増刊号 闘魂記念日


 闘魂記念日というネーミングは実にいいです。30周年を祝おうという気になります。とはいえ、新日のドーム興行には裏切られるばかりで、次はもう行くのをやめようと思いつつ、結局は観に行ってしまうという繰り返しでした。今回はいつも1万円の席でしたが、5千円に値下げしました。そして期待するのもやめました。今回観たいのは蝶野対三沢とOH砲、そして猪木と全女だけでした。
 まずは30周年記念のセレモニーです。実は試合よりもこちらの方が楽しみでしたが、内容は期待外れでした。OBとゲストもこれといってインパクトにある選手はおらず、表彰された外人レスラーもノートンとフライの試合にも出場するレスラーでした。ビル・ロビンソンの登場がおっと思ったくらいでした。
 お約束通りタイガー・ジェット・シンが乱入し、元チャイナことジョニー・ローラーと乱闘を演じましたが、まったくの茶番劇でした。倍賞美津子さんが登場したのが一番面白かったかなというところです。
 そして試合が始まりましたが、第1試合の大日本マッチも、これといったインパクトはなし。柴田対井上のヤングライオン対決にも熱いものは感じられず。最近の若手は変に持ち上げられて、アピールばかりうまくなって、ちょっと違うんじゃないかという気がします。3代目&4代目タイガーマスク対ブラック・タイガー&サムライも、今さら金本がタイガーマスクをやってどうするのという感じでした。どちらも急造タッグで動きもギクシャクしていました。ここまで3試合、まったく沸かず、何も観るものなしでした。
 第4試合が全女のタッグ・マッチです。豊田&堀田対伊藤&中西ならば、見慣れている私にとっては、いい試合にならないわけがないという感じですが、女子プロを観ない人たちがどう感じるか興味がありました。全女の今井リングアナがリングに上がった瞬間に客席のボルテージが上がりました。そして試合が始まるとあちこちから驚きの声がもれ、初めて盛り上がりました。新鮮だからというのもあるのでしょうが、見慣れた者が観ても、全女の試合が前半戦のベストバウトでした。今の新日だったら他団体に試合を提供したら、食われてしまうと思っていたましたが、その通りになりました。
 続くIWGPジュニアタッグは、ノアのジュニア勢が観戦に訪れたこと、そして生中継の開始時間を考えれば、15分くらいでライガー&田中が邪外道に勝ってタイトルを取り、ノアと一悶着あるんだなと分かってしまい、結果もその通りになりました。特に観るほどのものでもないので、試合終了と同時に、トイレ&一服タイムにしました。
 後半戦からテレビの生中継も始まりました。蝶野が猪木から現場の全権委任されたというくだりのVTRは会場のオーロラビジョンでも流されました。そして猪木と蝶野がそろって入場し、小川&橋本の登場とは、なかなか考えているなという感じです。
 小川のたたずまいは本当に素晴らしいです。会場もようやく本格的に盛り上がり、私の気持ちも盛り上がりました。この緊張感が新日本なんです。蝶野もよくOH砲を呼んでくれたと思いますし、OH砲もよく新日本のリングに上がってくれたと思います。いい試合でした。ただ気になるのが小川の受けの弱さです。特にダメージが残ったようでもないので、打たれ弱いというわけではないのでしょうが、責め込まれると何もできませんでした。雰囲気、体格、身体能力とプロレスラーとして申し分ないものを持っている小川なので、あとは受けの凄みが備われば、本当に申し分がないのですが。
 ついでにテレビ中継に触れておきます。後でビデオで観ましたが、猪木と蝶野があんな漫才みたいなことをやっていたのですね。大一番に集中できず、蝶野は大変だったと思います。プロデューサーとレスラーの2役をよくこなしたと思います。
