増刊号その2 新日ドーム観戦記


 恒例の新日ドームです。恒例ということで観に行きましたし、増刊号も書いていますが、今回のドームは本当に観たい試合、結果が気になる試合が1つもありませんでした。テレビも視聴率を取れないことは分かっているようで、過去の名場面集を入れていましたが、改めて昔の新日本が面白かったこと。今の新日本がつまらないことが実感できました。
 永田がバーネントに絞め落とされてみたり、バーネットに日本語を喋らせてみたり、魔界倶楽部を増殖させたり、中西が吠えてみたり、棚橋が復帰を直訴したり、ジュニアを再編成してみたり、話題作りには必死に取り組んでいましたが、中身がないのですから、まったく意味がありません。それでも、客席はガラガラかと思っていましたが、そこそこ入っていました。営業努力もしていたようです。
 なんで辞めて長州のところに行くマサ斎藤とタイガー服部をわざわざリングに上げて、暖かく送りだすのか? なんで出ていった小島を歓迎ムードで迎えるのか? たたき潰すでもなく、試合に負けてしまうなんて論外です。 なんで総合で結果を残せなかった小原がのこのこと帰ってこれるのか? なんでミルコにリベンジもしない永田がチャンピオンなのか? 相変わらず納得のいかないことばかりでした。
 一番盛り上がったのが相変わらず猪木の登場でした。そして新間もリングに上がって挨拶をしました。猪木の言った、怒りを見せろということ。新間の言った、今のリングには闘いがない。PRIDE、やKー1を蹴散らして、新日本プロレスが総合格闘技の頂点に立たなければいけないということが、本当にその通りだと思います。
 悪口ばかり言っていても空しいだけなので、数少ない良かったと思う場面も上げておきます。第1試合の西村対藤波のクラシカルなレスリングの攻防は良かったです。それから中邑は将来性を感じさせました。ただ猪木祭りで負けたグレイシーにリベンジすることは忘れないで欲しいとは思いますが、いい素材だと思います。棚橋もリングに上がりました。スキャンダルを逆にチャンスとして頑張って欲しいと思いますが、中西が試合に出ると主張する棚橋をリング外にたたきだしたのは正しい対応だったと思います。
 最後に、話題は変わりますが、猪木祭りの視聴率が16.5%と昨年を上回って好調だったそうです。非常に明るいニュースです。やはりこういう世間に闘いを挑むスケールの大きいことをできるのは猪木だけなのでしょうか。新日本がこういうことをやって、プロレス界を引っ張っていかなければいかないと思うのですが。
増刊号その1 猪木祭り観戦記

 開催2年目にして早くも年末の新しい風物詩となりつつある猪木祭り。TBSやPRIDE、K−1の全面協力があるとはいえ、やはりこのイベントを成立させているのは、冠ともなっている猪木の圧倒的な存在感です。猪木という紛れもないスーパースターを体感できる、特に猪木信者の私にとっては素晴らしいイベントです。
 昨年は安田がバンナに劇的な勝利で締めくくり最高の内容でした。今年はカード的には申し分のないものとなりましたが、結果、内容ともにとても残念ながら満足のいくものではありませんでした。
 まず、年越しイベントだったはずなのに、終了したのは9時30分頃、別に早く終わるのは構わないのですが、年越しするつもりで出かけたので拍子抜けでした。最初から早く終わるということをアナウンスしておくのが興行として最低の礼儀だと思います。どういう事情かそれを怠ったのは許せません。
 試合の方も、何といっても期待していたのが藤田でしたが、ミルコを攻めきれず、判定負け。絶対に勝たなければいけない試合であの様では全然駄目です。結局、ミルコに土を着けることなく年を越し、他にミルコに勝てそうなプロレスラーが見当たらないという非常に情けない状態になってしまいました。昨年ヒーローとなった安田も第1試合というひどい扱いで、ノルキヤにまったくいいところなくTKO負けでした。非常に情けない結果です。まったくの新人とはいえ新日本のプロレスラーである中邑がグレイシーに敗れたのも面白くありません。プロレスラーはまったくいいところなしで、また今年もプロレスの冬の時代は続くのだなという情けない気持ちになりました。
 逆に素晴らしかったのは、今乗りに乗っているボブ・サップと吉田秀彦でした。サップは頑張っている唯一のプロレスラーだと思いますが、日本人レスラーでそこそこ頑張ったといえる高山と対戦し、圧勝しました。しかも見事な腕ひしぎ逆十字固めを決めました。昔、アンドレやハンセンが日本人レスラーの若手のように練習をしたら、誰も勝てないのではないかと言われましたが、サップはまさにそんな怪物レスラーが打撃、関節の技術をしっかり身に付けているという感じです。今年もサップ旋風はまだまだ吹き荒れそうです。
 吉田は日本人とはいえ、プロレスラーではないので複雑な思いがありますが、桁違いの強さを示していることに間違いはありません。佐竹ごときでは相手になるはずもなく、またしても圧勝でした。今年も誰と闘うのか、どこまで強さを見せるのか注目されます。
 1.4新日ドームも増刊号を発行する予定ですが、もう惰性で観に行くという感じで、何の期待もしていません。今年もプロレスは低迷し、総合格闘技に押されていくのではないでしょうか。そんな気持ちにさせられた年末でした。


