Vol.84 武藤全日社長、健介新日退団


 プロレス界の秋はリング外の話題で賑わっています。9月30日に武藤の全日プロ社長就任が正式発表されました。今の全日は既に馬場さんがいた頃の全日ではありません。たぶん昔の全日に思い入れのああるファンは、今の全日を見て嘆いているでしょう。逆に武藤のファンは全日ファンになったことでしょう。フジテレビでの放送も開始されました。日テレとともに築き上げてきた歴史が大きく変わるわけです。どちらがいい、悪いという問題ではありません。時代は流れ、団体のカラーが変わっていくのは仕方のないことです。今後も全日は武藤を中心に変わっていくでしょう。武藤はこれまでマイペースで戦って来ました。それが武藤の魅力でもありました。団体を背負った武藤がどんなプロレスを見せてくれるのか。それを見守っていくだけです。
 新日本では、健介が退団を表明しました。理由は鈴木みのる戦が流れたことで会社に不信感が募ったということでした。「鈴木戦だけのために会社を辞める」とも言いました。この理由はまったく納得がいきません。確かに行き違いがあったようですが、それほどまでに実現させたいのなら、新日本がそれを阻む理由は何もなかったはずですし、健介の意思で実現させればいいことです。会社に不信感なんてまるでサラリーマンの言い草です。結局この問題は、その後うやむやになっていますが、やはり健介は長州のところに行くのだろうと思います。健介は長州のもとから離れない限り、一人前のレスラーにはなれないと思うのですが・・・。
 高田は総合格闘技だけでなく、プロレスも引退を表明し、田村との引退試合が決定しました。これまで高田の発言には何度も裏切られ続けて来ましたが、個人的には昨年待末の猪木祭りに怪我を押して参戦したことで、とにかくもう最後まで見てやろうという気になりました。どんなラストマッチになるのかしっかり見て来ようと思います。
 さて、今のプロレス界を見渡すと、三銃士がそれぞれ別の道を歩むようになったのは必然の流れかなという気がします。全日の社長になった武藤、新日の取締役になった蝶野、ZERO−ONEを旗揚げした橋本に加え、ノアの三沢の4人が、今のプロレス界のキーマンでしょう。その4人、4団体で交流という動きが出てきました。実際、全日とZERO−ONEは、高岩が乗り込んだり、大谷&田中の最強タッグ出場が決定するなど交流が具体化しています。大谷&田中にはノアの秋山も対戦をコメントしていますし、新日とノアの交流もあります。4団体が一堂に会せば、オールスター戦と呼ぶにふさわしい大会が開けるでしょう。11月17日に横浜アリーナで開催される「WRESTLE−1」には橋本も参戦すると言われ、大きな期待が膨らみます。
 しかし、大事なことは団体交流ばかりに頼ってはいけないということです。ただ他団体との交流に頼るのではなく、それぞれの団体がしっかりと地力をつけた上で交流しなければなりません。今のプロレス界は、PRIDEやK−1に押されています。一方でプロレスの持つ魅力も再認識されおり、総合格闘技の選手がプロレスに興味を持ち、プロレスのリングに上がるというケースが見受けられます。あくまでプロレスにこだわって、プロレスの強さを見せてくれてもいいです。総合のリングに乗り込んで、実際に戦って、プロレスの強さを見せてくれてもいいです。今は崩れてしまったプロレスが最強の格闘技であるという神話を取り戻して欲しいです。オールスター戦はそれからの話しです。ようやくプロレス界のトップに立った4人にも、実は残された時間はあまりありません。武藤はヒザの負傷を押して出場しています。蝶野の首も万全の状態ではありません。ここ1,2年のうちにプロレスと総合格闘技の地位を逆転させ、本当の意味でのオールスター戦を実現させて欲しいと思います。