Vol.3 君は伝説の虎を見たか?


 もう15年も前のことです。当時、私は高校生でした。小さい頃からプロレスファンでしたが、ミル・マスカラスやテリー・ファンクのファンで、金曜8時の新日の中継はそれほど熱心には観ていませんでした。そのときも金八先生だか新八先生だかを観ていました。そこへ「おい、すごいのが出てきたぞ」うちの親父が呼びにきたのです。その「すごいの」が、初代タイガーマスク、佐山サトルでした。ダイナマイト・キッドとの デビュー戦でした。確かにすごいと思いました。以来金曜8時のプロレス中継は欠かさず観るようになり、やがて当時必ずメインに登場していた猪木にのめりこんでいくわけですが、タイガーマスクがいなかったら、この試合を観なかったら、今ほどのプロレスファンにはなっていなかったと思います。
 残念ながら、生でタイガーマスクを観る機会がないまま、ゴタゴタのうちに佐山はマスクを脱いでしまいました。当時の事情を考えれば、もう二度とタイガーマスクを観ることはできないと思っていました。ビデオですら、肖像権の問題でもあったのか、発売されませんでした。ようやく発売されたビデオの中で、佐山は「タイガーマスクとして過ごした時間は自分の人生において無駄なことではなかった」と話しています。これを 聞いて、涙が出るほど嬉しく思いました。これだけで満足でした。ところが、15年の歳月を超えて、タイガーマスクが再び目の前に現れたのです。これだからプロレスって素晴らしい!わざわざ大阪まで行った甲斐がありました。
 昨年の12月30日、猪木祭りのリングです。虎ハンター、小林邦昭が白黒のショートタイツで登場しました。ゴーゴータイガーのテーマに乗って登場したタイガーマスクがスックとコーナーポストに登ります。ひょっとしたら・・・という期待が膨らみますが、試合はラウンド制、シューティングのコスチュームを着用しているので半信半疑でした。ところが、ローリング・ソバットにタイガー・ドライバー、場外の小林めがけて走り、トップロープとセカンドロープで1回転、そしてサマーソルトキックまで、そこにはまぎれもなく、あの頃のタイガーマスクがいました。何とも幸せなひとときが過ごせました。
 当然、もう一度という話しが出ているようです。二人も、まんざらでもないといったコメントを出しています。もし実現したら、あの頃を知っている人も、知らない人も、是非観に行くことをお勧めします。