 さて、せっかくの緊張感は、続く安田対フライの入場時に、フライが安田を襲撃し、安田はのびて担架で運ばれてしまうという馬鹿げた展開でぶち壊されました。中西の相変わらず頭の悪い試合ぶりが目立ったバス・ルッテン戦、安田があっさり負けたフライ戦、ローラーが特別レフリーのスタイナー兄弟対健介&棚橋と不器用なアメリカン・プロレスが3試合続きました。久しぶりのスタイナー兄弟には少しだけ期待していたのですが、健介&棚橋は相手として役不足でした。そしてスタイナー兄弟はやはりだいぶ色あせていました。
 永田がエースだとか、王者だとか、私はまったく認めていません。かといって高山にもIWGPのベルトを巻く資格があるとも思えません。IWGP戦は私にとっては消化試合でした。果たして本当にみんな永田を認めているのかということに興味がありましたが、そこそこ盛り上がってはいましたが、高山はブーイングを浴びることもなく、むしろ声援の方が多かったと思います。永田に対する声援も爆発的なものではありませんでした。永田が勝った後、藤田、健介、フライらと次は誰が挑戦するみたいなマイク合戦をたらたらやっていると三沢コールが起こったのは痛快でした。やはりみんなそれほど永田を認めているわけではないのだなというのが感じられ、ほっとしました。試合の方はまあまあいい試合でした。
 そして蝶野対三沢は、なかなかいい試合ではありましたが、決して名勝負といえる内容ではありませんでした。引き分けという結果にも満足できません。それでもこの対決が実現したことを高く評価したいと思います。そういう気持ちになれるような試合内容だったと思います。ただ、延長コールが起こらなかったのは、あくまでもファンの厚意によるものです。100%満足した人などほとんどいなかったと思います。興行の超目玉であるカードをあえて30分1本勝負にして、引き分けでお茶を濁したという事実は決して褒められたものではありません。
 まあ新日本には何を言っても無駄でしょうから、もうあまり文句を言うのはやめにします。今回は期待しなければ腹も立たないんだなということを学びました。これからも新日本には期待せずに、観たいカードがあれば安い席で観に行くということにしたいと思います。
Vol.78 新日、ノア、全日の春

 いつの間にかすっかり春になり、プロレス界も活発に動いています。まず、新日では永田が安田に勝利し、遂にIWGP王座を奪取しました。そもそも対抗戦で負けてばかりの永田が王座決定トーナメントに出たこと自体が納得いきません。そしてトーナメントで負けたばかりなのに、すぐに挑戦できるというのがこれまた納得いきません。そして選手権で勝ってしまったというのがもっと納得いきません。新日が永田をトップに持ち上げようという雰囲気がにじみ出ていて嫌な予感はしていたのですが、予想通りの結果になってしまいました。蝶野が現場のトップになったのなら、裏であれこれやるのではなく、表でトップを張るべきです。永田をトップに持ち上げている場合ではないと私は思います。
 ともかくこれで30周年の東京ドーム大会に突き進んで行くわけですが、目玉カードはノア頼りというのが情けないです。確かに新日とノアの対抗戦は面白いです。蝶野対三沢は確かに夢のカードです。ただ、新日がノアに頼らざるを得ない状況で行われるのが納得いきません。ノアの会場で対抗戦が行われると、かなりヒートアップして新日の選手には大ブーイングですが、今の状況だと東京ドームではノアの選手に声援があるのではないでしょうか。新日は対抗戦の前に自らの足元を固めるべきだと思います。
 他団体に試合を提供するといのもいい企画ですが、ただ今の状況では他団体の試合の方に興味がいってしまいます。苦し紛れの企画という感じです。新日は本当にもっとしっかりしてもらいたいです。
