっと勝ったという感じでした。ノアでの大森戦、このグッドチッジ戦、新日での長州戦を実現させたことは評価出来ます。この3連戦の結果と内容次第では、引退撤回を認めてやろうかという気になりましたが、全然ダメでした。永田&飯塚も負けちゃいかんだろという感じです。
 とにかく素晴らしいイベントでした。1つ残念だったのはカード発表が遅すぎたことです。最初は高田とかカシンとか、グレイシーに負けたやつらの名前が上がっていたので興味を持てませんでしたが、もっと早く全カードが発表されていれば、大阪まで行きたかったと思いました。
 逆に行かなければ良かったと思ったのが1.4新日ドームです。もうあきれ果てて何も語るつもりはなかったのですが、後のマスコミの報道で気になることがあったので少し語ってみたいと思います。暴動寸前の騒ぎになったことで、昭和の新日の凄みが蘇ったみたいなことを書いているマスコミがありました。
 飛んでもないです。実際、暴動は起きてません。10年前の新日なら確実に暴動になっていたでしょう。今は暴動を起こすほどの思い入れを持ったファンは愛想をつかしてとっくに離れてしまっています。それに私は例のTPG騒動の新日の暴動騒ぎを生で体験していますが、あんな悲しい思いは2度としたくありません。暴動騒ぎを持ち上げるような報道はやめて欲しいと思います。
 ついでにもう少し。今まで新日のビックマッチはほとんど見に行っています。カードが発表になる前にチケットを買っていました。でも、これからはカードが発表されてから行くかどうか考えるようにします。今の状態ではとても見に行く気はしませが・・・。ファンはもう新日を甘やかさずに毅然とした態度をとるべきです。1度ドームをガラガラにしてやりたいと思います。そうなれば目を覚ますかもしれません。
 武藤も蝶野も独立すべきです。解雇した人間をすぐに呼んでいるのだからまともに契約するのは馬鹿らしいでしょう。全日も新日なんかにいつまでも関わっているとろくなことになりません。早く縁を切るべきだと思います。
 新日のド−ムは全日のドームにも影を落としてしまいました。川田が健介に負けたことで三冠戦を辞退した気持ちは分からなくもありませんが、川田までもが、1度引退した長州と戦いたいという発言をしたのには失望しました。結局、長州の参戦はなくホッとしましたが、もう1つ気にいらないことがあります。大仁田の参戦です。大仁田は絶対に上げるべきではなかったと思いますが、今更仕方がないのでこの試合は無視することにします。馬場さんの3周忌追悼、ハンセンの引退式と言われては見に行かないわけにはいきませんから。馬場さんは決してファンを裏切らなかったし、レスラーの引退ほど信用できないものはないという状況になってしまった中で、ハンセンは引退を見届けてやりたいと思える最後のレスラーです。
 そして迎えた全日ドーム大会です。メインの川田&健介対天龍&馳のタッグマッチは確かに豪華メンバーでしたが、いかにも急場しのぎという感じでイマイチかみ合っていませんでした。馳健タッグ復活の方がしっくりしたのではという気がします。セミの武藤対ケアは、さすが武藤という感じです。まったくの横綱相撲でした。格も実力も違い過ぎました。
 マスカラスが見れたのは非常に嬉しかったです。「スカイハイ」が流れただけでワクワク感が押さえられませんでした。マスカラスはもう相当の年のはずで、引退の噂も聞かれますが、少しでも長く頑張ってもらいたいと思います。
 全体的に試合の方は低調でしたが、今の全日のメンバーでは仕方のないところでしょう。無理をしてでも全日の意地を見せたかったのだろうし、客席もほぼ埋まりましたから、まあ良かったのではないでしょうか。とにかく今回のドームはハンセンの引退セレモニーに尽きます。本当にハンセンは最強のそして最も愛された外人レスラーでした。セレモニーの間中、ずっと笑顔を見せていたハンセンがとても良かったです。