Vol.185 震災と橋本大地のデビュー


 私にとって最も思い入れがあるのが闘魂三銃士です。同世代で、プロレスを生で観戦するようになったときに彼らも新人で、前座で戦っていました。それからずっと見続けて来ました。橋本真也が亡くなったときは本当にショックでした。そして長男の橋本大地がデビューすると聞いたときは何とも嬉しかったです。ゼロワン10周年の両国大会で橋本大地のデビューが発表され、しかも対戦相手は蝶野正洋ということで、これは久し振りに見逃せない大会と思い、早速チケットを買いました。
 3.6遂にその日が来ました。まずはテレビ解説を務める武藤敬司がHOLD OUTで入場、続いて蝶野正洋がCRUSHで入場。そして橋本大地が前奏ありの爆勝宣言で入場しました。入場シーンだけで胸が一杯でした。
 体も技術もまだまだでしたが、力比べからブリッジして返す動きを見せたのは評価できます。ロープに詰めた蝶野に張り手を見舞った気持ちも良かったと思います。蝶野にだいぶ付き合ってもらって10分は持ちましたが、最後はSTFに沈みました。
 試合後は武藤もリングに上がって、闘魂三銃士の3ショット。武藤が「次は俺とやろう」と言ったのも嬉しかったです。橋本大地もしっかりと挨拶をして、再び爆勝宣言で退場。また胸が一杯になりました。
 ゼロワンの10周年大会としてもこの興行には大きな意味がありましたが、両国国技館を席を潰さず、格好のつく程度には入っていましたから成功だったと思います。
 非常に盛り沢山な全9試合でしたが、第1試合からNWA世界ジュニア選手権でした。クレイグ・クラシックという選手はなかなか面白いと思います。第2試合は10人タッグで、ほとんど知らない若手、外人選手でしたが、やはり越中の存在感は際立っていました。楽しい試合でした。菅原&ハブ男対W藤田のNWAインターライトタッグ選手権は、レフェリーSUWAが結局、菅原の味方だったという試合でした。日高対伊藤のインターJr選手権は、2人のライバルストーリーがありましたが、申し訳ないですが、私には何の思い入れもなく、感じるところはありませんでした。厳しい言い方をすれば自己満足の世界を出ていない。ストーリーを世間に伝えなければ意味がないと思います。NWAインタタッグ選手権は、澤田、コリノ、レフェリーを敵に回しながら、耕平とKAMIKAZEが勝利するというアメリカンな試合でした。澤田なんてどうでもいいので、ゼロワンの10周年なので出来れば小川に出て欲しかったと思いましたが、そういえば小川は何をしているのか、何をしたいのか、さっぱり分かりません。
 橋本大地デビュー戦をはさんで後半戦は、まず田中将斗対永田でしたが、2人はいい試合を繰り広げていました。この日もいい試合でしたが、田中が完全にスリーカウント取られているのにカウントしないという致命的なミスもあり、今日はゼロワン10周年で花を持たせてあげました感が露骨に出てしまいました。世界ヘビー級選手権も、崔が関本から奪回するだろうとは思いましたが、こちらは白熱の勝負で、崔の勝利にも説得力があり、良かったです。
 メインはゼロワンの10周年なら、やはり大谷しかいません。相手は高山で、是非勝って欲しかったのですが、負けてしまいました。それでも試合後のマイクを聞いたら、大谷らしくて良かったのかなと思いました。負けても何度でも立ち上がるという宣言。プロレスが大好きですかという問いかけは良かったです。
 最後はゼロワンの全選手がリングに上がり、欠場中の星川もリングに上がって、立ち上がるということもあり、とても感動的なフィナーレでした。最近ちょっと自信をなくしてしまいそうでしたが、自信を持って、プロレスが大好きだ。プロレスって素晴らしい。と言える興行でした。  この日は後楽園ホールで昼に全日、夜に新日の興行がありました。昔ならトリプルヘッダーをやっていたところですが、今はすがに、ゼロワンに専念しました。
