増刊号 大晦日&1.4観戦記


 今のプロレスは、はっきり言って全然駄目です。総合格闘技でレスラーが負け続け、プロレスの強さが崩れ去ってしまったからです。プロレスを復活させるには、総合格闘技でレスラーが勝利し、強さを見せること。そしてプロレスの試合でレスラーの凄さ、強さを見せることの2つの方法があります。どちらを選ぶかはレスラーの自由ですが、大晦日の3大格闘技戦、1.4は恒例の新日ドームと「ハッスル1」の興行戦争で、どちらの方法にもチャンスが与えられました。ところがどちらでも結果は出せず、今年もプロレスの低迷は続きそうです。
 大晦日のK−1では、中邑がイグナショフと対戦し、ヒザ蹴りにKO負けとされました。すぐに立ち上がっていましたし、グランドでのブレイクが早かった、反則の蹴りがあったということで、新日が抗議し、結局は無効試合となりました。負けを認めなかった中邑、そして新日本の対応は評価できます。IWGPヘビー級王者が出陣しているわけですから、絶対に負けは許されません。勝敗にこだわった姿勢は当たり前のことですが、見苦しくはなく、むしろ立派だと思います。ただ、勝てなかったというのも事実です。曙を見たついでにあの試合を見た世間の人は、その後の経過など知るはずもなく、日本人の何とかいうプロレスラーがK−1の選手にノックアウトされたと思っているはずです。またもプロレスはダメージを受けました。
 PRIDEでは、桜庭がホジェリオ・ノゲイラに判定負け、坂田がダニエル・グレイシーに負けました。プロレスでは怪物ぶりを発揮したジャイアント・シウバも怪物の面影はなく、ヒーリングに何とも情けない敗戦でした。
 猪木祭では、永田がヒョードルに惨敗でした。永田に何処まで覚悟が出来ているのか、はなはだ疑問でしたが、出るとなれば少しは期待してしまうものです。ところが覚悟も準備もまったくなし、まさに惨敗でした。もう永田には総合格闘技には出て欲しくありません。プロレスでの活躍もして欲しくありません。せいぜい負けて、自分はプロレスラーの中でもが弱いことを世間にアピールして下さい。安田は負けたら自己破産ということでしたが、もはやバンナへの劇的な勝利の貯金は完全に使い果たし、まさに自己破産状態です。村上もプロレスで見せる殺気は評価していましたが、惨敗でした。
 勝った選手もいます。藤田はイマム・メイフィールドに勝ちました。総合格闘技ルールのベースはグレイシー柔術のルールで、明らかにレスラーに不利です。それでも格闘技とプロレスを分けるのはおかしいし、総合のルールであっても自分の土俵に持ち込むような闘いをすればいいのですが、レスラーはろくに準備もしないで総合ルールに対応しようとして負け続けています。藤田の試合は異種格闘技戦ルールでした。お互いをいかすために試合ごとにルールを決めるというのはいいことかも知れません。ジョシュ・バーネットはセーム・シュルトに勝ちました。外人ながら、彼は唯一プロレスの強さを証明しているレスラーです。成瀬もノルキヤに勝ちましたが、負け組の残したインパクトを覆すほどではありませんでした。  世間的に最も注目を集めたのはK−1の曙対サップでした。サップ相手にあの結果では、曙はいくら練習したところでK−1で成功するとは思えませんが、あの倒れっぷりは見ていて痛快でした。こうした話題をK−1に取られてしまっているのはプロレス界の失態です。
 PRIDEの吉田対ホイスは無制限でやるような話しもありましたが、10分2R判定なしとなりました。1Rを見た時点で引き分けが見えてしまいました。凡戦だったと思います。判定での勝利など認めていないホイスが「どちらが勝ったか明らかだったと思う」という発言は矛盾していますが、グレイシーの勝利に対する執念は見習うべきです。
 ゴタゴタ続きだった猪木祭は視聴率でも惨敗でした。全体的に大晦日の3大格闘技戦は、低調だったと思います。やはり同時に3興行開催には無理があったと思います。それぞれの試合の準備期間、選手のモチベーション作りも不足していたと思います。今、世は格闘技ブームですが、少し考えないと苦しい時期に来ているのではないかと思います。
 対して1.4のプロレス決戦はどうだったかというと、こちらも低調でした。新日ドーム大会はプロレスの凄さ強さを証明するというような内容ではありませんでした。いつものように淡々と試合が流れていったという感じです。
 アンダーマッチで成瀬が安田を秒殺したこと、タッグ戦でバーネットが村上に完勝したことは痛快でした。大晦日の結果からすれば当然のことですが、総合格闘技戦に出て結果を残した選手はもっと評価されるべきです。逆に敗れた選手はもっと制裁を受けるべきです。
 メインの中邑対高山は、大晦日に中邑がイグナショフに、高山がミルコに勝っていれば、注目の大一番となるところでしたが、残念ながらそうはなりませんでした。結果は中邑が何とか勝利して王座を統一しました。中邑の素質は認めますが、現状ではまだまだ王者にふさわしいとは言えません。かといって他に王者となる人材がいるかというと今の新日本では見当たりません。本当に層が薄くなってしまったなという感じです。
 セミでは武藤が登場し、さすがの存在感を示しました。サップもいいセンスをしていると思います。それを迎え打つのが蝶野&天山では、ちょっと役不足という気がします。中西対天龍、西村対鈴木もイマイチでした。永田対健介に至っては、負け犬と逃亡者の試合でどうでもいいです。この日のベストマッチはライガー対杉浦のGHCジュニア戦でしょうか。中邑に期待するだけでは、今年の新日本も苦しいと思います。
