Vol.22 G1&ナゴヤドーム観戦記


G1クライマックス(8月1日〜3日)

 今年のG1は、はっきり言ってハズレでした。ハズレた原因はいくつかあると思いますが、まず個人闘争の場であるG1に本隊対NWO軍という軍団構想を持ち込んでしまったことがあげられます。同門対決となったノートン対ムタの結末は不透明でした。そもそも主役の一人であったムタはG1のような個人闘争のシリーズには不似合いなキャラクターでした。もう一人の主役であった蝶野の負傷も痛かったと思います。そして王者である橋本も敗退しました。天山の実力は認めますが、橋本戦で、天山はダイビングヘッドバットの際、ロープに足を引っかけ、宙吊りになるという大失態を演じました。本来ならば、致命的な失敗です。しかし、その失敗を帳消しにする何の説得力もないままに、天山が勝ってしまいました。納得のいかない試合でした。
 出場メンバーにも疑問が残りました。例えば負傷欠場の越中の推薦だからといって、小原に出場の資格があったでしょうか。
 トーナメント形式も、個人的には好きではありません。第2回、3回のトーナメントも低調だったような気がします。3日間の日程は適当だと思います。4人づつ2ブロックによるリーグ戦がベストだと思います。
 それから観客のレベルの低さには、本当にあきれました。天山の声を真似て「シーシー」とうるさいことこの上ありません。ついに決勝戦でも止みませんでした。観戦の邪魔以外の何ものでもありません。あんな状態で名勝負など期待できません。
 3日間を通してのベストマッチは文句なく、高岩対サムライです。技の攻防、餅つきから抱え上げてのデスバレーボムというフィニッシュ、高岩の金星という結末、素晴らしい試合でした。
 もう一つ心に残ったシーンはドン・フライ対藤田の試合後です。試合自体もなかなか良かったですが、やはり小川が乱入したときの盛り上がりと、つづいて猪木が登場し、小川をけしかけ、フライとやり合ったときの「猪木コール」は一瞬、猪木全盛期の新日にタイムスリップしたようでした。今の会場に来ている人たちは、ほとんどがあの頃の新日を知らないと思いますが、それをあれ程盛り上げてしまうとは、やはり猪木は凄い 男です。
 来年のG1に期待します。もちろん全部行くつもりです。

ナゴヤドーム(8月10日)

 日曜3時からなので東京からでも日帰り可能でしたが、土曜日から出掛けて、名古屋城を見物したり、みそカツ、きしめんなど食べてのんびりとしてきました。
 試合の方は、まあこんなもんだろうという感じでした。ムタ対小川は素晴らしい試合でした。小川はプロレスデビュー以来、大舞台で好勝負を展開しているし、一戦ごとに確実に成長しています。柔道での実績も充分だし、あの体格とスピードは、間違いなく一級品の素材です。しかし、相手がムタとなると究極のミスマッチです。一歩間違えば凡戦になる可能性もあると思っていましたが、不安を吹き飛ばして、いい試合になりま した。これまでと違って、小川の良さはまったく出ませんでしたが、プロレスの奥深さとムタの魅力が充分に感じられ、しかも武藤の強さも少し出ていたように思います。何といっても毒霧のタイミングは、まさに天才的です。いつの間にか小川の黒帯をほどき、首を締めていたのにも驚かされました。最後は気づきませんでしたが、腕ひしぎにとりながら、指を二本決めていたというのもさすがです。
 藤波対長州は、序盤は名勝負再現を思わせる攻防でワクワクしましたが、あまりに唐突に終わってしまいました。でも、二人の最後の対決をこの目で見られただけで幸せだと思います。
 橋本はやはり蝶野とやって欲しかったと思います。天山に連敗はしないだろうという思いもありましたし、G1で負けて、防衛戦だけ勝ったところで何だという気持ちもありました。試合自体はいい試合でした。
 大谷対サムライ、金本対ライガーのジュニア2試合は素晴らしかったです。今のジュなりました。でも、ライガーもサムライも老け込むにはまだ早い。巻き返しを期待します。
 他に目を引いたのは安田と藤田です。安田はあの巨体ですから、以前から期待していたのですが、最近ようやく力をつけてきたようです。この日はタイガードライバーを初公開し、今後が注目されます。藤田の風貌はとても好きなんです。この日はあっさりとカシンを破り、先輩越えを果たしました。格闘技路線を進むとか、注目です。逆に敗れたカシン、内輪モメの維震軍は崖っぷちです。よほど奮起しなければ厳しいでしょう。
 それから、いつも感じることですが、ドームというのはやはりプロレスには広過ぎます。それでもこうして何万人という人がプロレスを観に集まり、スポーツ新聞でも大きく取り上げられることは、プロレスファンにとって嬉しい出来事です。ドーム興行はプロレスファンのお祭りととらえるのが正しい見方だと思います。そして、お祭りには参加しなければ意味がありません。
 あとは福岡ドームを残すのみ。ここまで来たら行っとくか!