増刊号 夏の終わりの4連戦


その3 全日武道館2連戦

 全日の30周年記念第2、3弾、武道館2連戦は、1日目が「楽しく」の闘いで武藤プロデュース、2日目が「激しく」の闘いで天龍プロデュースとなりました。
 しかし、一番の見所は何といってもゴールドバーグの初来日です。K−1の石井館長がマネージメントしているというのが気に入りませんが、とにかく数少なくなってしまったまだ見ぬ超大物のファイトが遂に生で見られました。筋骨隆々の体格いい、その雰囲気といい、まさしく本当の大物でした。小島、ケアとまったく寄せ付けず圧勝しましたが、2日とも必殺技のジャックハマーを見られなかったのが不満でした。また参戦して欲しいですし、是非、武藤との対戦が見たいです。
 無冠とはなったものの武藤はすっかり全日の顔になりました。1日目はケアとシングルで勝利し、2日目はイルミネーションマッチで最後の1人となり、敗れましたが、連日メインに登場し、しっかり仕事をしました。武藤対ケア戦はいい試合でした。イルミネーションマッチは全日では初ですが、新日でやっていたものはゲーム性が強くてあまり好きではありませんでした。今回のイルミネーションはオーバー・ザ・トップロープでの失格はありませんでした。そのせいかどうか、ただのタッグマッチをダラダラとやっているという感じでパッとしませんでした。意外にオーバー・ザ・トップロープのルールがあった方が、イルミネーションマッチはスリルがあって面白いかもしれません。
 天龍も相変わらず素晴らしいレスラーです。まったく年齢を感じさせません。タッグ王者のクロニク、なぜか天龍軍に加わったウイリアムスなど常連外人レスラーはイマイチだった気がします。ブッチャーもマイクパフォーマンスで会場を沸かせていましたが、私は昔のヒールのおもかげがすっかりなくなってしまったブッチャーなど見たくはありません。カシンは相変わらずいい味を出していました。ゴールドバーグの引き立て役になってしまった小島とケアはイマイチでした。
 その他では、2日目の闘龍門の選手にジミー・ヤンが加わった6人タッグマッチが最高でした。ドラゴン・キッドの驚異的な飛び技、マグナムらの強烈なキャラに、ヤンもまったく劣らない存在感を示していました。

 さて、4連戦を見終わって、一番良かったのは「Dynamaite!」でした。何せ国立競技場ですから当然、話題性もダントツでした。フライの負けっぷり、ノゲイラの強さ、吉田の勝利には素直に感動しました。あの感動は新日、全日の武道館大会では残念ながら味わえませんでした。本当にプロレスの危機を感じます。プロレスはもっと感動を与えられるものであるはずです。もっともっと頑張って欲しいです。


その2 新日武道館

 G1の優勝戦は最近の新日にしては満足のいく興行でした。新日の大同団結、外敵との抗争へという展開も面白いように感じられました。それで今日のチケットも買いました。一番安い席ですが。でも、昨日、桜庭がミルコに勝ってくれれば良かったのですが、負けてしまったので、藤田も永田もミルコに借りも返さないで、何をちまちまやってるんだという気になってしまいます。昨日は国立競技場が満員。今日は武道館も満員にならないという状況も、プロレスファンとしては情けないです。
 とりあえず、試合の方ですが、メインの藤田対高山はそれなりにいい展開のプロレスの試合でした。藤田が負けたのは意外でしたが、高山の最近の頑張りは認められてもいいと思います。
 ノアとのジュニア対抗戦も、それなりにいい試合でした。金本は本当に対抗戦向きです。橋を圧倒しました。井上とKENTAもフレッシュさあふれる攻防でした。ライガー&田中対金丸&菊地のジュニアタッグ戦は何といっても菊地の頑張りでしょう。でも、ベルトを取られちゃいけないんじゃないでしょうか。
 健介は予想通り、藤田ミノルに圧勝。健介らしさが出ていて良かったと思います。安田はヒールぶりがすっかり身に付いてきました。なかなかいいキャラだと思います。もっとそのキャラを生かしてあげられたらいいと思うのですが。デビュー戦の中邑は、体も大きく、いい素材です。
 シルバ対シンの大巨人対決は、とんだ茶番劇でした。あの2人に期待するのが間違っていますが。とにかくシルバがシンをフォールして決着が着いたことだけが救いでした。試合後は、必然性はまったくなかったのですが、新マスクマンのヒートが乱入しました。新日の思惑通り子供たちのヒーローになってくれれば、大いに結構ですが、コスチュームデザイン、動きを見た限りでは、あまりパッとしませんでした。
 結局、全体的にそれなりの興行でした。昨日のDynamaiteのスケールの大きさを体感しているだけに、何だか新日はいつの間にか、それなりに小さくまとまってしまったなと感じてしまいました。2日つづけて猪木が見られたのはラッキーでした。


その1 Dynamaite!