 対する「ハッスル1」も、伝え聞くところによると、あのW−1と何ら変わりのない、プロレスを馬鹿にしたようなものだったようです。
 小川対ゴールドバーグは、レフェリーの失神、シウバの乱入があり、ゴールドバーグの勝利。川田はコールマンにレフェリーストップ勝ち。橋本はベイダーにリングアウト勝ちと、どれも消化不良。最後は高田とOH砲の乱闘ではお粗末以外の何ものでもありません。それにしても最近の高田は調子に乗り過ぎです。プロレスを極められなかった男が、格闘技をプロレスを男を語るなという感じです。そんな高田に付き合う橋本、小川の態度も疑問に思います。2004年も残念ながら、プロレス界は前途多難なようです。
Vol.98 2003年〜2004年

 2003年のプロレス界はPRIDEやKー1に押されて、ますます影が薄くなった気がします。振り返ってみても、あまり印象に残ることがありません。ここ数年続いていることですが、亡くなった往年の名レスラーのことばかり思い出されます。2003年もザ・シーク、カート・ヘニング、フレッド・ブラッシー、グレート・アントニオ、ミツ・ヒライそしてホーク・ウオリアーといった人たちが亡くなりました。寂しいことです。現役バリバリのギガンテスも急死しました。前日、全日の武道館大会で試合しているのを観ていましたから、まさかという感じでした。
 東スポのプロレス大賞では、MVPが高山でした。フリーとして新日、ノアを股にかけ、総合格闘技、インディーにも出場し、一人でプロレス界を盛り上げたという感じですから、当然の結果だと思います。かつてこんなことができたレスラーはいませんでした。時代の流れを感じます。ベストバウトは小橋対三沢でした。生で観戦しましたし、確かにいい試合でした。これも異論のないところです。しかし、今、内容を思い出そうとしてみても、思い出せません。小橋対蝶野、天山対秋山などもありましたが、心に残る名勝負と呼べる域にまでは達していません。むしろ吉田秀彦やノゲイラの試合の方が印象に残っています。
 プロレス界にとっては、そんな寂しい2003年でしたが、年末になって、ようやく2004年への明るい光が少し見えてきた気がします。
 その主役の1人は中邑真輔です。天山を破り、史上最年少のIWGP王者となりました。何だかんだ言っても、やはり新日本が頑張ってくれないとプロレス界は盛り上がりません。ここ数年、プロレス界が低迷している最大の責任は新日本にあります。その新日本の顔に新世代の中邑がなったわけで、期待が持てます。
 もう一方の主役はOH砲です。小川の素材が超一級品であることは誰もが認めるところです。ただレスラーとして共感しにくい部分がありました。先日の川田戦で、ようやく一皮むけたかという気がします。そして小川がプロレスラーとして成長していくのを支えているのが橋本です。橋本対小川の一連の死闘がなければ、今の小川はなかったでしょう。橋本自身も三冠王者となったり、ZERO−ONEを率いて、プロレスの価値を高めています。
 そして本当に2004年のプロレス界に明るい光がさしてくるかは、年末年始の5大決戦にかかっています。
 「猪木祭」の高山対ミルコが流れてしまったのは非常に残念です。MVPの高山がノゲイラに敗れたとはいえ、プロレスラーハンターと呼ばれているミルコをストップしてくれれば最高の気分で1年が終われたのですが。しかし、毎度のことながら「猪木祭」はドタバタの連続です。ミルコ、ヒョードルを引き抜いたあたりは、さすがという感じでしたが、結局、どちらも欠場となりました。確かに民放3局が大晦日に紅白の裏で格闘技を放送するというのは画期的なことですが、競争過多になると、こうした弊害が出てきます。もっと大局的に物事を考えていかないと、格闘技ブームも長くは続かないでしょう。結局、永田対ヒョードルが目玉カードということになりました。永田にどこまで覚悟があるのか大いに疑問ですが、頑張ってもらいたいものです。
 中邑はIWGPとしてK−1のリングでイグナショフと戦います。レスラーの強さを求め、積極的に総合のリングに挑んでいく中邑の姿勢は高く評価できます。しかし、この一戦は絶対に負けてもらっては困ります。見事にレスラーの強さを証明してくれることを期待します。
 PRIDEは高田が調子に乗り過ぎです。もちろん読む気はありませんが、自分はプロレスの価値をさんざん下げておいて、自伝だか暴露本たかを出して、私の感覚では彼はプロレスの敵です。よってもうPRIDEには興味がありません。
 1.4は恒例の新日ドームとDSEの「ハッスル1」がぶつかります。新日のドームは相変わらず、辞めて行った武藤、健介頼りでイマイチですが、「ハッスル1」の方も、高田&DSEが仕切っている以上、結局はW−1の二の舞いになるのではないかという気がします。小川はゴールドバーグと戦います。大晦日の格闘技戦に出ないのだから、ここでプロレスの凄さを見せて欲しいとは思いますが、あまり期待はできません。橋本が再び右肩を負傷してしまったのも痛いです。長州、川田との戦いが中途半端なままですが、さらに延び延びになってしまうのではないでしょうか。
 いすれにしても、この年末年始の闘いが、来年のプロレス界を左右します。何とか明るい未来が見える闘いをしてもらいたいものです。