増刊号 破壊王よ安らかに


 11日午前10時36分、橋本真也が横浜市内の病院で脳幹出血のため亡くなりました。40歳でした。意識朦朧ので病院に運び込まれたときには心停止状態で、すぐに死亡が確認されたということです。高血圧だったとか、心臓の調子が悪かったとかいう話しもありましたが、それにしてもあまりに急なことでした。
 午後3時頃にヤフーのニュースが流れましたが、すぐに知人からメールが入り、訃報を知りました。スポーツ新聞のサイトで報じられているのだから、本当なのだろうとは思いながらも、やはり信じられない思いでした。インターネットというものも便利なのだか、そうでないのかよく分かりません。
 橋本とは同世代ですし、若手時代から20年間、ずっと見続けてきました。ヤングライオン杯の決勝で、ともに黒いショートタイツ姿で、蝶野と闘い、スモールパッケージで敗れた試合もはっきりと覚えています。当時、長州軍、UWFが大量離脱し、猪木も体力的に衰えたといわれ、どん底状態だった新日本にあって、橋本、武藤、蝶野の後に闘魂三銃士と呼ばれることになる三人の若手の元気なファイトが、唯一の希望の光でした。
 それぞれが海外遠征に旅たち、帰国して闘魂三銃士として脚光を浴びるようになり、第1回のG1では、まさに時代が変わりました。あの若造たちがメインエベントでこんなに素晴らしい試合をするまでに成長したのかという、あの時の感動は今でも忘れられません。
 以降は、蝶野がヒール的な魅力を出し、武藤は天性の明るさと才能を輝かせたのに対して、橋本は強さの象徴として、新日本を、プロレス界を引っ張っていきました。トニー・ホームとの異種格闘技戦、天龍との魂の闘い、IWGP奪取、G1制覇、Uインターとの対抗戦で高田に食らわした垂直落下式DDT。数々の名場面を残してくれました。
 そして近年のプロレス界では唯一の名勝負と呼んでもいい、小川との一連の闘い。初対決で敗れたときは、本当に馬鹿野郎と思いました。再戦はわざわざ大阪まで観に行き、溜飲を下げまし た。負ければ引退と言って敗れたときは、本当に辞めてしまえと思いました。闘った者同士にしか分からない絆で結ばれた二人はOH砲を結成しましたが、いつかはもう一度あの闘いを見せてくれるのではないか。雪辱を果たしてくれるのではないかと思っていましたが、それも叶わぬ夢となってしまいました。
 新日を離脱してZERO−ONEを旗揚げしましたが、ハッスルへの参加には納得できないものがあり、ノアや全日と夢の対決を実現したときにはよくやったと思い、いいことも悪いことも含めて、その生き様に思い入れが持てるレスラーでした。
 ZERO−ONEも離れ、肩の手術をして、長期欠場中でしたが、もうそろそろ復帰できるだろう。低迷する今のプロレスを活気づけてくれるのは橋本しかいない。特に惨状著しい新日本に復帰して建て直して欲しいと思っていた矢先のことだったので本当に残念です。心に大きな穴がポッカリと空いてしまったようです。この穴を何で埋めればいいのでしょうか。
 今はただ月並みな言葉で締めるしかありません。謹んでご冥福をお祈り致します。
Vol.116 6月の話題

 6月のプロレス界の話題は、まず新日はイタリア遠征を行いました。これはいいことだと思います。世界を視野に闘うのはとてもいいことです。タイガーマスクというキャラクターは世界中どこに行っても通用すると思います。もっと海外進出の機会を与えるべきだと思います。
 そして新日の6月はジュニアリーグの季節でもあります。もはや完全に定着していますし、新日ジュニアの試合内容には定評があります。その割には、ジュニアの扱いが中途半端でした。間にイタリア遠征があり、U−30王座などというものが何故か復活することになってしまい、王座決定リーグ戦が平行で行われ、焦点がぼやけてしまいました。この季節はもっとジュニアにスポットを当てるべきではないかと思います。