 夏の終わりのプロレス&格闘技4連戦。まずは国立競技場で行われた格闘イベント「Dynamaite!」です。素晴らしい大会でした。ここ数年のプロレス&格闘技のイベントでベスト興行といえるほどでした。ただし、メインの前までは。メインで桜庭が負けて、評価は半減しました。とりあえず第1試合から順にみていきましょう。
 まず試合の前、オープニングは猪木とエリオ・グレイシーが揃って聖火点灯でした。なかなかいい演出でした。そして第1試合は、急きょ参戦が決まった元極真全日本王者の岩崎がミドル級最強のシウバに挑んだ一戦です。予想通りシウバの圧勝でしたが、シウバの強さがストレートに現れており、いい試合でした。
 第2試合は、当初シウバと対戦予定だったベネチアンと松井の試合です。お互いに決め手を欠き、凡戦になるのではと恐れていましたが、その通りの試合となり、判定決着。大会が6時半に始まり11時までの長丁場になったことを考えれば、この試合は正直いりませんでした。
 第3試合はグッドチッジ対ロイド・バンダム。PRIDEルールとなれば、グッドリッジが負ける要素はありません。グッドリッジがらしさを発揮して短期KO決着で良かったです。
 第4試合はホースト対シュルト。逆にK−1ルールでは、ホーストが負ける要素はありません。しかし、シュルトもあれだけの巨体と動きですあら、ホーストも攻めきれず、フルラウンドで判定引き分け。これもつまらない試合でした。
 素晴らしかったのはここからです。第5試合のバンナ対フライ。K−1ルールでは、フライに勝ち目はありません。しかもあのバンナを相手にして、フライは一歩も引かず、真っ向から打ち合いました。結果は壮絶なKO負けを喫してしまいましたが、そのフライの姿勢には、感動で鳥肌が立つほどでした。負けたって、誰もフライが弱かったなんて思っていません。素晴らしい試合でした。
 ここで休憩とセレモニーがあり、エリオ・グレイシーとゴールドバーグが挨拶。そして猪木が予告通りスカイダイビングで登場。これも盛り上がりました。ただイベントがあまりに長すぎるので、もう少し早く進行することも考えて欲しいと思います。
 そして第6試合はノゲイラ対ボブ・サップです。ノゲイラが関節技で圧勝するだろうと思っていました。しかし、サップのパワーの前に、ノゲイラの関節技はあっさりと跳ね返され、大苦戦していました。パワーのある者が強いのか、関節技の技術を持ったものが強いのか。非常に興味深いテーマですが、最高の関節技の技術なら、どんなパワーにも通用するだろうと思っていました。しかし、サップの超人的なパワーにはノゲイラの技術でも通用しないのかと思い始めたとき、見事にノゲイラの腕ひしぎが決まりました。素晴らしい試合でした。試合後、ノゲイラが「この試合で自分が最強であることが証明できた」と言いましたが、まったく納得の一言でした。この試合と桜庭対ミルコを観て感じましたが、やはり格闘技においてパワーは必要です。ノゲイラは、サップには及ばないものの、ヘビー級の体格とパワーを持っていますから、勝つことができたのではないかと思います。技術はもちろん必要ですが、ある程度のパワーも必要であると感じました。
 第7試合が吉田対ホイスです。吉田は日本人とはいえ、プロレスラーではありませんから、あまり思い入れはありませんでした。純粋に柔道の金メダリストはどれくらい強いものなのかという興味がありました。結果は吉田の圧勝。ホイスは吉田の足元にも及びませんでした。柔道の金メダリストはものすごく強く、グレイシー柔術はたいしたことはなかったということが証明されました。どうせ引き分けだろうと思っていたんです。しかし、吉田がホイスを完全に締め技でとらえました。レフリーが試合を止めたことで、後のゴタゴタになるのですが、吉田の完勝でした。何度戦ってホイスは吉田には勝てないでしょう。吉田が勝った瞬間は、やはり感動しました。
 ここでウエーブが起こりました。久しぶりにみた自然なウエーブでした。今日の雰囲気ならウエーブが起きて当然という感じでした。ここまでは最高の興行でした。
 そして第8試合は桜庭対ミルコ。ここで桜庭が勝ってくれれば本当に最高の興行だったのですが、桜庭が負けてしまいました。しかも目を腫らしてドクターストップというすっきりしない形で。やはり体格差、パワーの差というのを感じました。桜庭がせっかくミルコを捕まえても、関節ではなくて打撃で勝負しようとしていたように見えたのも気になりました。桜庭は絶対負けてはいけない立場なのに、あまり勝利に執着しているように感じられなかったのも物足りませんでした。そして最後にもう一つ余分なものがありました。わざわざグレイシー一族が現れて「参ったしていないから負けていない」とアピールしていきました。私はプロレスラーには思い入れがありますが、柔道家に思い入れはありません。だから客観的に見て、吉田の勝利、ホイスの敗戦は紛れもない事実でした。実に後味の悪いアピールでした。
 さて、初めて進出した国立競技場が満員になり、これだけ盛り上がったのだから、大成功の大会だったといえるでしょう。私は桜庭の敗戦で、すべてが台無しになったと思っていますが、大半の人は桜庭の負けは負けで仕方ないことで、全体的には素晴らしかったと思っているようでした。石井館長は素晴らしいプロデューサーですが、プロレスファンとしては国立競技場進出、ゴールドバーグのマネージメントなど、本来プロレスがやらなければいけないことをやられてしまったという悔しさがあります。明日からは新日と全日の武道館3連戦です。プロレスの意地を見せてもらいたいと思います。


