増刊号 6.6新日&6.8全日武道館観戦記


 1日の間をおいて新日と全日の武道館大会がありました。毎年この時期は両団体が武道館でニアミスしていましたが、今年は2つの大会で対抗戦が行われ連動していました。
 まず新日の方ですが、当初発表された全日との5大シングルマッチはあまり魅力的なカードとはいえず、最近の新日の興行のつまらなさもあり、観に行かないつもりでしたが、武藤のシングルがあり、藤田も蝶野も出る。そして長州は出ないということで、たまたま予定も空いており、観に行くことにしました。直前になって猪木が来場することになり、そして世間的には秋山が来場することが話題となり、それが観客動員につながったようですが、盛りだくさんの大会となりました。
 まず全日との5大シングルですが、いきなり新日の3連敗で負け越しが決定してしまいました。声援もむしろ全日の選手に対するものの方が多いくらいでした。特に長井の蹴りに失神状態の飯塚は情けなかったです。ダウンカウントを取らず、レフリーストップになった裁定も不透明で、相も変わらず最近の駄目な新日という感じでした。中西がようやく圧倒的な強さを見せて勝利した後、小島と川田のシングルでしたが、これは素晴らしい試合でした。結果は小島が敗れましたが、もしかしたらという場面もあり、内容的には文句のない試合でした。会場の盛り上がりもいい感じでした。
 久しぶりの蝶野はT2000対BATTの6人タッグに登場しましたが、まったく見せ場がなく敗れてしまいました。やはりコンディションが万全ではないのでしょう。最近の蝶野は試合以外の部分では活躍していますが、肝心の試合で何も結果を出していません。そろそろリングの上で実力を見せて欲しいと思います。
 武藤の相手はXと発表されましたが、その正体が誰かということはあまり話題になりませんでしたね。何度も裏切られてもう誰も期待しなくなったのでしょう。今回のXは馳でした。あっと驚くというほどではありませんが、Xとするにはまあまあ合格の相手でしょう。40分という長い試合になりました。グラウンド中心の地味な展開でした。それがつまらないという人もいるようですが、そのこと自体は決して悪いことだとは思いません。ただ、馳はものすごく小さく見えて、体調が万全とは思えなかったし、武藤もコンディションが悪そうで、しまりのないただ長いだけの試合になってしまいました。
 メイン前には猪木が登場しました。相変わらず猪木の登場がこの日一番の盛り上がりでした。永田とともに入場した秋山以上の声援を集めていました。
 藤田対永田のIWGP戦はプロレスルールでしたが、PRIDE系の展開になりました。迫力のある一戦でした。
 全体的には、はずれっぱなしの最近の興行の中ではまあまあ良かったと思います。藤田にはしばらく王座を保持してもらって、刺激を与え続けて欲しいと思います。そして中西、永田がもっと自覚を持って引っぱっていけば、新日本も良くなるのではないか。そう感じられる興行でした。
 続く全日ですが、何と言っても注目は武藤対天龍の三冠戦でした。流れからして武藤が三冠を取るという歴史的な出来事が起こると思えたからです。試合は素晴らしい内容でした。華やかさという部分では武藤は最高です。あとは凄みさえあれば文句なしなのですが。天龍も素晴らしいレスラーです。この2人が最高の舞台で闘えば当然なのかもしれませんが、名勝負でした。そして結果は武藤が天龍に次ぐ日本人2人目の2大メジャー制覇を達成しました。
 世界タッグとアジアタッグ戦は、どちらもあきらかに負けそうな名前が入っているのが気に入りませんでしたが、結果もその通りになりました。真壁が頑張ったアジアタッグはそこそこいい試合でしたが、吉江が全然駄目だった世界タッグはイマイチでした。
 以外に良かったのが小島&ヒロ斉藤対ウイリアムス&ロトンドのタッグマッチです。ヒロ斉藤も想像以上に頑張りました。そして2日前の川田戦に続いて小島が良かったです。この武道館2連戦を通じて最も頑張ったのは小島ではないでしょうか。
 天山対川田は、天山のタフさが際だっていました。あのタフネスぶりはレスラーとしてとても大事な要素だと思います。しかし、天山に対するシーという声は本当に止めてもらいたいと思います。耳障りなことこの上ありません。そんな馬鹿げたことをやっている観客はファンとは認められません。
