Vol.70 猪木軍vsK−1、真撃第2章


 アントニオ猪木は常にダイナミックな行動で世間を驚かせてきました。引退した今もその行動に代わりはありません。今回もまたK−1との対抗戦を実現し、大きな話題となりました。
 最近のプロレスは、勝手にプロレスの枠を決めて、何かこじんまりとしてしまって物足りない気がします。確かにG1はそれなりに面白かったし、プロレスファンの間では話題になりましたが、やはりスケールが小さい気がします。思えばG1は猪木がいなくなった新日本が生み出したもので、猪木ワールドとはまったく違った世界になっているのです。いつまでも猪木でもないだろうという意見もあるかもしれませんが、他にあれだけダイナミックなことができる人がいないのですから、私としては猪木に頑張ってプロレス界をかき回してもらいたいと思います。純プロレスもいいですが、プロレスの外敵とどんどん闘っていかなければプロレスの地位は向上しません。しかし、それを実践すべきレスラーの不甲斐なさが目立ちます。負けてはいけない試合でいとも簡単に負けてしまいます。プロレスを背負っているという気概が感じられません。
 そんな中、唯一、積極的に外敵と立ち向かい、勝ち続けてきたのが藤田でした。プロレスでは大きな実績を上げられなかった男がその闘いを通じてプロレスの世界でもIWGPチャンピオンとなりました。その藤田がK−1のミルコ・クロコップと対戦したわけですが、結果はミルコのヒザ蹴りを受けて大出血しドクターストップにより敗れました。アクシデントの感はありますが、負けは負けです。ミルコは実力者でそれなりに名の通った選手ではありますが、K−1のトップ中のトップとはいえない選手です。対する藤田はIWGP王者で今やプロレスの強さを体現する唯一の選手でした。その藤田までもが絶対に負けてはならない選手に負けてしまいました。非常に残念ですし、腹立たしいです。幸いK−1側は再戦に応じるという態度を取ってくれているので、それに甘えてリベンジを果たしてもらうしかありません。ただ12月にK−1GPが控えていることを考えると、またしばらくプロレスファンには辛い日々が続きます。とにかくこの一敗のダメージはとてつもなく大きいです。
 今まで何度もプロレスの危機を迎えていますが、プロレス界は誰も立ち上がってくれませんでした。今度もあまり期待できませんが、いいかげんに何とかしてくれないと本当にプロレスは駄目になります。今度こそレスラーの奮起を期待します。
 いつまでもぼやいていても仕方がないので話題を変えて「真撃」です。橋本もまた汚名を挽回しなければならないレスラーの一人です。新日を飛び出したまではよかったですが、その後やっていることは、プロデューサーとしては素晴らしい働きをみせていますが、レスラーとしては汚名を挽回するようなことは何もしていません。
 第2弾の「真撃」は、ノアの協力は得られず、誰かを招聘しようとすると邪魔が入るという噂もあり、カード編成にも苦労して苦戦が予想されました。何とかマーク・ケアーの出場という目玉が出来ましたが、これによってPRIDEプロデューサーである猪木と関係が悪化し決別という事態になり、小川、村上の出場もなくなりました。さらにメインに出場予定だったジャスティン・マッコリーが急きょ帰国。前日までカードが決まらないという異常事態となりました。バトラーツもZERO−ONEとの協力関係を白紙に戻して「火祭り」リーグ戦も2大会が中止になり、橋本は窮地に追い込まれました。
 東スポに載った猪木のインタビューによると、猪木がマーク・ケアーの真撃参戦についてPRIDE関係者と調整をするので1日待てと言ったにも関わらず、橋本が勝手にケアーの参戦を発表してしまったことが許せないということでした。本当にそれだけのことなら猪木があまりにも大人げないと思いますが、猪木がすべてを語っているとも思えませんし、そもそも猪木の考えることは凡人には理解できません。実際、インタビューの後半はほとんど意味不明でした。そのうちまた平気で手を組むなんてことがあってもまったく不思議ではありませんし、とやかく詮索する必要もないでしょう。
 とにかく橋本は窮地に追い込まれたわけですが、逆にこれ以上ないチャンスであるともいえます。橋本はいつまでも猪木や新日本やノアに頼っていてはいけません。今こそ頑張って橋本にしかできないプロレスを見せて欲しいと思います。引退撤回以来、橋本はまだ何も認められることをしていませんが、今この状態で存在感を示せれば、大きな実績になるでしょう。
 そしてその「真撃第2章」ですが、まず観客動員の面では、はっきり言ってガラガラという状態でした。10月にも武道館で第3章が決まっていますが、格好をつけて武道館なんかでやるより、小さな会場から始めるべきではないかと思います。
 真撃のルールはオープンフィンガー・グローブを着用、3カウントのフォールと場外カウントはなし、ロープブレークありというものでしたが、これが極めて中途半端でした。ゴルドー対田中将斗などは異種格闘技戦のような面白さがありましたが、ほとんどの試合がこのルールで魅力が半減していたように思えます。
 結局、橋本は藤原と組んで、マーク・ケアー&ベイダーUFOとの対戦となりましたが、ベイダーUFOが試合前にマスクを脱ぎ、ベイダーではなくプレデターだと名乗りました。結局、でくのぼう系の大型外人でしたが。橋本はというと、残念ながらまったくいいところなしでした。ケアーとの絡みも押されていて、最後は無理矢理プレデターに勝ちましたが、次はケアーとシングルと言っても、観てみたくなるようなものは何もありませんでした。むしろケアーの方が強いんじゃないかという感じでした。
 注目の外国人であるトム・ハワードは対戦相手に恵まれなかったせいか特に印象には残りませんでした。高岩対安生は、安生のうまさに翻弄されたというのもあるし、ルールもあって高岩の魅力は半減していました。急きょ決まった大谷対大仁田に至っては大仁田が毒霧で反則負けというお粗末な茶番劇でした。大谷と高岩はこれでは新日本を出た意味がまったくありません。
 残念ながら興行としては満足いくものではありませんでした。結局、橋本はせっかくのチャンスをまったく活かせませんでした。それほど長い目で見てあげられる状況でもありませんから次の第3章を観に行くかどうかは少し様子を見させてもらおうと思います。