増刊号 新日10.13ドーム観戦記


 メジャーリーグのポスト・シーズンマッチ、ヤンキース対レッドソックスはとても面白かったです。因縁の深い両チームということで乱闘もあり、お互いの意地がぶつかりあったという感じでした。なぜこんなことを書いたかというと、新日のドーム大会より、ヤンキース対レッドソックスによほど闘いを感じたからです。新日のリングから闘いがなくなって久しいですが、今回のドームは本当にひどかったです。もう何も期待はしていませんから、腹も立ちませんでしたが、ただ無駄な時間が淡々と過ぎていったという感じでした。
 第1試合のジュニアバトルロイヤルにIWGPのタイトルが賭けられるという事実だけで闘いのなさを示していますが、反則、乱入の末に外道が優勝してしまったという試合内容と結果はあきれたものでした。ジュニアとはいえIWGPも地に落ちたものです。ガラガラの客席は初めから完全にしらけきってしまいました。
 ブルーウルフが吉江に勝った番狂わせもくらいではばん回できるはずもなく、TOAも出来の悪いプロレスラーという感じで、K−1の外敵という気はまったくせず、改めてこんな選手に負けた中西の情けなさを再認識しただけでした。西村の説法で少し沸きましたが、試合内容はお粗末そのもので、その後の無意味に長い休憩と訳の分からない格闘技戦、ヒカルドンもたいしたことはなく、まったく盛り上がりませんでした。
 ジョシュ・バーネット対高橋はいい試合でした。ただ新日本の、そしてプロレスの強さを証明できるのが、ただ新日に参戦しているだけの外国人であるバーネットただ1人というのが情けない現実です。
 村上の雰囲気には凄みがあっていいのですが、試合はやはり魔界倶楽部の乱入、反則でお寒い限りです。ホーガン対蝶野はクラシカルなアメリカンプロレスという感じで、唯一期待していたカードでしたが、内容の方はイマイチで、やはり今さらホーガンでもなかったかという感じです。
 メインのイリミネーションマッチなど、闘いのなさの最たるものでした。1度限りの復活だったはずの坂口がまたリングに上がり、芸能人が我がもの顔で歩き回り、リングから落としたから勝ちとか負けとか、馬鹿じゃないのという感じでした。
Vol.95 時代は変わる

 良くも悪くも時代は変わるものなのでしょう。プロレス界も変革期に来ています。全日9.6武道館大会では、川田がトーナメントを制し、三冠ヘビー級王座を奪回しました。橋本の負傷により王座が空位となって、決定戦での奪回という形になってしまったのが残念ですが、川田がベルトを腰に巻いたことで、王道復活という見方もあります。しかし、実体はというと、武藤新社長のもと全日本は大きく変わっています。長年慣れ親しんだ「ジャイアント・シリーズ」は廃止となり、「ROAD TO RE−BIRTH×RE−VERTH」という真新しい名前のシリーズもスタートしました。今後の全日のテーマは脱ジャイアント馬場、脱王道です。正直なところ、いつまでも昔ながらの全日本プロレスが見たいと思いますが、今のメンバーでそれをやれと言っても無理な話しです。変わっていくしかないのでしょう。
 一方、新日本は変わるんだか変わらないんだが、相変わらず混沌とした状態が続いています。G1で優勝した天山は今だにIWGPへの挑戦が実現していません。ミスターIWGPと言われた永田はミスターGHCの小橋に完敗でした。小橋と対峙した永田は、とにかく小さく見えて、まったく勝てる気がしませんでした。まさしく完敗でした。K−1で負け放しの中西は、いつの間にかプロレスに戻って来ましたが、当然のことながらパッとしません。新時代を担うべき選手がこんな体たらくな状態のまま、いつしか決して若手とは呼べない年齢になってしまいました。 これでは坂口を担ぎ出すのも仕方のないところかもしれません。CEOがリングに上がり、人気俳優の息子がセコンドに立つ。蝶野と高山が金網デスマッチでIWGP戦を行う。ジュニアの時間差バトルロイヤルでIWGPジュニアヘビー級王者を決める。アメリカのメジャー団体そのままの流れです。新日本がエンターテイメント・プロレスを目指しているのなら、決して賛成はできませんが、それも時代の流れとあきらめもしますが、東京ドームは「ULTIMATE CLUSH」の大会名で総合格闘技戦も行われます。ところがパンクラスの挑戦を受けて立つのは外国人のジョシュ・バーネットという情けない状態では、何をやりたいのかさっぱり分かりません。
 他にも楽しい話題や、何としても会場に観に行かなくちゃと思えるような話題は何一つありませんでした。プロレス界のどまん中を突き進んでいるらしいWJの崩壊危機が伝えれれているくらいです。これはむしろ私にとっては嬉しいニュースかですが、プロレス界の明るい未来がまったく見えてきません。