Vol.73 2001年のプロレス


 最強タッグが始まると、今年ももう終わりだなあという気がします。21世紀になって、プロレスが変わってしまっても最強タッグが年末の風物詩であることに変わりはありません。ということで、まだ1ケ月残ってはいますが、今年のプロレス界の総括をしたいと思います。
 プロレスの名勝負は、試合というよりその場の空間だと思います。レスラーの気持ち、体力、技術、観客の思い、そして時代の流れがピタッとはまった瞬間に素晴らしい空間が生まれます。プロレスファンで良かった。この場にいられて幸せだという気持ちになります。だからプロレスは生で観なければ意味がありません。 そんな瞬間が訪れるのは年に何度もあるものではありません。主なビッグマッチだけ観に行けばその時に出会えるというものでもありません。何十回と会場に足を運んで、そのうち何回かその瞬間を味わえるのです。それがあるからプロレスファンはやめられません。
 今年あったそんな瞬間をあげてみると、まず何と言っても10.8東京ドームのカシンの秒殺勝利です。実力者といわれたカシンがPRIDEに参戦し、ハイアン・グレイシーと対戦して、何も出来ずに敗れ去りました。それから1年、きっちりとリベンジを果たしました。残念ながらPRIDEの方は観に行けませんでしたが、このIWGPジュニア戦での勝利の瞬間、そのリベンジ・ストーリーが頭の中を駆け巡りました。最近は、負けてはいけない試合に負けてしまうレスラーが多く、おまけに絶対に負けられないリベンジ戦にも負けてしまったり、リベンジすらしようとしなかったりと、フラストレーションが溜まりまくっていたので、カシンの姿勢には本当に胸のすく思いでした。それがこの瞬間に爆発しました。あの26秒が私には今年最高の瞬間でした。
 それに次ぐのが4.14全日武道館での武藤対川田戦実現と6.8全日武道館での武藤の三冠奪取となった天龍戦です。私にとっては新日を代表するレスラーは武藤と蝶野です。そして川田は紛れもなく全日のエースです。健介のときはピンと来ませんでしたが、武藤が川田と闘うとなれば、いくら全日の規模が小さくなったとはいえ、やはり夢の対決です。試合前のあのワクワク感は久しぶりの感覚でした。試合内容も素晴らしかったし、結果も武藤派の私には大満足でした。天龍戦もいい試合でした。この2試合が今年のベストバウトの1位と2位となるでしょう。状況からして武藤の三冠奪取に大きな期待があり、結果もその通りになりました。久しぶりに歴史的瞬間に立ち会った気がしました。その後、武藤は6冠を奪取。見事な活躍でした。結果も残し、試合内容も申し分ない。今年のMVPは武藤で決まりです。
 そしてもう1つが3.2ZERO−ONE旗揚げ興行での小川と三沢の遭遇です。この興行は今年のベスト興行でした。星川と丸藤の第1試合に始まり、橋本&永田対三沢&秋山のメインまで盛り上がっていった雰囲気は久しぶりに味わう最高のプロレス会場の空気でした。そして最後の小川の乱入。プロレス独特のものである乱入は誤解のもとにもなっていますが、魅力の1つでもあります。この小川の乱入は近年まれにみる名場面でした。賛否両論の小川ですが、技術も持っている雰囲気も超一流だと思います。試合が少ないので逃げているという批判もありますが、負けるくらいなら闘わない方がましです。藤田や桜庭が負けて、今やプロレスの強さを託せるのは小川だけです。橋本とのタッグで三沢と対戦の目も少し出てきた気がします。今後の活躍に期待したいと思います。
 さて、1年を振り返ってみましたが、今年はまだ終わりません。全日最強タッグには武藤が初出場。新日の最終戦では藤波との三冠王座防衛戦もあります。秋山対ベイダーのGHC戦があるノアのビッグマッチ、橋本と小川のタッグ戦がある真撃も控えています。PRIDE.18に、そして大晦日には猪木軍対K−1の大一番が控えています。永田とミルコの対戦が決定的です。またプロレスファンで良かったと思える瞬間に出会えることを願っています。