Vol.87 ノア武道館&Wー1


 年明け早々からビッグマッチの連続でした。まず新日の1.4東京ドームがありました。永田とバーネットのIWGP戦、高山対高阪のNWF王座決定戦、テンコジ復活などがありましたが、引かれるカードは1つもなく、先月の増刊号で触れましたので省略します。
 むしろノアの1.10武道館の方が注目でした。内容的にも新日のドームより数段上だったと思います。今、最もいいプロレスを見せてくれるのがノアではないかと思います。ただ、昔の全日本にはまだまだ及ばないのが納得のいかないところではありますが。
 最近の武道館は、新日は一面を黒幕で覆い、客を入れない状態でも満員にならず、そして全日も遂に最強タッグの最終戦で一面を黒幕で覆ってしまいました。非常に寂しいことです。ノアの武道館はそんなことはせず、ほぼ満員の観客が入っていました。満員の武道館を久しぶりに見た気がします。
 盛り上がりも最高で、高山の入場時の大歓声や、蝶野、三沢、小橋、田上がそれぞれ入場して来た時の大歓声。そして蝶野と小橋がにらみ合った時に会場を二分した蝶野コールと小橋コール。そんなプロレスらしい光景を久しぶりに体感したと思いました。
 メインの秋山&斎藤対大谷&田中のGHCタッグ戦も良かったです。久しぶりに見た斎藤は強くなったと感じました。秋山のえげつなさ、大谷のヒールぶりもいい味を出していました。この中では田中の力不足がどうしても目立ってしまうなというのは感じました。
 しかし、何といってもこの日はセミの蝶野&三沢対小橋&田上です。三沢が小橋に敗れたのは意外でしたし、まだまだ蝶野や三沢の世代に頑張ってもらいたいと思っている私にとっては残念でしたが、内容は素晴らしかったと思います。
 蝶野対小橋の絡みはやはりワクワクしましたし、蝶野と三沢のWエルボー&Wケンカキックや、STFとフェースロックの競演など、ドリーム・タッグの魅力は十分でした。小橋もほとんど全盛時に戻った感じでしたし、ここ一番に強いといわれる田上も頑張りました。久しぶりに満足できるプロレスを観たという感じのノア武道館でした。
 続いては1.19W−1です。開催2回目にして東京ドームに進出しましたが、見事な不入りでした。昨夏のLEGENDとどっちが入っていないかというくらいのひどい有り様でした。こうまで入らないとドームでやる意味などまったくありません。
 W−1のコンセプトはいくつかありますが、まずは謎かけです。カード発表が遅いことを売りにしている感があり、メインのサップの相手もホーストの名が上がるものの正式発表はなしという状態。目玉のゴールドバーグも音信不通という情報もありました。今、プロレスはファンの信頼を勝ち得ている状態ではないので、このやり方には賛成できません。きちっとカードを発表してチケットを売るべきだと思います。
 前回はラストでリングが黒幕で覆われ、その後、何もなしに謎のまま終わりましたが、今回は黒幕で覆われたリングからサップが踊りながら登場。ここにつながるのかと思わせ、ここまでは良かったのですが、サップがリングサイドにいたホーストに噛み付き、メインでの対戦が決まるという演出は、開始が15分遅れていたこともあり、興醒めでした。
 続く第1試合のブッチャー対佐竹は前回同様ひどいもので、佐竹の総合格闘技が駄目だからプロレスという発想は絶対に許せませんし、ピエロに成り下がったブッチャーもいりません。そう言えば、ザ・シークが亡くなりましたが、シークは晩年の怖くて近付きがたいヒールに徹していました。立派だったと思います。ブッチャーの試合後のマイクアピールなど、早く帰れよという思いでイライラしました。
 不入りの上、こうしてつかみも失敗でしたから、盛り上がるはずはありません。闘龍門の試合、ウルティモ・ドラゴンとカズ・ハヤシのタッグ、カシン対サブゥーは悪い試合ではなかったと思いますが、会場があつくなるまでには至りませんでした。闘龍門にはかなり期待していたのですが、動きには目を見張るものがあったものの、ドームが大きすぎたのか、期待が大きすぎたのか、会場があまりにも冷えていたのか。期待したほどではありませんでした。