 橋本&小川のOH砲の参戦決定は歓迎です。急きょ決まった参戦でもカード変更をしなかったのは好感が持てます。相手が天山&ノートンということで遺恨もなく、まともな試合になりそうです。ここでまた不透明決着なんてことになったら、小川はもう終わりです。是非、誰もが納得できる試合をしてもらいたいと思います。
 一方、ノアも有明コロシアムでビッグマッチがありました。豪華なラインナップでしたが、4時間を超え、2回も休憩があり、試合内容もイマイチで、だらけた興行でした。
 一番ひどかったのは新日の吉江です。もっと盛り上がっていいはずの中西&吉江対力皇&森嶋のGHCタッグ戦でしたが、吉江がしょっぱ過ぎてぶち壊しでした。中西が出れば勝てる場面で無理矢理に吉江を押し出し、また相手のワイルド2も王者としてはまだまだで、お互いに責めきれず、だらだらと時間だけが過ぎるという展開にイライラしました。一人、中西がずば抜けており、目を見張るものがありましたが、全体的には大凡戦でした。
 GHCジュニア戦も丸藤の負傷で凡戦となりました。こんな状態ならば、欠場すべきだったと思います。メインのGHCヘビー級戦で、小川が秋山にまさかの勝利となり、その以外さで何とか最後を締めましたが、本当に小川が取っちゃっていいの?という感じです。
 ジュニアの対抗戦は素晴らしかったと思います。三沢対冬木も、三沢がかなり冬木に付き合ったことで、いい試合になりました。三沢の貫禄勝ちでした。その冬木が大腸がんで引退というショッキングなニュースも飛び込んで来ました。とにかく冬木は病気を治すことに専念してもらいたいと思います。
 全日本の春といえばチャンピオン・カーニバルです。今年は武藤と小島の加入で俄然盛り上がりました。ところが、開始早々に川田が負傷でリタイヤ、復帰まで半年以上という長期離脱となってしまいました。川田と武藤の対決が当分の間、お預けとなってしまい、非情に残念です。
 リーグ戦は、Aブロックは川田の欠場で、小島とバートンが順当に得点を伸ばし、早々と決勝進出。Bブロックは天龍が武藤を撃破し、ぶっちぎりのトップ。武藤は初戦でウイリアスにも敗れるという苦しい展開ながら何とか2位で決勝進出。決勝トーナメントでは天龍がバートンに敗れるという波乱もあり、武藤が逆転優勝しました。
 一度も生で試合を観ていませんし、テレビ中継もないので分かりませんが、伝え聞くところによると武藤らの入団効果で各地で盛り上がったようです。ただ、小島とバートンが引き分けることも、武藤が何とか決勝に進出することも、決勝で武藤と天龍の直接対決がなさそうなことも、結局、武藤が優勝することも、すべて予想通りの結末でした。
 武道館大会はグランドチャンピオン・カーニバルと銘打たれ、スペシャルマッチが組まれました。川田の負傷欠場により空位となった三冠は武藤と天龍で王座決定戦が行われました。カーニバルの決勝で武藤と天龍が当たらないだろうと予想できたのはこの対決が決まっていたからです。そして公式戦では天龍が勝っているとなれば、ここは武藤の勝利が予想されましたが、結果は違ってしまいました。武藤を応援していたので残念でしたが、天龍もいつまでも衰えを感じさせない凄いレスラーです。試合内容も良かったです。まだそれほど対戦したわけでもないのに、早くも新鮮味は失われてしまいましたが、武藤が腕に攻撃を集中するという新しいパターンを見せたり、さすがにミスターと天才の対決は見応えがありました。
 小島とケアもフレッシュな好試合を見せてくれました。そしてカシンと渕もいい試合でした。カシンは完全に自由奔放、傍若無人のスタイルを定着させました。全日マットにも見事にマッチしています。ジュニアのタイトルを獲得し、今後のカズ・ハヤシとの対戦も楽しみです。
 最後に、かねてから噂はありましたが、長州の新日退団が決まりました。確かに今の新日に長州の居場所はありません。長州の現役復帰は今でも認めていませんし、近年の新日がダメなのは長州によるところが大きいと思っていますから、この流れは大歓迎です。