
Vol.79 プロレス界は小休止、そして悲しい知らせ
5月の初めに新日の東京ドーム大会、WEWの川崎球場大会と2つのビッグマッチが終わり、マット界はちょっと一休みという感じです。この2つの大会は、一昔前ならメジャー対インディーと騒がれるところだったのでしょうが、三沢、橋本と金村は両大会に出場するなど、今やメジャーもインディーも関係ないという感じです。ファンはカードが良ければ見に行くという感じなのでしょう。
新日のドーム大会については、先月の増刊号で触れたので、ここではあまり書きません。ゴールデンタイムに生中継されたテレビの視聴率は7.1パーセントでした。裏のサッカー中継には惨敗でした。猪木対蝶野とあおった割には、試合の合間の出来の悪い漫才みたいなやり取りだけという内容では、数字は取れないだろうとは思っていましたが。チケットも凄い勢いで売れているという前評判でしたが、当日券は余裕でありましたし、外野席にはあまり客を入れていませんでした。最近のドーム興行にしては良く入っていましたが、以前の勢いには及びませんでした。その他の試合の内容にしても週プロなどで言われるほど良かったとは思えません。すべてがまあまあというところで、以前の新日のような爆発するものは感じられませんでした。これが今のプロレスで、私が時代遅れなだけなのかもしれませんが。
続いてWEWの川崎球場です。こちらは見に行きませんでしたが、伝え聞くところによると行かなくて正解という感じでした。橋本と大仁田の対決にはまったく興味を引かれませんでした。というよりそんなもん見るかという感じです。やはり試合は成り立ちませんでした。橋本は大仁田などに関わっている場合ではありません。ZERO−ONEはシリーズ形式の興行が始まり、面白いとの評判です。一度見に行こうかという気になっているので大仁田などを持ち込まないで欲しいと思います。
田上対黒田、ベイダー対金村というカードも一昔前なら考えられないような組み合わせでした。もはや団体の壁なんて存在しないも同じです。
その後もそれなりの話題はありました。全日では馬場杯6人タッグトーナメントを開催され、武藤がハインズ、ハヤシとスキンヘッドにヒゲと黒いロングタイツという揃いのスタイルで優勝しました。この辺りの武藤のセンスはさすがです。カシンはブッチャーと念願のタッグを結成し、世界ジュニア戦では浪花のマスクを剥ぎ、トロフィーを踏みつけ、次の挑戦者にグラン浜田を指名するいう感じで、あいかわらずいい味を出しています。ノアでは大森と高山のノーフィアーが解散。力皇と森嶋のワイルド2がタッグ王座を防衛。だいぶ格好がついてきました。ジュニア王座決定トーナメントも開催され、金丸が新王者となりました。丸藤の負傷は非情に残念ですが、無理をせずに完全に治して欲しいと思います。新日は恒例のジュニアの季節となりました。
未確認の情報ですが、UFOが8月8日に東京ドームで小川対ミルコかノゲイラで興行をやるとか、WWFが10月に東京ドームに進出し、武藤対ロックをやるとか。実現すればどちらも楽しみなイベントです。大いに盛り上がって欲しいと思います。
一方、悲しい知らせも相次ぎました。4月19日にはワーフー・マクダニエルさんが58歳で亡くなりました。インディアン酋長と呼ばれ、トマホークチョップを武器に60年代から70年代に活躍した名レスラーです。まだ外人レスラーに夢とスケールのある時代でした。4月27日には鉄人ルー・テーズさんが亡くなりました。86歳でした。テーズは初めて見たときから年を取っていた感じですが、追悼番組で見た若い頃の試合は、とても格好良かったです。まさに古き良きアメリカという感じで、オーソドックスなレスリングスタイルが非情に心地よかったです。ジャイアント馬場さんに始まり、近年は毎年、名レスラーが亡くなっています。時が経てば当然のこととはいえ、悲しいことです。お2人のご冥福を心からお祈りします。
悲しい知らせはまだ続きました。5月26日に元FMWの社長、というより私にとってはリングアナウンサーという印象が残っていますが、荒井昌一さんが自殺しました。FMWの倒産で3億円の負債を抱え、それを苦にしてのことと言われています。エンターテイメント路線を突き進み、終盤のFMWはどこまでが本当でどこまでが嘘なのか分かりませんでした。倒産といってもそれほど深刻な問題とはとらえていませんでしたが、本当に大変な状態だったのですね。初期のFMWをリングアナウンサーとして支えた荒井さんは、とても責任感の強い人という印象を受けました。すべての責任を一人でかぶってしまって、どうしようもない状況になってしまったのではないでしょうか。不況の世の中が遂にプロレス界も直撃してしまったという感じです。非情にやるせない事件でした。荒井さんのご冥福を心からお祈りします。
そして、まさかまさかという感じでしたが、弔報はまだ続いてしまいました。デイビーボーイ・スミスが5月17日、カナダ・カルガリーで心不全のため亡くなりました。まだ39歳という若さでした。ダイナマイト・キッドとともに新日、全日で暴れ回っていた元気な姿が思い出されます。信じられません。ご冥福をお祈りします。