 ヒーリングはPRIDEのリングではまさに暴れ馬という感じでパワーと魅力にあふれていますが、W−1では不思議なもので何とも弱々しく見えました。コールマン&ランデルマンはW−1でも輝いてみえます。どこが違うのか分かりませんが、この辺がプロレスの奥深さでしょうか。ただ前回は相手が小島&馳ということで救われていたのでしょう。今回の相手はシン&ノルキヤということで、ところどころで粗が見えました。
 W−1のもう1つのコンセプトがファンタジー・ファイトですが、それを過剰な演出と勘違いしている感があります。プロレスの最高の演出はレスラーと観客が作り出す空間です。リングに素晴らしい闘いがあって、本当のプロレスファンが集まったとき、そこに素晴らしい空間が生まれます。この空間を体感したいがために会場に足を運ぶわけです。小島の「いっちゃうぞバカヤロー」を効果音つきで掲示板に表示したり、馳のジャイアント・スイングを馳先生1万票獲得、2万票・・・20万票当選確実などと表示する演出には興醒めでした。
 3つ目のコンセプトが団体の枠を越えて夢のカードを提供する場です。前回は闘魂三銃士が一同に会し、それが最大の見せ場でしたが、その後、蝶野と武藤の関係は悪化してしまいました。非常に残念なことです。他団体との交流にばかり頼るのはよくありませんが、それぞれの団体の長となった三銃士にはやはりもう一度再会してもらいたいと思います。今回も橋本は参戦となりましたが、橋本の登場で会場の雰囲気がガラリと変わりました。対戦相手は、キモの師匠で、ジョー・サン道の創始者、Tバック姿でラップを口づさみながら登場というジョー・サンという際ものでした。個人的にはジョー・サンのうさん臭さは好きでしたが、橋本のには相応しくない相手です。それでもきっちりと試合を成立させました。この試合が今日の唯一の見どころでした。
 武藤の入場テーマはOUTBREAKでした。武藤のテーマはどの曲も良かったのですが、今回の新テーマはどうもピンと来なかったので、これは嬉しかったです。橋本の登場でようやく盛り上がったところでもあり、期待したのですが、続くゴールドバーグの入場は、音信不通のくだりから始まり、水道橋の駅付近を歩いているゴールドバーグが会場入りし、姿を現すまで待たせるという演出で、やりすぎで興醒めでした。前回の間に合うかどうか分からず車で会場に登場するという演出にはワクワクさせられたのですが、この微妙な違いが大きいのです。せっかく暖まった会場はまた冷えきってしまいました。ゴールドバーグがタッグ戦というのも失敗だったと思います。相手のクロニックも完全に役不足でした。せっかくの夢タッグでしたが、大凡戦に終わりました。
 メインは、まずホーストが前回のサップと同じ曲で踊って入場、サップは「エンジェル・ボブ」といことで、笑顔のサップからのふざけたコメントの後、宙吊りのサップが空を飛んで入場という演出でした。サップのキャラクターから不快感はありませんでしたが、これもやりすぎ。そして試合の方は本当にひどいものでした。これをファンタジーとはいいません。茶番劇といいます。テレビ中継でプロレスファンでない人がこの試合を見て、またプロレスを誤解されてしまうのが悲しいです。
 前回は今後に対する期待も持てましたが、2回目にして底が見えました。もうW−1には期待しません。今後も続けるなら、せめてプロレスの品位を汚さないようにして欲しいと思います。
 新春のビッグマッチは文句なくノアの武道館がベスト興行。つまらないと思われた新日ドームがW−1を見た後ではまだまともに思えて、中の下といったところ。そしてW−1が史上最低レベルの興行でした。
 リング外での話題では、にわかに全日危機説がクローズアップされました。2億円の負債があるとか、W−1を巡って全日系と新日系のスタッフが不仲になっているとか。確かに今の全日は昔からの全日ファンにとっては、まったく違うものになっているでしょうし、最近の客入りを見ていると、そういうファンは確実に離れていっているという気がします。武藤もW−1に目が向いている気がしますし、やはり全日の社長としてはどうなんだろうかと思えます。非常に気になる全日危機説です。
 長州のWJの動きも活発になってきました。長州のことはまったく認めていませんし、健介や鈴木健想、大仁田にも興味はありませんから、この団体はどうでもいいです。というより早く失敗してくれればいいのにと思います。