 全日は、金本&稔の復活ジュニアスターズがメインを取り、カズ&近藤のチーム246に勝利しました。ケア&大森が査定試合で、KONO&ドーリングに勝利しました。
 新日は旗揚げ記念日としてNJCの1回戦で注目の対決が行われました。真壁が小島に勝利し、中邑が後藤に勝利しました。どちらも期待通りの結末で良かったです。
 前日の5日にはノア有明大会がありました。4大タイトルマッチで、それぞれ経緯もあり、前哨戦もあったのですが、何かインパクトに欠けた気がします。客入りも全然でした。新日の外人選手がGHCヘビーに挑戦というのは面白いと思いますが、バーナードでは微妙なところです。潮崎の怪我も痛かったです。DOの内紛もノアらしくない気がします。
 そして11日に大震災がありました。東北地方と聞いてまず、みちのく、仙女のことが気になりましたが、幸い早い段階で選手、スタッフの無事が確認されました。仙台にいたケンドー・カシンが一時消息不明というニュースが入りましたが、その後無事が確認されました。全日が東北ツアー中だったということもありましたが、こちらも全員無事でした。その後の余震、電力不足、原発の放射能問題と、未だに影響が続いています。プロレス興行も中止、延期が相次ぎました。
 そんな中、21日の全日両国大会は開催が決まりました。いろいろ考えましたが、レスラーはプロレスを通じてメッセージを発信するしかない。プロレスファンはそれを観るしかないと思い、観に行きました。客入りはガラガラでしたが、こんな状況ですから仕方のないところです。でも、もちろん熱気はありました。試合前、蝶野が募金活動をしていました。いい形で募金が出来て本当によかったと思います。
 まずは1分間の黙祷に始まり、オープニングはVMの挨拶で、久し振りにbrotherYASSHIも登場して、悪態をつきながら元気づけてくれました。VMらしくて、とてもよかったです。ベイダーが来てくれたことも嬉しかったです。
 デビュー2戦目で、ともに両国で蝶野に続いて武藤と対戦することとなった橋本大地は、シャイニングウイザードをカットしての逆シャイニングウイザード、ニールキックで見せ場は作りましたが、武藤が言ったように「正直まだまだ。ゼロだ」です。「多くの人がゼロから出発になったのだから、その人たちの見本となるレスラーになれ」まさにその通りです。
 新人賞の岡林を初めて見ましたが、関本に負けないくらいのガタイをしており、なるほど新人賞も納得と思いました。背は低くても、これだけのガタイがあればレスラーの凄さをアピールできます。征矢&真田もガタイは立派で、アジアタッグ戦は本当にプロレスの素晴らしさがあふれる試合でした。
 セミ、メインの三冠戦、世界タッグは、思い入れしにくい対戦カードでしたが、皆頑張ったとは思います。最後は各選手がチャンピオンカーニバルに向けてアピール、新日の永田もリングに上がって参戦を表明。ノアの秋山の参戦表明メッセージも読み上げられました。全選手がリングに上がり、武藤がメッセージを送りました。観に行って良かったと思います。
 節電で照明は少なく、暖房もなし。ビジョンもなく、あおりVはありませんでした。照明はもう少し明るい方がいいですが、この季節なら暖房はいらないですし、過剰な演出は普段もいりません。それでも4時間超は長いと思います。全日のビッグマッチは長過ぎて、それが足が遠のく大きな要因となっているので、これを機に興行の進行も再考してもらいたいと思います。
 震災後のバタバタですっかり西の方の動きにうとくなっていましたが、20日は兵庫で新日NJCの決勝が行われ、永田が優勝。21日には福岡で杉浦がGHCヘビーV10を達成しました。
 聖地、後楽園ホールも21日から興行を再開しました。とにかくプロレスの持つ力を信じて、前に進むしかないと思います。