Vol.20 長州引退


 長州力が遂に正式に引退を表明しました。小さい頃からプロレスを見てはいたもののこれ程のファンになったのは、タイガーマスクと藤波vs長州の名勝負数え唄で新日本の黄金時代といわれたときからです。以来15年間、長州のファイトを見続けてきました。藤波をラリアートから強引に押さえ込んで、WWFインター王座を奪取した試合、猪木の卍固めをギブアップせずレフェリーストップで負けたこと、全日本での鶴田、天龍との闘い、全日本の中継でインタビューに応えて「藤波と闘いたい」と言ったとき、マサ斉藤のセコンドとして新日本に戻って来たとき、最初のG1で三銃士に敗れて巻き起こった引退騒動、Uインターとの闘いで安生の前に仁王立ちした姿、様々な名場面が今でもはっきりと思い浮かびます。
 新日を離脱したときは許せないという思いもありましたが、そうしなければならなかったというのが、多少分かる気がします。あのままではいつまでも藤波のライバルという立場だったろうし、アントニオ猪木というあまりにも大きな壁があったから回り道をしなければならなかったのだろうと思います。戻って来た長州は、一回り大きくなって猪木とは違うやり方で、新日本のトップに立ちました。一度離れたからこそできたのだ と思います。
 レスラーの凄みを感じられる選手がほとんどいなくなりました。今では長州ただ一人という気がします。今の全日本の完成されたスタイルがあるのも、元はといえば長州がいたからこそです。
 そんな長州の引退は寂しい限りですが、「引退は俺が決めること」「右手をつき上げるようなァイトができなくなった」というのはいかにも長州らしい発言で、ファンといえども口をはさめる問題ではありません。今はただ残された試合で悔いを残さぬように最後まで走り続けて欲しいと思います。力道山が全盛期に不慮の死を遂げ、馬場、猪木がまだ現役でいるために、いい形で引退したトップレスラーが存在しません。長州が良 き前例になってくれればと思います。そしてできれば、噂されている前田との試合を見たいと思います。