増刊号 新日ドームは最低でした
「INOKI BOM−BA−YE」は素晴らしかったです。ここ数年でのベスト興行でした。すべてが良かったわけではありません。猪木の特徴でもありますが試合前の一連のゴタゴタは良くないと思います。カード発表も遅かったし、直前の変更もありました。褒められたことではありません。高田の消極ファイトに始まり、前半戦の4連続ドローにはうんざりしたし、永田には失望しました。しかし、それらをすべて消し去ってくれたのがまさかまさかの安田の感動の勝利でした。あの瞬間の空間はプロレスファンにしか味わえない素晴らしいものでした。試合直後にも急いで感想をUPしましたが、少し時間がたって落ち着いたところで書き直しましたので読んでやって下さい。
猪木軍対K−1は石井館長の「バンナを藤田か小川と闘わせてみたい」という一言から始まりました。対して猪木は「おもしれえ。どうせなら対抗戦でもやったらいいじゃない」と応じ、本当かよと思っているうちに藤田対ミルコが実現してしまいました。さすがは猪木ですが、対する石井館長もさすがでした。K−1は空手にプロレスの要素を取り入れたものです。興行的な戦略もプロレスのいい所を積極的に取り入れているように思います。結果としてK−1は格闘技界における大きなムーブメントとなりました。藤田がミルコに負けたのはショックでしたが、結果としてそれが猪木軍対K−1をより大きなムーブメントにしました。
打撃かサブミッションかというのは格闘技の永遠のテーマです。一撃必殺の打撃を持った選手と、捕まえれば必ず関節を極められる選手が闘ったらどうなるのか?どちらが勝つのか?とても興味があります。今回の試合でもいろいろな形がありました。ルールの難しさも痛感しました。1R3分では引き分けが増えるのは仕方ないところではないでしょうか。それでも敢えて闘うことに意義があります。初めはK−1にとってこの闘いは何かメリットがあるのだろうかと思っていましたが、実際に闘った選手は大きく成長したと思います。
さて、試合の方に移りましょう。第1試合が高田対バンナでした。高田にはこれまで何度、裏切られたことか。確かに一人の格闘家としては好きなように闘えばいいのですが、高田のこれまでの歩みを考えればプロレスの代表として見られるのも事実です。内容も結果も残してもらわなければ困ります。正直言って、もう出てきてくれるなという気持ちもありました。でも、師匠である猪木のイベントに参加するのは最後のチャンスだから怪我を押して出たいという気持ちには男気を感じずにはいられませんでした。結局、ほとんど何もしないままのドローに終わり、ブーイングの嵐でしたが、あのベルナルドでも同じくまったく出て来れなかったのは意外でした。高田という生き方にはいろいろな意見がありますが、遂に本人があと1試合と表明しました。どう決着をつけるのか見守りたいと思います。
第2試合の佐竹も、正直言って出てくるなよの1人でした。それでも苦境にあった猪木軍に名乗りを上げた心意気はやはり買ってやりたいという気がします。グレコを相手にして健闘したと思います。ただこれから総合格闘技でやっていくなら、打撃以外の技術をもっと身につけないと厳しいでしょう。
第3試合はグッドリッジと、レネ・ローゼが欠場で急きょブラガの対戦となり、猪木軍対K−1とは違うんじゃないかという試合になってしまいました。これも決めてに欠けてドローとなりました。
そして第4試合に石澤が登場しました。ここらでスカッとした勝利が見たかったのですが、攻めてはいたものの極められず、4試合連続のドローとなってしまいました。プロレスでは自由自在に関節技を駆使するカシンがなぜ極められないのか不思議でなりませんでした。準備不足もあったでしょうし、プレッシャーもあったでしょう。ハイアンへのリベンジ戦ほど闘いのモチベーションも上がっていなかったと思います。それでも石澤は出た以上は勝たなければいけない選手だったと思います。
第5試合はフライ対アビディ。外人同士ということもあり、結果はどうでもいいからいい試合を見せてくれという気持ちでした。そしてフライががむしゃらに前に出て、ようやくかみ合った試合になりました。勝ったフライはもちろん、負けたアビディも素晴らしかったと思います。結果的にこの1勝が猪木軍の勝ち越しにつながったわけで、あまりこだわっていなかったこの勝利が実はとても大きかったと思います。
そしてセミの永田対ミルコです。今回最も期待していたのがこの試合でした。しかし、結果は永田の惨敗でした。永田は逃げるでもなく、近づくでもなく、危ない距離にいるなと思っている矢先にいきなりのKOでした。止めるのが早かった気もしますが、ミルコのキックでぶっ倒れたことは紛れもない事実です。永田は出場した勇気を称えるというレベルの選手ではありません。相手も今やプロレスラーキラーとまで言われるプロレスの外敵です。出た以上は結果を残さなければなりませんでした。しかし、残ったのは最悪の結果でした。
これで相当落ち込んでしまいました。まさか安田がバンナに勝てるとは夢にも思いませんでしたから、しかし、安田入場時の会場の雰囲気、そして入場してくる安田の顔つきを見たら、期待感が膨らみました。この時の安田は本当にいい顔をしていました。会場の雰囲気も最高でした。そして安田はしゃにむに前に出て、あまり格好良くはなかったけれど、バンナに勝ってしまいました。この安田勝利の瞬間がすべてでした。本当に感動的な一瞬でした。この試合を見ると、最後は技術云々じゃなくて気持ちなんだなと感じました。安田の勝利に対する執念はこの日一番だったでしょう。対するバンナのモチベーションが高かったとは思えません。安田はマルコ・ファスのもとで特訓を積んだということでしたが、どこまでその成果が出せたでしょうか。あの突進は昔から身に付いている相撲そのものだったような気がします。安田の勝利への執念が起こした奇跡でした。プロレスファンにとって2001年はあまりいい年ではなかったような気がします。しかし、安田のおかげで最高の気分で年を越すことが出来ました。安田に対する感謝の気持ちでいっぱいです。
もう一つ、このイベントでは猪木の存在の大きさを改めて感じました。猪木がいなければあり得なかったイベントです。テレビ中継は紅白の裏で14.9%を記録し、他の民放に圧勝しました。プロレスファンの人以外にもこのイベントは充分認知されていました。こんな凄いレスラーはもう二度と出て来ないんでしょうね。
祭りは終わったわけですが、宿題も残っています。ミルコの株はますます上がりました。誰かが止めなければなりません。惨敗を喫した永田もこのまま終わってもらっては困ります。不出場の道を選んだ小川直也も宿題を抱えてしまったといえるでしょう。出場して欲しかったとは思いますが、それはあくまで本人の問題です。今後、出なかったことをマイナスではなくプラスにしていけばいいわけです。同じく怪我のため欠場となった藤田もいづれはこの闘いの舞台に出て来なければならないでしょう。
次のビッグイベントは永田と小川も出場する新日ドーム大会です。どんな闘いを見せてくえれるのか。増刊号でお届けします。