Vol.75 さらば新日本


 ・・・本当に新日をぶっ壊してくれませんかね。武藤が何人か引き連れて完全に全日に移ってしまうとか。・・・小川対健介にあきれ返り、先月のこのページに書いた言葉ですが、内心ではまさかないだろうと思っていました。しかし、そのまさかが本当になってしまいそうです。武藤、小島、カシンが新日を退団、スタッフ5人とともに全日入りとなりそうです。
 全日の引き抜きという噂もあります。真相は分かりませんし、知る必要もないと思います。交流が始まったときは、全日は新日に骨抜きにされてしまうのではないかと思っていましたが、逆にこんな事態になるなんて全日良くやったという感じです。
 時代の流れとして団体という枠がなくなりつつあります。浜田文子もアルシオンを退団してフリーになりました。女子では以前から貴子、飛鳥、下田&三田といった大物がフリーとして複数の団体で活動しています。団体に所属している選手が他団体に参戦するのも普通のことになっています。男子も藤原組長、邪外道、田中将斗などフリーで活躍する選手も現れましたし、他団体との交流も当たり前になりました。
 武藤の新日退団にはそんな背景がありますが、そればかりではないと思います。遂に新日本のていたらく振りのつけが回ってきたのです。「ここ数年で新日本の方向性が分からなくなってきた」という武藤の言葉にはまったく同感で、最近の新日本にはプロレスに対するポリシーというものがまったく感じられません。ただその場の話題を集めて客を呼ぶためだけに大仁田、小川、川田、秋山らをリングに上げて、懲りもせず不透明決着で引っ張るという繰り返し。橋本を見殺しに、藤田に去られ、ある時は脱猪木と言ったかと思えば、またある時は猪木に頼り・・・。愛想をつかされて当然です。
 それでも新日本は選手層の厚さと長年の経験からくる営業力は文句なしのナンバーワンで、全日が分裂してしまってから唯一のメジャー団体という状態でした。この状態も良くなかったと思います。天狗になって足下を見ていないのです。新日本には対抗勢力が必要です。猪木と馬場の時代のように、新日と全日が競い合うのがいいと思いますし、今の時代を考えれば、その争いにノアやZERO−ONEが加わっていけばいいと思います。そういう意味で武藤らの新日退団、全日入りは大賛成です。これを機に交流路線は止めにしてお互いに競い合っていって欲しいと思います。
 全日本は今まで通り王道プロレスを貫くべきです。昨年の活躍で武藤が全日にマッチしているのは証明済みです。2.24には今年初の武道館大会があります。武藤対川田の三冠戦が決まっていますが、これが俄然楽しみになってきました。そろそろベルトを返す時かと思っていましたが、武藤が正式に全日入団となれば、真のエース決定戦となります。確実にいい試合をしてくれるという安心感に加え、結果の予想がつかなくなりました。楽しみです。
 新日本は外敵と闘い、打ち破って大きくなってきた団体です。新日が駄目になったのは、今になって考えれば、やはりヒクソンという外敵を放置したことが大きいと思います。好む好まざるに関わらず、新日は猪木イズムを継承していかなけらばならない団体だと思います。新日はPRIDEやK−1と闘って、打ち破り、プロレスの強さを世間に広めていくよう努力すべきです。
 闘魂三銃士で一人、新日に残る形になった蝶野には注目しています。新日のエースは断じて永田などではありません。蝶野です。蝶野は世間と闘っているレスラーです。やり方は猪木とまったく違いますが、常に世間の目を意識して行動しています。猪木と違うやり方をしているのは正しいと思います。猪木のマネをしても敵うわけはないのですから。ただ最近の蝶野は、負傷のせいもあるのでしょうが、リング内の闘いを疎かにし過ぎなところがあるので、リングの中で世間とそして猪木イズムとの闘って欲しいと思います。
 ノアも2.24武道館大会があります。小橋の復帰には注目しています。ノアは他団体とも交流しますが、自分の足下を固めることも忘れていません。その姿勢は今後も貫いて欲しいと思います。新日はノアとの交流を進めたいようですが、反対です。ノアは交流ではなく対抗勢力になって欲しいと思います。新日、全日に負けない第3の勢力になれるはずです。
 ZERO−ONEはまだ暗中模索の状態なので早く方向性を示して欲しいと思います。こちらも3.2武道館がありますが、ここでは何かこれがZERO−ONEというものを見せないといけないと思います。橋本と小川のタッグ結成は、橋本の立場から見れば、そんなことしている場合じゃないだろうという感じですが、将来にリベンジがあってのことならば、まあ良しとしましょう。ノアの側にZERO−ONEとどうしても交流しなければならない理由はありませんが、ZERO−ONEは三沢と小川の対決の予告編だけでなく本編も見せる責任があります。ノアに振り向いてもらえることをすべきです。
 PRIDEならびに猪木軍の格闘技路線も話題に事欠きません。2.24には田村対シウバ、エンセン対ノゲイラ、フライ対シャムロックという注目カードで全日武道館と同日興行があります。最近のプロレスに忘れられている勝負、闘いというものを追求して、どんどんプロレスに刺激を与えて欲しいと思います。
 また3.1横浜アリーナにはWWFがやって来ます。以前の日本ツアーのときは日本に侵略に来るといったイメージで敵視していた感がありますが、今は純粋にアメプロという1つのプロレスのジャンルとして楽しめるという状況になっている気がします。日本のプロレスとはまったく違いますが、最上級のエンターテイメントであることに間違いはありません。中でもロックの初来日は大注目です。日本のプロレスに刺激を与えて欲しいと思います。
 一方で寂しい話題として、リングスが2.15横浜大会をもって解散します。これも時代の流れといえばそうなのでしょうが、前田にはまだまだ格闘技界のために頑張ってもらいたいと思います。
 今、究極の夢のカードといえば武藤対三沢でしょう。武藤が全日に移ることによって実現が遠のいてしまったのでしょうか。それとも・・・。今のプロレス界は恐ろしく流れが早くて何が起こるか分からない状態です。今年はどうなっていくのか、まったく予想が出来なくなってしまいました。
 結局、闘魂三銃士は、それぞれ別の団体ということになりそうです。結局こうなる運命だったのかなという気もします。川田はちょっと可哀想に思いますが、武藤が全日のエースとなり、新日は、長州をとっとと二度目の引退に追い込み、蝶野に牛耳ってもらいたい。橋本のZERO−ONEもしっかりしてもらって、三沢のノアを加えて競い合ってくれれば、プロレス界はかえっていい方向に変わっていくのではないかと思います。1、2年の間は交流戦は最小限に押さえて、それぞれが地力をつけて、その後に対抗戦を行えば、本当のオールスター戦になるのではないでしょうか。