Vol.86 2002年のプロレス界、2003年のプロレス界

 2002年のプロレス界を振り返ってみると、時代の流れの早さに改めて驚かされます。恒例の新日ドーム大会では永田と秋山のGHCヘビー級戦が行われましたが、それも遠い昔のことのように思われます。その後、蝶野と三沢のシングル対決実現、高山の新日参戦。金丸&菊地のIWGPジュニアタッグ王座奪取と、新日とノアの交流はゆるやかに1年間続きました。
 しかし新日のドームはもうかつてのようなインパクトはなく、武藤らの全日移籍というニュースが2002年の幕開けという感じでした。その武藤が今では全日の社長に就任し、王道マットも様変わりしました。
 FMWが倒産、そして荒井社長の自殺というショッキングな事件もありました。その意志を継いで、ハヤブサと雁之助が新団体WMFを設立しました。冬木主導のWEWは何か違うという気がしていたので、ハヤブサには頑張ってもらいたいと思います。
 WWFの日本上陸も話題を集めました。そのWWFは今ではWWEに名称変更しています。確かにWWEはWWEで面白いとは思います。ただ、プロレスはエンターテイメント、格闘技とは違うものという雰囲気がすっかり定着してしまったのが納得いきません。すっかり崩れてしまった幻想ではありますが、やはりプロレスは最強であって欲しい、最強であるという気持ちに変わりはありません。
 鉄人ルー・テーズの弔報もありました。デイビーボーイ・スミス、ミゼットのリトル・フランキー、サンダー杉山と、振り返るとここ数年は必ず、多くの弔報があって、寂しい限りです。
 今年のベスト興行は「Dybamaite」です。プロレスより先に格闘技のイベントが国立競技場に進出したのは悔しい現実です。最も印象に残っている試合も、ノゲイラ対サップ、吉田対ホイスなどの総合格闘技の試合です。プロレスの試合となると、さて何があったかなという感じです。高田引退のリングも総合格闘技の「PRIDE」でした。2002年を締める猪木祭りも総合格闘技の大会です。
 最も活躍したプロレスラーは文句なしにボブ・サップです。Kー1で、王者ホーストに連勝し、PRIDE王者のノゲイラとも死闘を演じました。そしてプロレスのリングに上がり、中西相手に強烈なインパクトを残し、ムタにも勝利して、サップは紛れなくプロレスラーであることを見せてくれました。まさにこうあって欲しいというレスラー像をサップは見せてくれました。東スポのプロレス大賞では史上初めて外国人ながらMVPを獲得しましたが、当然の結果だと思います。逆に日本人のレスラーの頑張りが足りなかったのは残念です。
 もう1人、強烈なインパクトを残したのも外人レスラーでした。ビル・ゴールドバーグです。あの入場シーンは本物という感じです。まさに最後の未だ見ぬ強豪でした。
 すっかり格闘技に押されている感のあるプロレスが、武藤のプロレスLOVEのもと打ったイベントがW−1でした。個人的にはあまり好きになれませんでした。昔からの全日ファンも拒絶反応を起こしたようです。最強タッグ最終戦の武道館は何とも寂しい観客動員でした。ただ、武藤のやろうとしていることは新しいムーブメントであることに間違いはありません。総合格闘技に対抗するには、総合のリングに上がってレスラーの強さをアピールする方法と、プロレスのリングでプロレスの強さ、レスラーの強さをアピールする方法があります。実際にレスラーが総合のリングで負けがこんでいるので、闘って勝ってくれた方がすかっとしますが、プロレスのリングで強さを見せてくれるなら、それもいいと思います。W−1がそういう方向に進んでくれることを期待します。
 そして武藤、蝶野、橋本が久しぶりに一同に会したという事実が2003年のプロレス界の鍵だと思います。団体交流という言葉は好きではありません。やるならば潰し合いの対抗戦を見せて欲しいと思います。プロレスはこんな凄い闘いをしているのだというのを見せて欲しいと思います。武藤、蝶野、橋本、そして三沢が闘う時が来ていると思います。そしてプロレスの凄さを見せる闘いを見せて欲しいと思います。