Vol.110 2004年のプロレス界


 12月5日、全日の両国大会の観戦が2004年の男子プロレス納めでした。内容的にはまあまあという感じ。以前の割り切って観ればそれなりに楽しめるという新日のレベルでした。三冠戦の川田対天山はそれなりの試合でしたが、今や全日と新日の頂上対決といっても団体を代表する絶対的なトップスターがいるわけでもなく、今の全日はメンバーもタイトルマッチを盛り上げていく手法もほとんど新日のようなものですから、特別な意味合いはまったく感じませんでした。
 ムタ対偽MUTAも、ムタがあそこまで変わってしまうと、もう別ものという気がします。それでもムタにはさすがと思わせる動きもありましたが、相手の偽MUTAがお粗末過ぎました。 健介ファミリー対RODはなかなか面白かったと思います。諏訪間対ベイダーもジャーマンで投げ切るなど見所はありました。諏訪間は久しぶりに大物感が漂い、将来性を感じさせる新人です。レスリング技術もさることながら、とにかく体が大きいのが魅力です。
 女子の方は26日の全女後楽園大会を観戦しました。これが2004年のプロレス納めとなりました。年末恒例のタッグリーグも今年はトーナメント形式となり、出場チームも小粒でした。所属選手は数人になり、この日も他団体の選手が多数参戦していました。相変わらず経営状況も悪いようで、客入りもまばら。かつての全女の面影はまったくありません。それでも試合内容はそれなりにいいものを見せてくれました。
 さて、2004年のプロレス界を振り返ってみると、この年末の2興行にも象徴されていますが、団体というものの価値が崩壊したという気がします。新日があの体たらくぶりで、年末には天山が健介からIWGPヘビー級を、棚橋&中邑の新世代コンビが鈴木からIWGPタッグを奪回し、何とか帳尻あわせをした感じがありますが、この1年の新日は本当にはひどいものでした。5月に中邑がイグナショフに勝利し、プロレスの威厳を少しだけ取り戻せたかなと思いましたが、それも遠い昔のことのように感じられます。以降は中途半端な格闘技路線とファン不在のプロレスを展開し、ほとんど会場に行く気にはなりませんでした。
 全日にしてもかつての王道マットとはかけ離れたものとなっています。インディーの選手が多数参戦し、新日とも普通に交流しています。武藤と三沢のタッグ初対決、タッグ結成は本当に夢があり、今年で唯一といっていいくらいの心がワクワクした出来事でしたが、全日とノアが再び交わることになるとは思ってもいませんでした。
 一番しっかりとしたプロレスをやっているのがノアということになるのでしょうが、それでもかつての全日のレベルには及びませんし、対世間ということを考えると、何か小さくまとまっているという気がします。
 女子に至っては男子以上に混沌とした状態で、最大手となったGAEAの解散が決まり、もはや単独で興行をうあっていける団体はありません。
 変わって台頭してきたのが、健介のMVP獲得に象徴されるようにフリーの選手です。天龍、高山、鈴木みのるらが複数の団体のリングび上がり、活躍してきました。元新日本取締役の上井氏が彼らを中心にイベント会社を設立したことも話題となりましたが、2005年もこの流れは加速していくでしょう。だからといってフリーの活躍が世間に届いているかというと、そんなことはなく、あくまでもプロレス村の出来事という感じで、プロレスはK−1やPRIDEに押されています。
 K−1もPRIDEも決していい状態ではありません。PRIDEの試合内容には失望することが多いですし、武蔵程度の選手をああまでして無理やり勝たせようとしたK−1GPもひどいものでした。小川がPRIDEで負けてしまったのも本当に残念な出来事でした。最後のチャンスを逃したという感じです。その後、小川はリベンジもせず、エンターテイメント路線をひた走っているようですが、そんな小川にはもはや何の価値もありません。
 プロレスがしっかりしさえすれば、総合格闘技になど負けるわけがないはずです。価値観の多様化といってしまえば、それまでですが、プロレス団体は分裂し過ぎました。再編成が必要だと思います。そして何より、本当のスーパースターの出現が望まれます。俺がこの団体の選手、スタッフ、その家族の生活を支えているというような絶対的存在がいれば、団体の価値が崩壊することはなかったと思います。俺がプロレス界を背負って闘っているんだという絶対的な存在がいれば、総合格闘技に押されることもなかったと思います。早く真のスーパースターがプロレス界に出現してくれることを切に望みます。