増刊号 新日10.13東京ドーム観戦記


 少し早めにドームに入ると、何故か既に試合が始まっていました。プレゼントマッチという企画でした。今回のドームには出場しない選手が多数いますし、開始前には特にすることもありませんから、これはいい企画です。試合内容自体、本編より良かったくらいです。予定の3時きっかりに大会がスタートしたのも良いことです。ただ、試合はすぐに始まらず、オーロラビジョンで新日30周年の歴史を15分ほどやっていました。ちょっと長過ぎるで、いきなりだれました。これこそ試合開始前にやればいいのにという感じです。
 第1試合は、ライガー&タイガー&垣原対ロッキー・ロメロ、リッキー・レジェス、アメリカン/ドラゴンの新日ジュニア対ロス道場ジュニアです。長州は批判していましたが、ロス道場を作ったのは素晴らしいことだと思います。プロレスに外人レスラーの存在は不可欠で、最近は魅力のある外人レスラーが少なくなっていますから、外人レスラーもイチから育てるというのはいいことだと思います。この試合に出た3人もなかなかいい動きでした。
 第2試合は真壁&藤田ミノル対棚橋&健想。帰国早々、反逆児となった真壁の凱旋試合です。いきなりタナケンが藤田を攻め込み1本取ってしまいました。ここで終わっていればいい試合でしたが、真壁のアピールで1対2で延長戦が行われ、いつの間にか藤田が復活し、普通のタッグマッチとなり、真壁が勝ちました。この延長戦はまったく意味がありません。わざわざK−DOJOの興行に乗り込んで、藤田をパートナーとして連れて来たのですから、藤田が負けた時点で真壁組の完敗です。再試合などまったく意味がありません。
 第3試合は金本対ヒートのIWGPジュニア戦です。新日が子供のヒーローとなるキャラクターを作りたいと考えるのは分かります。でも、ファンはそういうキャラクターだからチャンピオンになれるとは思っていません。マスクをかぶれば、田中が金本に勝てるとも思っていません。そんな状況で、まったくの凡戦になってしまいましたが、金本が勝ったという結果には満足しています。
 第4試合は安田対高阪のNWFトーナメントです。安田のキャラクターを生かせないのは本当に惜しいと思います。この試合ではまったくいいところなし。逆に高阪の良さも新日マットでは出ないのではないでしょうか。
 ここで休憩が入り、猪木の登場。今回はイノキ・マスクを被った猪木が登場し、後からもう一人のイノキ・マスクが登場し、小競り合いをし、結局、最初に出て来た方が偽者で、後から来たのが本当の猪木だったという、まあ、しょーもない演出でしたが、やはり猪木の登場が一番盛り上がるところです。
 第5試合から新日対外敵の7番勝負。まずは吉江対柳澤。柳澤が勝つと思っていましたが、吉江が勝ちました。内容も悪くなく、吉江を見直した試合でした。西村対ルッテンは10R戦ってドロー。西村のこだわりには感服します。まさに西村ワールドが展開され、まったく長さを感じませんでした。いい試合だったと思います。村上は健介の代役の成瀬と対戦。村上の殺気とヒールぶりは好きです。成瀬ということで結果は見えていましたが、いい試合だったと思います。天山は完全にMUTAの引き立て役になってしまいました。毒霧絡みの結末は予想通りでした。
 蝶野対ローラーは、蝶野が付き合い過ぎという感はありましたが、まあ普通に試合として成り立っていました。ローラーと試合を成立させられるのは蝶野ぐらいのものでしょう。
 今日、唯一注目していた試合はセミファイナルのボブ・サップ対中西です。サップは最近では最もプロレスラーらしいプロレスラーだと思っています。人間離れした体格に優れた運動能力を持ち、総合格闘技やK−1のリングに乗り込んで、技術ではなくパワーで結果を出しています。アンドレやハンセンが全盛期だった時代の、神話だった頃の強い外人レスラーという感じです。その外人レスラーを日本人が迎え撃つ。これぞプロレスのだいご味です。ましてやサップはこの間、K−1のグランプリで、3度王者となったホーストに勝利しています。中西にとっては何ともおいしい相手です。いきなりのド迫力パワーボム、タックル、アルゼンチン・バックブリーカー、フィニッシュにつながったドロップキックとサップは本当に素晴らしかったです。対して中西は、またまた男を下げてしまいました。リングアウト負けというのも中途半端で最悪の結果でした。
 ジョーニー・ローラーがリングに上がろうが、魔界倶楽部が現れようが、最後に永田がキチンと締めてくれればいいんです。でも、永田じゃあ締まらねえよなあーという感じです。強くもなく、華もなく、なんで永田がエースなのと思うものの、中西はサップに負け、蝶野はローラーと戦っているというのが今の新日の悲しい現実です。すっかり普通のプロレスラーになってしまった藤田に勝ちましたが、だからどうしたの?という感じです。寂しいIWGP戦でした。
Vol.83 新日は何処へ行く?

