Vol.24 近頃のプロレス界


 最近のプロレス界で最大の話題といえば、やはり高田vsヒクソンでしょう。結果はご存知の通り、高田の惨敗でした。私にとっては非常に納得のいかない結果でした。まず、大方のプロレスファンが高田の負けを予想していたこと、そしてこの結果を仕方のないこととして受け止めてしまっていることが納得いきません。そして高田は何も出来ず、いともあっさりとギブアップしてしまったことが納得いきません。
 高田とヒクソンが戦えば、高田が好むと好まざるに関わらず、プロレスとグレイシー柔術の決戦になります。高田はプロレス界のトップの1人です。プロレス最強を掲げて闘ってきた男です。安生や山本のときとは違います。ヒクソンは絶対にギブアップなどしないはずです。高田があんなにあっさりとギブアップしたということは、戦う前から覚悟の上で既に負けていたということです。ギブアップするくらいなら、初めから戦わ ない方がいい。
 このままでは終わらせて欲しくない。誰か何とかしてくれという思いはありますが、プロレスを守るために命を賭けるという気持ちがなければ、ヒクソンには勝てません。その覚悟を持たないレスラーが気軽に挑戦を口にして欲しくありません。
 バリトゥードの戦いは、ルールのない戦いのように見えますが、実はグレイシー柔術のシステムの中での戦いという気がします。ああいう戦いで勝つために何十年という歴史を積み重ねたのがグレイシー柔術です。その頂点に君臨するのがヒクソンです。命を賭けてグレイシー柔術を守るという覚悟も持っているし、そういう闘いを実際に経験してきています。プロレスラーが突然、道場破りに現れて、それを受けて立つというのは 賞賛に価します。だからヒクソンと同じ覚悟を持つことが、最低限の条件です。
 グレイシー柔術の土壌の上での戦いで、技術云々ではヒクソンに敵うわけがありません。バリトゥードでヒクソンに勝つにはどうすればいいか?ヒクソンの唯一の欠点は、体が小さいことだと思います。レスラーの最大の魅力は鍛え抜かれた大きな体だと私は思います。体格とパワーで、ヒクソンの技術をねじ伏せるしか方法はないと思います。
 高田はヒクソンより一回り大きいはずなのに、見た目ではむしろ弱々しくさえ見えました。パワーでも圧倒されていました。10ケ月も試合に出ず、体重も普段より軽くなったように思える調整方法にも疑問が残ります。
 プロレスを守るために命を賭ける覚悟があり、格闘家としての技術やスピードもあって、ヒクソンを圧倒する体格を持つレスラーなら勝てるはずです。名前はあげませんが思いあたるレスラーが何人かいます。みなさんも考えてみて下さい。
 さて、長くなりましたが、この話しはこれくらいにして次の話題に移りましょう。高田vsヒクソンの前日にはみちのくが両国でビックマッチを開催しました。デルフィンの復活は嬉しかったし、サスケの怪我を押しての全力ファイトには頭が下がるし、TAKAの「俺はどこに行ってもTAKAみちのくだ。みちプロを潰すなよ」という言葉には感動しました。でも客入りは今イチだったし、内容的にも何か物足りなさを感じまし た。みちのくは経営危機が伝えられています。選手の怪我の問題もあるでしょうが、足元を疎かにして、他団体への出場や、海外遠征など、いろいろなことに手を広げ過ぎたことが低迷の原因だと思います。この際、初心に戻って、そしてサスケはまず怪我を治して、出直して欲しいと思います。
 インディーではもう1つ大きな話題がありました。大仁田の新団体ZENです。FMWは9月30日に川崎球場大会を開催しました。メインの大仁田VS金村は、はっきりいってひどい試合でした。原因の1つとしてデスマッチ自体がもう飽和状態にあることがあげられると思います。インディー団体はどこもかしこもデスマッチ、そして内容はエスカレートする一方です。もう見ていて驚くことはありません。電流爆破の迫力より 小橋の逆水平チョップの迫力が完全に勝っていました。直前の小橋の試合に食われたというのも原因の1つでしょう。
 しかし、何よりも今の大仁田には何の説得力も感じられません。FMWを賭けるといったって、引退を撤回して、嘘つきのどこが悪いと開き直った男の言葉など信じられません。そして今度は金村と手を組んで新団体。勝手にすればという感じです。
 さて、メジャーの方はというと、まず新日本は、健介がIWGPの新王者となり、橋本は小川、藤田らとともに異種格闘技路線に乗り出しました。そしてもう1つの大きな流れは、武藤敬司の正式加入でさらに勢いづくnWoです。nWoがその最大の象徴だと思いますが、プロレスは今や、総合格闘技というジャンルから独立して、完全に市民権を得たという感があります。
 だから異種格闘技戦といっても、今一つピンと来ません。どうせやるならヒクソン、ピーター・アーツ、フィリオ、マイク・タイソンあたりをまとめて打ち破って欲しいところです。
 全日本は相変わらず、王道プロレス路線をひた走ります。開国路線によって他団体の選手も出場し、マンネリ感もなくなりました。だからといって、全日本のスタイルは変わりません。25周年記念興行も派手なセレモニーは一切なし、いつもの武道館で、いつもの三沢対小橋でした。しかし、この試合は凄かった。高田敗戦ショックで沈んでいた私でしたが、「これが本当に強いということだ」という気がして、少しだけ元気にな りました。
 女子プロ界にも大きな変化がありました。これまで核となっていた全女が経営困難による大量離脱で大変なことになりました。不渡りも出して、倒産状態。存続自体が大ピンチという状況です。今回のゴタゴタは選手とはまったく関係ないことで、残った選手も、離脱した選手も、どちらも悪くありません。ただ頑張って欲しいと思うだけです。しかし、現実は厳しいようで、予定されていた両国大会は、採算が合わないということで中止されました。でも、これは正しい判断だと思います。ここ2、3年の全女の大会場はいつもガラガラで、割引券も出回って、大丈夫なのかという感じでした。気づくのが遅かったくらいです。他の団体もこれからは生存競争が益々厳しくなると思います。
 今回はとても長くなってしまいました。今のプロレス界は、見かけ上反映しているようですが、あまりいい状態ではないという気がします。