 そして、リングの話題よりも注目を集めていたのは、サイモン・ケリー猪木新社長の就任でした。別に誰が社長をやろうが、プロレスとはあまり関係ないことだと思います。そんな話題に負けないようにレスラーがリング上から話題を発して欲しいものです。
 ノアではドームに向けて、力皇対棚橋のGHC戦、天龍対小川の追加カードが決まりました。丸藤&KENTAのジュニアタッグ王者が破れ、それぞれシングルに目を向けるという新しい展開もあり、金丸対KENTAのGHCジュニア戦も決まりました。ドームに向かって盛り上がっていく雰囲気は非常によく、ノアのドームには大いに期待していますし、間違いなく盛り上がるだろうという信頼感もあります。
 全日では、ようやく復帰した大型新人の河野が退団し、総合格闘技に進出するというニュースがありました。せっかく総合に出るのならば、元プロレスラーとしての誇りを持ち、是非、結果を出して欲しいと思います。
 アマレスのインカレ王者の実績を持つ、超大型新人入門の話題もありました。大きくて、とにかく強いというのが本来のプロレスラーのイメージですから、そうした人材をもっと積極的にスカウトしていくべきだと思います。
上井ビッグマウスの旗揚げがようやく決まりました。W−1GPとしてトーナメントが開催され、ムタ対曙、健介対長州が発表されました。延び延びになっていたので、本当に旗揚げできるのか疑問に思っていましたが、久々に興味は引かれるビッグカードをぶちあげてくれました。K−1とPRIDEのGPの二番煎じという感があるトーナメントが果たしてプロレスでうまくいくのかというのはありますが、低迷しているプロレスの起爆剤になってくれることを期待します。
 最近のプロレスで気になることは、チャンピオンの存在感が軽んじられているということです。武藤は小島が王者として、興行を締められる実力も人気もないと言っています。実際その通りだと思います。でも、それならば何故、小島を王者にしておくのかということです。挑戦して自分が王者になればいいのです。7.26代々木で小島対武藤の三冠戦が決まりましたが、武藤は絶対に勝たなければならないと思います。力皇の初防衛戦にはブーイングが起きました。実際、今の力皇は王者と呼ぶに相応しくはありません。もっと相応しいレスラーが挑戦して勝てばいいのです。天山に至っては論外ですが、新日の場合は、他に王者に相応しいレスラーも見当たりませんし、空位にするのが一番いいのではないかと思います。
 そんな状態になってしまったのは、チャンピオンというものを軽く扱ってきたことが原因だと思います。チャンピオンベルトは皆で持ち回りするものではなく、団体を背負うトップレスラーが持ち続けるべきものだと思います。
 格闘技の方では、K−1は欧州GPとジャパンGPがありました。日本と世界の差は相変わらず歴然でした。日本人の試合はつまらなかったです。サップもK−1流の戦い方を身に着けて、すっかりつまらなくなってしまいました。
 PRIDEはミドル級GPの準々決勝があり、桜庭がアローナに惨敗しました。今のPRIDE殴り合いが主体となっているので、パワーの差が歴然でした。桜庭はもう限界だと思います。日本人の格闘家も続々と参戦していますが、プロレスラーではないので思い入れがありません。別に競技として面白ければ、日本人などいなくてもいいのですが、K−1の武蔵のように、無理にスターを仕立て上げようとしてもうまくいきませんから。でもやはり日本人のプロレスラーが、ヒョードルやシウバをスカッと倒して欲しいとは思いますし、そうしなければプロレスの復権はないと思うのですが。
 そしてヒクソンが久しぶりに来日し、試合をする意欲はあるが、オファーがないと言っていたというニュースもありました。高田がヒクソンの敗れたことが、プロレス凋落の根本であったと思うのですが、結局、プロレスはヒクソンにリベンジすることなく、大きな汚点を残したままになってしまうのでしょう。情けないことです。