Vol.117 WWEスーパーショウ&ノア東京ドーム


 WWEに行って来ました。今一番面白いと思えるプロレスがWWEです。今回は前回のTVショー形式ではなく、ハウスショーでした。当初はスマックダウンとロウが同時に来日し、名古屋と神戸で同日開催、東京で2日連続開催の予定でしたが、ドラフト制度により両ブランドの選手が入れ代わることになったという本国の事情で、両ブランド合同開催によるスーパーショウに変更となりました。これにより名古屋と神戸の大会は中止となり、楽しみにしていた方には気の毒でした。こうした変更は褒められたことではありません。ただ都内に住む私にはスマックダウンとロウの興行が合同興行に変更となったということで、むしろ貴重なものが観れるという感じでした。発売と同時に売り切れ、チケットを買うことができなかった初来日の頃と比べれば、だいぶ状況も落ち着いてきており、今回はチケットも楽に取れましたし、会場には空席もありました。そうした事情もあるのかもしれません。
 全体的には、やはりTVショーの方が華やかで、まさにWWEという感じがします。進行のテンポもいいです。今回のハウスショーは、日本ということを意識していたのでしょう。しっかりと試合を見せるという感じでした。初日は4時間でちょっと長過ぎました。フナキとTAJIRIをいいポイントで使ったのはいいですが、曙は不要だった気がします。会場でもあまり歓迎ムードはありませんでした。むしろ日本を意識せずアメリカでやっているままのWWEを見たかったので、そういう面ではちょっと不満が残りました。
 ただ最近の日本人の試合より、よほどしっかりとレスリングをしていましたし、いい試合をしていました。初日のメインはバティスタとシナの両王者の超豪華タッグ、相手もトリプルH&JBLという貴重なタッグ戦でした。バティスタとシナは新世代の王者で、人気・実力とも抜群です。筋肉隆々の体も見事ですし、キャラクターもいいです。ただ試合運びはまだまだという感じです。対してJBLとトリプルHの試合巧者ぶりは名人級です。おまけにミスタープロレスのリック・フレアーがセコンドについたのですから、見応え十分の試合となりました。アンダーテイカー対アングル、ミステリオ対エディ・ゲレロもまさに名勝負でした。いきなり新ディーバのクリスティ・ヘミが登場。トーリーとステイシーが揃って登場し、TシャツプレゼントとHBK&クリス・ベンワの呼び出しを行うというのもしっかりとツボを押さえています。
 2日目もバティスタ対トリプルHのタイトルマッチ、シナ対JBL&ジョーダンのハンディキャップマッチ、HBK対Y2Jなど好カードが並びましたが、何といってもアンダーテイカーの存在感が際立っていました。アンダーテイカー&ケイン&ミステリオ対アングル&エディ&エッジという超豪華6人タッグがこの日のベストマッチでした。そして中でもアンダーテイカーは本当に素晴らしかったです。
 ノアの東京ドームにももちろん行って来ました。こちらは今、日本で一番面白いと思える団体です。客入りもよかったですし、盛り上がりました。時間通りに始まり、無駄な演出もなく、試合が長過ぎることまなく進行していったのもよかったです。ムシキングだけが私にとっては余分なものでした。子供のファンを獲得するのは大切なことだし、そのためにはいい試みだと思います。ただ当日に2時間半のテレビ中継があるのは画期的なこととはいえ、夜中の2時です。子供が見れる時間ではありません。他は東スポを読んでる人くらいにしか伝わらないのでは、どうやって子供に届くのでしょう。新日のタイガーマスクにしても同様の状況です。プロレスを総合格闘技と分けて考える風潮といい、プロレスが閉じた狭い世界のものになってしまっている現状が本当に残念です。