Vol.82 LEGEND&G1

 8月といえば、何といっても新日のG1でしたが、今年はUFOの東京ドーム大会がバッティングしました。まずはUFO「LEGEND」から始めたいと思います。
 出場選手とカードがイマイチという気がしました。藤田対安田なんて、藤田が言うように苦し紛れのカードです。小川の一枚看板で勝負するという感じになりました。絶対的なスーパーヒロー不在の今のプロレス界において、小川はその素質を一番持っているレスラーだと思いますから、この状況で小川の一枚看板で東京ドーム、ゴールデンタイムのテレビ中継で成功を収めれば、小川にとっては大きな飛躍となるでしょう。「プロレス最強を証明する」「総合格闘技ルールでもプロレスをするだけ」といった小川の発言には期待させられました。
 しかし、現実は厳しかったです。ドームの客席はガラガラ。予想はしていましたが、予想以上の不入りでした。私は6千円の2Fスタンド席のチケットを買っていましたが、2F席は閉鎖され、1Fスタンド席に振り返られるという異常事態でした。しかも4列目の席なんて、いかに不入りかを物語っています。テレビ視聴率も10.8%と不調でした。
 さて、内容の方ですが、小川の対戦相手のマット・ガファリはひど過ぎました。満足のいく内容にはなりませんでした。小川は確かに強かったのでしょうが、あれでは大きなインパクトは残せませんでした。試合後のマイク・アピールも、せっかく目の前にヒクソンがいたのに、歯切れが悪かったように思います。そもそも、選手がマイウアピールで締めるという最近の流行が私は好きではありません。選手は試合ですべてを語ればいいはずです。
 藤田対安田はもったいなかった。どちらにとっても別の選手とやった方が、もっといいものを見せられたはずです。猪木が「みんなが観たくて、一番やりたくないこと」と言っていましたが、このカードを望んでいた人はあまりいないのではないでしょうか。
 一番インパクトがあったのが、ノゲイラの右ストレートでの菊田へのKO勝ちのシーンです。ノゲイラは見事に強さを証明しました。他の試合も膠着状態が多く、満足のいく内容ではありませんでした。ジョニー・ローラーは問題外です。あんなものいりません。
 生中継に合わせた間延びした進行も、芸能人のリングアナも、気に入りません。ヒクソンが来場して、次に期待がつながったということが唯一の救いでしょうか。あとは橋本が小川のセコンドに着いて、試合後、猪木と握手を交わしたのが個人的には嬉しかったです。
 一方、年々、魅力と興味が落ちていく一方のG1ですが、今年は更にスケールダウンしました。これまで何連戦だろうと両国大会は観に行きましたが、今年は決勝だけにしました。まず出場メンバーが気に入りません。吉江や棚橋や健想や越中が出るなら、もうグレード・ワンではありません。安田の出場は当然だと思いますし、魅力でもあります。ただUFOとバッティングしていて全戦参加出来ないというのが納得出来ません。高山の出場も魅力ですが、安田&高山のいわゆる外敵が今回の目玉であり、彼らが出なかったら、本当に何の魅力もなくなってしまうという状況が気に入りません。武藤と小島が抜けただけで、こんなに寂しくなってしまうものなのでしょうか。
 そしてリーグ戦が始まってみれば、棚橋や健想が簡単に勝利してしまったり、蝶野が永田に当然のように負けてしまったり、反則まがいや隙をついた試合が多く、これまた納得のいかないことばかりでした。挙げ句の果てには、星野勘太郎率いる謎のマスクマン軍団の登場と、G1にふさわくないことばかりでした。
 しかし、最後の結果は、蝶野が天山、高山を連破して久しぶりの優勝と納得いくものになりました。決勝の両国は客入り、盛り上がりともまずまずでした。高山のヒザ蹴り、エベレスト・ジャーマンを受けて、返した上での勝利は内容的にも良かったです。負けた高山も素晴らしく、今年のG1は高山に救われたという感もありますが、とにかく蝶野が優勝したことで、すべて満足でした。やはり新日のトップは蝶野しかいません。現場責任者との兼任、体調の維持も大変でしょうが、蝶野にはG1だけではなくて、常にリングでもトップを張ってもらいたいと思います。
 試合後、安田、藤田が乱入し、例によって猪木もしゃしゃり出て、外敵を前に、新日勢が一致団結するという大団円で、今後の展開も楽しみになりました。今回のG1は最後には納得の結果になりましたが、まだまだ昔の新日には戻っていません。もっと刺激を与えなえればなりません。本当に新日には頑張って欲しいのです。
 さて、次の注目は8月末のDynamaite、新日武道館、全日武道館2連戦の4連戦です。全部見に行くつもりです。その模様は増刊号でお届けする予定です。盛り上がってもらいたいです。