Vol.140 時代遅れと言われても


 KKロングセラーズからアントニオ猪木の著書「元気があれば何でもできる!」講談社+α文庫から山本小鉄の著書「プロレス 金曜8時の黄金伝説」が出版されました。古いと言われようと、時代が違うと言われようと、2人の言うことにはすごく共感できます。
 その猪木の新団体IGFが6月29日、両国国技館で遂に旗揚げしました。結局カードは一つも決まらないまま当日を迎えました。あまりいいこととは思えませんが、猪木らしいともいえます。結果的には、凄く良い興行だったと思います。思ったより客席も埋まりましたし、熱気がありました。久しぶりにプロレスらしいプロレスの興行を観たという感じです。大満足でした。
 PPVの放送席の映像でスタート。辻アナウンサー、東スポの柴田さん、猪木も登場してのトークでした。猪木推薦試合として、石川対澤のバチバチファイト、ロッキー・ロメロ対エル・ブレイザーの空中戦が行われました。どちらもいい試合でした。ここで猪木が舞台に登場し挨拶。参戦選手が映像で紹介されました。予想以上に豪華なメンバーが揃ってワクワク感がありました。
 そして第1試合。ここからが本編というところです。ランデルマン対アレク大塚でした。続いて小原対タカ・クノウ。どちらもいい試合でした。第3試合は田村&上山対松田&小武。田村の参戦は意外でしたが、U−FILE提供ダブルバウトという形でした。私にはUスタイルはまったく面白いものではなく、会場も同じように感じていたようで、ここで中だるみしてしまいました。
 ただ休憩もなく有名選手が登場する後半に入ったことで、雰囲気が壊れることがなかったのは良かったです。まずはバーネット対安田でしたが、安田は全然ダメでした。バーネットが素晴らしい選手だけに、もったいなかったです。続いて小川が橋本のテーマ曲で入場。コールマンにSTOからスリーパーで勝ったものの、まだまだの内容でした。IGFに参加したのは良かったと思いますが、もっともっと頑張らなければなりません。
 そしてメインはレスナー対アングルでした。バーディクトを受け、カウント2で返したアングルがアンクルロックで勝利し、感動的な結果となりました。最後に猪木が舞台に登場し、全選手が再びリングに。1、2、3、ダーで締め、大満足で会場を後にすることができました。新しくはありませんでしたが、見たかったプロレスがありました。
 さて、話は変わって、6月2日、DynamiteUSAが開催されました。アメリカに乗り込んで10万人規模の大会場で興行を打つ。世間に訴える大きなことをやるべきだという猪木と小鉄の主張はもっともで、今のプロレスに足りないものです。K−1にやれらているようでは全然駄目です。
 桜庭とホイスが7年振りに再戦しました。テレビで見た限りでは、桜庭の動きは思っていたよりも良かったですし、ホイスに劣っていたところは何一つなかったと思いますが、ブーイングを浴びるような凡戦をし、判定負けをしたことは紛れもない事実です。伝説の名勝負も色あせてしまいました。こんなルールで、状況で、こんな結果になって、再戦をする必要があったのかということです。これも猪木と小鉄の主張通りですが、勝利にもっと執念を持つべきだし、一つの勝負というものをもっと大事にするべきです。レスナーがプロレスラーの強さを見せてくれたのは良かったです。
 6月はジュニアの季節というのが定着しました。ジュニアの試合は面白く、今やヘビー級より 上かもしれません。ジュニアにはジュニアの素晴らしさがありますが、やはりプロレスラーは規格外にデカくなければなりません。猪木と小鉄も言っていますが、レスラーの小型化がとても気になります。
 ノアは今のプロレス界で一番のクオリティーと安定感といわれています。6月は札幌で三沢がバイソンからGHC王座を防衛し、横浜では秋山&力皇がROHのブキャナン&ブラウンからGHCタッグ王座を防衛。丸藤と村上の抗争などがありました。ただノアはプロレスファン、ノアファンに信頼されるようないい試合を提供しているだけで、世間に訴えるパワーはありません。ノアはそういう団体なので、それでいいのだと思います。猪木と小鉄の主張通り、プロレスは世間に訴えることが必要ですが、対世間に打って出るのは別の団体の仕事です。
 独自のスタイルで、全面的に賛成はしかねるものの、対世間で今、インパクトを残しているのがハッスルです。ビッグイベントのハッスルエイドでは、HGがマスクとハードゲイコスチュームを賭けて天龍と対戦。ムタがRGとタッグを組んで、インリン様と対戦と、ある意味で夢のカードが実現。元読売巨人軍の最強助っ人クロマティも登場し、話題を集めました。劣勢だったハッスル残党軍がモンスター軍に全勝し、天龍が高田総統に追放を宣言され、新たな展開にもきあたいさせられます。あのアイデアとドラマ性には見習うべきものがあると思います。
 最後に、クリス・ベノワが死去。しかも妻子を殺害して自殺したのではないかというショッキングなニュースがありました。何があったのか分かりませんが、また一人非常に惜しいレスラーがなくなりました。ご冥福をお祈りします。