 前半戦のベストマッチは金丸対KENTAのGHCジュニア戦です。KENTAの王座奪取という結果も良かったですし、内容も素晴らしく、十分に説得力のある試合でした。GHCタッグ戦は、橋がどこまで頑張るかがポイントでした。そこそこ頑張ってはいましたが、まだまだだったというところです。GHCヘビー級戦手権は7試合目にラインナップされました。当然の試合順だと思います。力皇がノアの代表であるとはとても認められないし、相手の棚橋も新日を代表するレスラーとは思えません。初めから2人の対決に夢など感じられませんでした。休憩時間もなかったので、試合前にトイレとタバコのために席を立ちましたが、ロビーには結構人がいました。皆同じように感じているのだなあと思いました。試合は、おっと思うような場面は1つもありませんでしたし、結果もむしろあっけないほどで、何のインパクトもありませんでした。チャンピオンを変えるか、力皇を早急にもっと成長させるか、もっと王者というものを大切にして欲しいと思います。
 そして後半は運命の対決3試合です。天龍戦の入場シーンから館内のボルテージも上がりました。ただ天龍対小川は少しあっけなさ過ぎるくらいの試合でした。2人の力差を考えれば致し方ないところでしょう。小橋対健介は素晴らしかったです。小細工なしの力と力のぶつかり合いで久しぶりにこれがプロレスだ。これがプロレスの素晴らしさだと思える試合でした。健介は長州と決別して本当によくなりました。W−1での長州戦が正念場だと思います。よもや負けることはないでしょうが、長州を完全に消し去って欲しいと思います。そうすれば更にもう1つ上に行けると思うのですが。
 メインは三沢対川田です。試合前はこれぞ夢の対決と思っていました。確かに素晴らしい内容でした。ただ不思議と心に訴えてくるものがありませんでした。セミに食われたというわけではないのでしょうが、小橋対健介の方が遥かに心に響きました。要はタイミングの問題なのでしょう。小橋対健介はまさに旬の状態で実現しました。三沢対川田は、ギリギリ間に合ったと思っていましたが、実はもう遅かったのだと感じました。本当に夢の対決というのは難しいものです。
 全日の代々木にも行きました。台風が直撃し、交通を心配しましたが、ほとんど影響はありませんでした。客入りも良かったです。
 メインは王者小島に武藤が挑戦する三冠戦で、とにかく武藤に思い入れがありました。小島に対して王者失格と言い放っていたこともあるし、橋本の件もあり、三銃士世代にここでもう一花咲かせてもらいたいという思いがありました。とにかく武藤に勝って欲しかったのですが、最後は小島のラリアートの連打を浴びて敗れました。あえて受けていたようにみえたのが余計に切なかったです。いい興行だったので、最後に武藤が締めてくれれば最高にハッピーだったと思うのですが、非常に残念でした。勝った小島がマイクで締めましたが、私は小島はまだ顔じゃないと思ってしまいます。
 この日のベストバウトは健介&中嶋対近藤&YASSHIのアジアタッグ戦でした。VMは久々に現れたヒールらしいヒール軍団で、この試合は、散々苦い思いをさせられてきた健介ファミリーの怒りが遂に爆発し、悪を蹴散らしたという非常に分かりやすい試合でした。単純明快、気分爽快、プロレスはこうでなきゃという感じでした。中嶋の頑張りもあり、最近の健介の充実ぶりもありますが、VMがヒールに徹していることで、健介ファミリーがベビーフェースとして光りました。やはりベビーフェース対ヒールという図式は重要なことだと改めて認識させられました。
 もう1つのVMの決着戦がRODとの8人タッグでした。RODはVMと違って、最近流行りのヒールだかベビーだかよく分からない軍団ですが、この日は超大物の蝶野を参戦させたことで大いに盛り上がりました。
 ジュニアのホープ、石森太二も素晴らしい動きで印象に残りました。カズ・ハヤシとのシングルでしたが、いい試合でした。宮本はまったくいいところなく川田に敗れました。今どき単身で海外武者修行を行うというのは賞賛に値することだと思いますが、残念ながら今回の帰国では結果を残せませんでした。今後に期待というところでしょうか。