Vol.102 久しぶりに明るい光が見えて来た


 小川のPRIDEGP参戦には驚かされました。久しぶりに飛び込んできたビッグニュースでした。2年前「猪木祭り」でピーターアーツとの対戦が持ち上がったのに出場せず、逃げたと言われました。個人的には、勝算もなく総合格闘技の試合に挑み、あっさりと負けて、そのままプロレスに戻っていくプロレスラーよりは、出ない方がよっぽどましだと思いますので、小川の態度には賛成でしたが、批判の声があったことも事実です。その後、小川はZERO−ONEを主戦場にプロレスに専念してきました。次々とプロレスラーが総合格闘技の試合で敗れていく中、プロレス界最後の切り札と言われながらも、小川が総合格闘技のリングに上がることはありませんでした。
 ところが、ここにきて突然の総合格闘技参戦宣言、しかもPRIDEGPという最高の舞台を選びました。以前であれば、プロレスファンは小川のことをプロレスの代表として素直に認められたかどうか疑問のあるところでした。しかし、最近のプロレスラーとしての活躍で、小川は 紛れもなくプロレス界最後の切り札となりました。結果的に2年前に総合格闘技に出なかったことがドラマチックな演出となりました。しかもPRIDEGP参戦の理由がふるっています。「ハッスルの査定試合と言われたから」何とも痛快な出来事でした。
 その分、リスクも大きいです。参戦した以上は何がなんでも結果が求められます。とりあえす1回戦は元K−1戦士のステファン・レコに圧勝しましたが、そんなものは当然の結果です。それでも近年の総合格闘技に出るレスラーの不甲斐なさを思えば、久しぶりに胸のすく思いでしたが、ノゲイラ、ヒョードルらを倒して、優勝しなければ結果を残したとは言えないでしょう。「ハッスル」の存在は認めていませんが、このまま小川が優勝するようなことにでもなれば、観に行ってあげなければいけないかなという気になります。
 PRIDEGPではミルコがランデルマンに失神KO負けを喫し、1回戦で敗退するという波乱もありました。3強と呼ばれる選手の中でも、プロレスハンターとまで言われたミルコが最も小川に倒して欲しかった選手で、対戦が流れたしまったことは非常に残念でした。
 一方、プロレスの方も4月後半は満足できる興行が続きました。プロレスだ格闘技だと分けるのは間違っていると思います。小川のように「そんなもん関係ねーよ」とどちらでも結果を残すのが本当のプロレスラーだと思います。ただ、それぞれのレスラーがプロレスに対する考えがあり、それぞれの団体に役割があります。全日とノアはプロレスの試合でプロレスの凄さを証明するという立場を取っています。
 全日は国立代々木競技場第2体育館で、チャンピオンカーニバルの優勝戦がありました。川田が負傷欠場し、優勝戦は武藤対健介、おまけにカシン対北斗が話題になるなど、昔の全日を思えば、これがチャンピオンカーニバルかと嘆きたくなるところですが、もう昔の全日を求めてはいかないのでしょう。今の全日は武藤の新しい全日なのです。試合内容も盛り上がりも満足できるものでした。武道館から撤退し、初進出となった代々木第2体育館は、キャパ的にも、雰囲気も今の全日にマッチしていたと思います。優勝した武藤は、狂い咲きを宣言しましたが、10年振りに橋本とのタッグを結成するなど精力的な活動をしています。蝶野も交えて闘魂三銃士復活とのうわさもありますが、プロレス界発展のため大いに狂い咲いて欲しいと思います。
 ノアの武道館大会もありました。こちらも試合内容、盛り上がりとも満足いくものでした。三沢&小川対丸藤&KENTAのGHClタッグ戦もいい試合でしたが、何といってもこの日の目玉は小橋対高山のGHC戦です。プロレスに凄さを証明する試合でした。目先の新しい試合を何試合か並べるより、1本柱で勝負する方が見応えがあります。小橋対高山はまさにそんな試合でした。PRIDEGPと同じ日に行われた大会で、試合後のインタビューで小橋が答えた「高山がGHCのリングを選んでくれて嬉しい」という言葉が、小橋の闘う姿勢を示していました。
 さて一方で、役割を果たさなければならない団体があります。新日です。5.3東京ドーム、5.22さいたまスーパーアリーナのK−1MMAと格闘技路線、K−1との対抗戦路線を選びました。正直言って今や知名度、人気ともK−1はプロレスを上回っています。新日がそのK−1を利用して商売してやろうという気持ちなら、新日は本当にもうおしまいでしょう。本当に喧嘩をしてK−1を叩きのめし、格闘技界の盟主の座を奪い返す気持ちでいてくれることを願います。腐っても鯛、新日にはまだそれだけの底力が残っていると思いますし、K−1とて、PRIDEとの選手の引き抜き合戦など、決して順調な状態ではないはずです。
 4月後半はようやくプロレスが少し面白くなってきた気がします。これが続くかどうかは5月の新日にかかっています。近年は裏切り続きの新日ですが、今度こそ奮起して欲しいと思います。