増刊号 10.8新日ドーム大会観戦記


 久しぶりの新日ドーム大会でしたが、観客動員の苦戦が伝えられ、相変わらず直前まで猪木に振り回され、気持ちの中の盛り上がりがないままに大会当日を迎えました。カード的にもこれといったものはありませんでしたし、かと言って小川が巴戦をやれば盛り上がったかというと、それも疑問です。結果的には超満員といかないまでもまずまずの入り、内容の方もまあまあでした。
 第1試合はライガー&サムライ&田中対邪道&外道&AKIRAの新日対T2000のジュニア対決。いきなり邪道と外道に呼ばれて、負傷欠場中の金本が登場し、T2000入りをアピールしるという波乱からスタートしましたが、盛り上がりがイマイチで前途多難を思わせました。試合内容は良かったと思うのですが、やはりドームという空間はプロレスには広すぎる場所で、客席まで試合が伝わらなかったのではないかと思います。
 第2試合はシルバ&シン対吉江&健三&井上&棚橋のハンデ戦。この2人の大巨人は魅力がいっぱいです。 デカさというのはプロレスの魅力の1つです。シルバ&シンのデカさはドームという広すぎる空間でも充分に伝わります。シルバが動けるのは既に実証済ですが、初登場のシンの方もそこそこ動けました。大巨人コンビの今後に注目です。蝶野は試合がなく、大巨人コンビのマネージャーとして入場しました。体調が悪いことも、勝負にこだわらなくても揺るぎない地位を得ていることも、蝶野なりのやり方でプロレスのために頑張っていることも分かりますし、そんな蝶野を支持していますが、もっとリングの中の闘いにこだわって欲しいと思います。
 第3試合は小原対グッドリッジ。結果は分かり切っていましたが、意外に小原が善戦し、いい試合になりました。しかし、小原がプロレスラーとして格闘技路線に進んで行くなら、善戦だけでは駄目です。結果を出さなければやる意味がありません。
 第4試合は成瀬対カシンのIWGPジュニア戦。カシンは素顔の石沢として入場し、わずか26秒で腕ひしぎ逆十字固め一発で勝ってしまいました。この26秒にPRIDEでハイアンに敗れ、リベンジを達成するまでの1年間が凝縮されていました。石沢が勝った瞬間には久しぶりに満たされた気分になりました。間違いまくこの試合がこの日のベストマッチで、この瞬間だけで今日は満足という感じでした。べるといを放り捨て、認定書を破り捨てるという態度も実に良かったです。
 第5試合は藤波&バックランド対ファンクス。オーロラビジョンに時空を超えてという文字が表示されましたが、この時空を超えるところがまたプロレスの魅力の1つです。10年越しの夢が実現してしまうところがプロレスの素晴らしさです。この試合には内容も結果も関係ありません。昭和世代の私にとっては実に心地いい一時でした。
 休憩が入って、第6試合は長州&西村対天山&小島。注目度も低い試合で、せっかくの盛り上がりが途切れてしまい、結局その後も盛り上がりが爆発することはなく、今日の頂点はやはり石沢の勝利につきます。西村の姿勢にはとても共感できますが、やはりドームという空間では地味過ぎます。天山&小島はIWGPタッグ王座を失って、蝶野との関係も悪化し、1つの転機が訪れているのかもしれませんが、新日で唯一ともいえる実力を備えたタッグチームです。チーム解消とか、T2000離脱とか、安易な道を選ばずに壁を乗り越えて欲しいと思います。
 第7試合は中西対安田。永田が脚光を浴びて、中西は一時の勢いを無くしていますが、グッドリッジ、村上、安田と地道にリベンジを果たしてきたことは、藤田、コールマンに負けっぱなしの永田より評価出来ます。これまでの流れからして今後は打倒、藤田、小川に立ち上がって欲しいと思います。
 セミは藤田対健介。試合前に小川が乱入し、健介、中西、藤田、安田に対して1.4東京ドームで対戦することをアピールしました。今の小川は口だけですし、新日に対する態度も一貫性が感じられません。やるのなら、かつての橋本戦のように徹底的にやって欲しいと思います。健介はフライのもとでバリトゥードの修行を積み、猪木軍団に宣戦布告しての復帰戦でした。とは言え、そう簡単に勝ってもらっては困ると思っていたので藤田の勝利という結果には満足ですが、藤田が勝ったけどダメージも大きかったよみたいな終わり方になったのは不満です。
 メインは武藤&馳対永田&秋山。武藤と秋山で決着が着くことを期待していましたが、やはりという感はあるのですが、永田が馳をフォールという結末でした。まあ、それなりにいい試合ではありました。そしてやはり武藤の存在感にはまだまだ秋山も及びませんでした。