 会場の雰囲気は今、全日本が最高ではないでしょうか。観客動員も新日が入場ゲートを一面をつぶしていた分、全日の方が入っていました。対抗戦では新日が大きく負け越してしまったことも気になります。ともかく久しぶりにプロレスを満喫できた2日間でした。
Vol.67 プロレスLOVE論

 新日福岡ドームの長州組対小川組には、あまり期待していなかったとは言え、やはりがっかりしました。それまでの流れからして、長州と小川の一騎打ちが当然だったと思います。タッグマッチになった時点で結果はある程度見えていました。それにしても、あまりにも内容がありませんでした。新日本の怒りを見せると言っていましたが、あの興行に新日本の怒りを感じた人がいたのでしょうか。
 そもそも今さら長州を前面に押し出してくる新日本が駄目なのは当然ですが、小川サイドには少しは期待していました。しかし、残念ながら期待外れでした。まずプロレスの経験と技術が未熟過ぎます。小川本人は格闘家であり、プロレスラーと言っているのですから、もう少し技術を身につけないと話しになりません。パートナーの村上も弱過ぎます。白覆面で登場した橋本に至っては、まったくの間違いです。橋本がやるべきなのはこんなことではありません。
 小川も中途半端で何がやりたいのかさっぱり分かりませんでした。長州は俺たちのレベルになかったと言っているようですが、それなら叩き潰してしまえばいいだけの話しで、今の小川はただの口だけで、何の説得力もありません。
 もう長州と小川の一騎打ちは必要ないでしょう。もともと一度引退した人間を標的にしたのが間違いでした。個人的には小川と中西のシングルが見てみたいと思います。
 そして新日本ですが、いつまでも長州にでかい顔をさせていては駄目です。中西なり永田なりが、まず倒すべき相手は長州です。もう長州の出る幕ではないというのをしっかりと示して、小川や藤田、橋本らの外敵と闘っていけば新日本も少しは良くなると思います。欠場中の健介が、実は打倒長州を果たさなければならない一番手だと思います。そうしない限り、健介はこれ以上大きくはなれません。
 新日本隊とは一線を隔すBATTとT2000のタッグマッチが何とか興行の体裁を整えたと思います。本来なら武藤か蝶野が新日本のエースになって欲しいところですが、彼らはもう新日本への興味が薄れているようなので、それは期待しません。
 武藤の言うところのプロレスLOVEというものは、要するに総合格闘技ブームの中、一部のレスラーもどきのせいで落ちてしまったプロレスの価値を上げる。世間の批判的な目からプロレスを守っていく気持ちだと思います。対世間ということを常に考えている蝶野も同じ気持ちを持っているはずです。
 猪木や橋本が新日本を批判するのも実は同じことだと思います。今の新日本にはプロレスのために闘っているという姿勢がまったく見えないのです。
 猪木派のように格闘技路線に踏み込んでいくのも一つの方法ですし、武藤や蝶野のように純プロレスの良さを追求していくのも一つの方法です。どちらの方法がいいも悪いもありません。ただ武藤や蝶野が猪木の真似をしても、猪木を超えられるはずがないので、武藤や蝶野は彼らなりに正しい方法でプロレスのために闘っていると思います。
 話しは代わりますが、秋山発言を受けて、新日とノアの対抗戦ムードが盛り上がっています。藤波と三沢の会談が実現し、秋山が6.6武道館大会に来場するとの報道もありました。この大会は新日と全日の対抗戦は行われています。そこに秋山が来るとなれば大事件です。秋山は天龍の三冠に挑戦したいとも発言しており、元子社長も認めるような発言をしています。そうなるともう本当に団体の枠などなくなってしまいます。
 結論から言えば、私は新日とノアの対抗戦は反対です。新日はちょっとおいしそうだと思えばすぐに飛びつき、話題だけを振りまいてビックマッチを連発してきました。その結果、今の新日の中身は空っぽになってしまいました。観客動員も落ちて、武道館や国技館でも満員になりません。ドームの動員も確実に落ちています。ノアとの対抗戦は確かに最大の話題になることは間違いなく、ドームも満員になるでしょう。しかし、今の状態でノアと対抗戦などやったら、新日はますます中身のない団体になってしまうでしょう。全日との対抗戦もこのままでは中途半端です。
 団体の枠を超えた戦いは確かに見てみたいです。でも手当たり次第には反対です。年に1度、全団体のトップが集まるようなイベントを開くという形がいいのではないかと思います。