 9月23日のノア武道館大会は、チケットは買っていたのですが、仕事のトラブルで行けませんでした。ですので伝え聞いただけですが、三沢対高山のGHCヘビー級選手権は凄い試合だったようです。最近の高山の活躍は本当に素晴らしいものでした。ひと昔前ならとても考えられないことですが、フリーという立場で新日とノアを股にかけ、どちらでも堂々とメインを張り、総合格闘技の大会にも進出して活躍しています。一方の三沢も負けたら今後、タイトルには挑戦しないと明言して臨んだ一戦で、結果はエルボー50発を繰り出した三沢の勝利でした。きっと本当に凄い試合だったのでしょう。勝った三沢はやっぱり凄いの一言ですが、この試合で高山が負傷し、長期欠場となってしまったのは本当に残念です。
 9月16日には、久しぶりに全日の後楽園大会に行って来ました。やはり後楽園は最高の会場ですね。最近は大きな会場で後ろの方から見ることが多かったのですが、前の方の席で、レスラーの大きさを感じ、表情の変化も楽しめ、プロレスの面白さを再認識しました。
 全日の9月シリーズはあまり大きな話題はなく、ジュニア・タッグのリーグ戦が目玉という感じでしたが、このリーグ戦の試合がどれも素晴らしかったです。渕&浜田はベテランの味を十分に発揮し、カシンは相変わらずのいい味を出しています。そしてハヤシ&ヤンが本当に素晴らしかったです。
 三沢たちがノアに行き、武藤らが新日から移って来たことで、全日は大きく変わりました。もはや以前の全日ではないといっていいでしょう。昔からの全日ファンには嘆かわしく思っている人もいるかもしれませんが、私は今の全日も面白いと思います。フジテレビの中継も決定し、武藤の社長就任も間近です。全日はこれからも変わっていくでしょう。どんな風に変わっていくか、楽しみにしたいと思います。
 さて、一方、新日ですが、こちらも大きく変わっていくようですが、一体どうなっていこうというのでしょうか?9月シリーズの目玉はジョーニー・ローラーと魔界倶楽部でした。田中稔がマスクマンのヒートに変身し、GREAT MUTAなるキャラクターも登場しました。見せるための様々な演出もプロレスの魅力であり、ドラマ作りを否定するつもりはありません。かつての新日は連続ドラマといわれ、次の展開にワクワクさせられたものでした。それはリングの中にしっかりとした闘いがあり、マシン軍団や海賊男などはサイド・ストーリーだったからです。今の新日はストロング・スタイルとはほど遠く、まるでWWFを目指しているかのようです。まったく魅力を感じません。
 とはいえ、今のプロレス界でドーム興行を定期的に打てるのは新日だけです。良くも悪くも新日がプロレス界を引張っていかなければなりません。K−1とPRIDEが手を組んだDynamaiteが国立競技場に進出し、9万人もの観客を集めました。内容も素晴らしいものでした。新日のドーム大会が盛り上がらなければ、プロレス・ファンとして、悲し過ぎます。カードを見た限りでは苦戦するだろうと思いますが、何としても盛り上げてもらいたいと思います。