Vol.71 全日武道館そして新日ドームへ

 中西、永田はまだまだ。やっぱり蝶野と武藤にまだまだ頑張って欲しいと思っている私のような人にとっては今、新日よりも全日の武道館の方が楽しみです。今回は武藤が世界タッグ戦で五冠に挑戦。蝶野は川田と久しぶりのタッグ対決と興味の持てるカードが揃いました。
 全日の武道館といえば以前は満員の連続、試合内容も抜群でしたが、最近は空席が目立つのは寂しい限りです。しかも前半戦はインディー団体のような顔ぶれに試合内容。メインも新日に乗っ取られ気味で、昔からの全日ファンが離れていくのも仕方がないという気がします。天龍のWAR軍対全日正規軍という構図は、新日抜きでは天龍と川田が敵対していくしかないし、天龍の軍団としてはWARというのは自然な流れですが、もはや全日ではないといった雰囲気です。
 さて、蝶野と武藤ですが、蝶野はセミでバートンと組んで川田&長井組と対戦でした。純粋に蝶野と川田の対決を期待していたのですが、試合前に協力者はバートンだけではないという発言があり、軍団拡大がテーマになってしまいました。実際、試合中にウイリアムス、ロトンド、スティールがリングサイドに現れ、リングの中に集中できなくなってしまったのは残念でした。蝶野が全日の外人を束ねて今後どうなっていくのかというのは興味がありますが、ここはやはり蝶野対川田のシングル実現に期待したいと思います。武藤はメインでケアと組み、天龍&安生の世界タッグに挑戦。奪取すれば五冠ということで期待されましたが、ここは天龍と安生が踏ん張りました。それでもやはり、蝶野と武藤の持つ雰囲気は永田や秋山にはないものがあり、まだまだ新世代に負けないで欲しいと思います。
 全日の武道館が終われば、興味は新日の東京ドーム大会に移ります。まず最初に決定したカードは永田&秋山対武藤&馳でした。そこに猪木が介入してきて、小川対藤田をやると言い出し、藤波がメインを空けて待っているなどと言ったものだから永田と秋山がへそを曲げて混乱を招きました。
 確かに秋山が新日に出場するのはすごいことですが、またも他団体に頼るのかという感じですし、言われるほど夢を感じるカードでもありません。猪木が口を出したくなる気持ちも分かります。今の新日は話題を集めて客が入ればいいという感じで、何のポリシーも感じられません。ドームも武道館でさえも満員にならなくなっているのは新日のそうした行き当たりばったりの方向性のなさが原因なのにまだ気がつかないようです。藤波の優柔不断さにもあきれます。健介の復帰戦の相手として橋本を指名し、橋本に断られたら「予想通りの発言でがっかりした」などと言っていますが、橋本の意見はまっとうで、今さら新日に出る必要などまったくありません。藤波の提案の方が筋違いです。そもそも藤波がもっと毅然とした態度を取っていれば橋本の問題など起きなかっただろうと思います。
 結局、藤田対健介が決まり、小川は新日撤退宣言をして一見落着かと思いきや、またも猪木が小川、安田、中西の巴戦と言い出しました。どうもこんな状態で小川が新日に出ることがいいこととは思えません。小川はPRIDEと対K−1で頑張って欲しいと思います。健介はアメリカでバリトゥードとボクシングの修行をして復帰します。それくらいのことで藤田には負けて欲しくありません。ここはさらなる試練を健介に与えて、そして藤田自身は早くミルコに雪辱して欲しいと思います。
 今のマット界で気になるのは、全日本がこんなことになって、新日本の一人勝ち状態であるということです。以前は新日の対抗として全日がありました。それでバランスが取れていたと思います。今は新日がおかしな方向に行っても、それにブレーキをかける勢力がありません。そういう意味ではノアは新日と交流するのではなく、新日のブレーキになって欲しいと思います。
 同じことが猪木にもいえます。以前は馬場さんという強力なライバルがいましたが、今は猪木にストップをかける人がいません。K−1との対抗戦を実現させるなど、さすが猪木という動きも見せてはいますが、最近、新日に対して猪木が強引に出してきたカードはどれも満足のいく内容にはなっていません。今回の小川対藤田もどうかなあという感じでした。橋本との問題にしても暴走気味という感じがします。猪木にも馬場さんに匹敵するライバルが必要だと思います。
 さて、ひさしぶりの新日東京ドーム大会がどうなるのか、しっかり見届けたいと思います。