Vol.77 WWF上陸、ZERO−ONE1周年


 武藤らの新日離脱騒動も、全日武道館大会を経て、全日への正式入団が発表され、一段落着きました。しかし、格闘技界は休む間もなく、3月に入るとすぐにビッグ・イベントが連発でした。
 まずは、遂にWWFが日本上陸しました。横浜アリーナのチケットが即日完売。私も観に行きたかったのですが、買えませんでした。チケットを買えなかったなんてここ数年では経験がありません。異常人気です。WWFが日本にやって来たのは初めてではありません。8年前にも日本ツアーを行い、当時WARの天龍ら日本人選手も参戦しましたが、観客動員、内容ともにイマイチでした。あの時は、WWFが侵略してきたというイメージがありました。しかし、今は大きく状況が変わっています。
 私は賛成できませんが、今、プロレスは格闘技とは別もので、見て楽しければいいという考え方が主流になっているようです。強さよりも、うまさ、面白さを追求しようという流れがあります。ならば究極のエンターテイメントであるWWFが見たいということでしょう。プロレスも多様化し、WWFもその1つとして抵抗なく受け入れられるような時代になっています。
 私は日本のプロレスとアメリカのプロレスはまったく別ものと思っています。アメリカはショービジネスの国です。プロレスもそうした文化の上に成り立っています。アメリカ人の知り合いは、プロレスの試合という言い方がしませんでした。はっきりと「レスリング・ショー」と言います。アメリカではプロ・バスケットボールのNBAが大人気です。生で観戦する機会がありましたが、これがもの凄く格好良くて、単なるスポーツではなくて、会場の雰囲気がまさにエンターテイメントでした。生でアメプロを観たことはありませんが、テレビなどで見ると、やはり素晴らしいエンターテイメントなのです。だから、私もその究極であるWWFを生で観たいと思います。ただ、日本のプロレスもWWFを見習えというのではありません。前提となる文化がまったく違うのですから。
 日本には武道というものがあります。古くから相撲という興行格闘技の文化もあります。だから日本のプロレスは闘うということがベースになっていると思っています。プロレスは確かに見せるためのものですが、ショーを見せるのではなく、闘いを見せるものだと思います。今のプロレスはその大事な部分を疎かにしていると思います。今回のWWFの成功でも分かるように、エンターテイメントでは日本のプロレスはWWFにまったく勝ち目はありません。日本のプロレスが闘いを疎かにしている限り、今後、WWFは日本のプロレスの脅威になると思います。日本のプロレスは本来の日本のプロレスの素晴らしさを取り戻して対抗していってもらいたいと思います。
 さて、その日本のプロレスはというと、WWFの横浜アリーナ大会の翌日にZERO−ONEの1周年記念両国大会がありました。結局、闘魂三銃士が各団体に別れるという形になり、そんな中で橋本のZERO−ONEは面白い存在になれる可能性は持っていると思います。しかし、近年のベスト興行ともいえる1年前の面影もなく、今回はひどい興行でした。
 客席はガラガラ、しょーもない試合の連続で、まったく盛り上がりなしでした。最後の丸藤対星川、橋本対田中、小川対大谷はさすがにそこそこの試合でしたが、冷え切った気持ちを熱くするほどではなく、最後の乱闘、マイクアピールもまったく説得力なしでした。
 目論んでいた三沢の参戦が流れたことで苦戦は予想されましたが、それにしてもお寒い内容でした。橋本はもう一度三沢を担ぎ出す責任があると思います。しかし、この1年、三沢を振り返らせるようなことは何も出来ませんでした。プロレスファンを納得させることも出来ませんでした。もっと頑張ってもらいたいものです。
 さらにその翌日、K−1ワールドGPの開幕戦がありました。トーナメントではなくワンマッチを取り入れたり、いきなり昨年のGP王者であるハントと、総合で名を上げたミルコの対戦を組むなど積極的に手を打ってくる石井館長は素晴らしいプロデューサーです。もともとK−1はプロレスの興行手法をうまく取り入れていたと思いますが、今では立場が逆転しているようです。今やK−1は格闘技界の一大ブランドになりました。プロレス界にとって大きな脅威です。
 一時は勢いをなくしていたかに思えましたが、総合格闘技の舞台で外敵と果敢に闘ったことで盛り返しました。最初は無茶なことをすると思いましたが、結果的には大成功でした。これは本来ならば新日がやっていなければならないことでしたが、永田の敗戦もあり、今の新日は完全にK−1に押されています。ミルコがハントに勝ったという結果は、ミルコに借りのあるプロレス界にとっては嬉しい結果でした。ミルコの価値が落ちないうちに借りは返さないといけません。ヒクソンを逃してしまいそうな現状において、これはプロレス復権のための絶対条件です。
 3月中旬は少し中休みという感じでしたが、後半の21日には新日の東京体育館大会がありました。見たいカードがなかったので、パスしました。同じ時期に4.7ノアの有明大会のカードが発表されましたが、こちらの豪華なラインナップに比べて、何とも魅力のないラインナップになってしまったものです。蝶野体制は歓迎ですが、その蝶野が安田に敗れ、リング上でもリーダーにならなかったのが、分かりにくくて、面白くありません。5.2東京ドーム大会も橋本&小川やノア勢に頼らなければ、とても満員にはならないでしょう。本当に新日にはもっとしっかりしてもらたいと思います。
 23日には全日のチャンピオン・カーニバルが開幕しました。こちらは、武藤、小島の加入で俄然、面白くなるはずだったのですが、大変なニュースが飛び込んで来ました。川田が右ヒザの負傷により、シリーズ全休、三冠王座返上となってしまいました。復帰まで半年以上かかる見込みということで、武藤、小島と川田の対決は当分お預けとなってしまいました。非情に残念ですが、川田にはケガを完治させて復帰して欲しいと思います。