Vol.37 引退の98年


 今年も残すところあと1ケ月、というわけで1年を振り返ってみると、98年は引退の年といえそうです。 まず1月4日、長州力の引退試合から1年がスタートしました。遙か昔のことのような気もしますが、まだあれから1年も経っていないのですね。当時はまだ猪木も引退しておらず、馬場ももちろん健在ですから、初めての大物レスラーの引退といってもいいケースでした。少し早い気もしましたが、それも長州らしいと思えました。若手との1対5、前半戦に登場と、地味でしたが、それもまた長州らしいでしょう。超満員の東京ドームという最高の舞台で、いい形で送り出すことが出来たと思います。
 長州はその後、新日の監督的な立場となり、頑張っています。プレーイング監督から専任監督になっただけという感じです。とてもいい形の引退だったと思います。
 そして4月4日には遂に、アントニオ猪木が引退しました。こちらもドーム新記録の7万人の観客の前で、とてもいい形で引退できたと思います。長州のときも感じましたが、ドームの長い花道は、引退セレモニーを実に感動的に盛り上げます。
 猪木はその後、新たにUFOを旗揚げし、格闘芸術の追求という新たな道を進んでいます。古くからの猪木ファンにとっては、心の中では、とっくに猪木は引退していたと思います。だから今更、猪木が試合をしようが、しまいが、あまり関係はなく、猪木が思うことをやっているならばそれで満足なのです。
 前田日明もリングスのラストマッチを行い、来年の2月頃にカレリンと戦って引退する予定です。ヒザの具合、たるんだ体を見ると、もう限界という気がします。前田も引退後は、リングスの代表として、これまで選手として進めてきたリングス・スタイルをさらに押し進めていくことでしょう。
 3人の大物レスラーは引退後、プロモーターの道に進みました。レスラーにとっては引退後の進路も重要な問題でしょうから、3人がこうして引退後もプロレスに関わっていける道を作ったのはとてもいいことだと思います。
 他にも保永昇男、マイティー井上が引退し、レフェリーに転身しました。2人とも名脇役といったレスラーですから、レフェリーというのはとてもあっていると思います。
 グレート・カブキも引退しました。あのムタがアメリカでカブキの息子を名乗ったくらいですから、当時のアメリカでの知名度は相当なものであったはずです。日本に凱旋帰国した際にも、大変なセンセーションを巻き起こしました。一時代を築いたレスラーです。
 そして12月27日にはキューティー鈴木が引退します。元祖アイドルレスラーで、女子プロレスを代えた レスラーの1人だと思います。復帰組ではありますが、ジャガー横田の引退も決まっています。
 確実に新しい才能も芽生えてはいますが、こうして引退したレスラーたちのことを思うと少し寂しい気もします。往年の名レスラー豊登の死去という悲報もありました。時代の節目が訪れているという感じです。
 さて、長州力に復帰の噂があります。引退−復帰は、もういいかげんにしてくれというくらい繰り返されていますが、はっきりいって、これはファンに対する裏切り行為だと思っています。長州に限ってはあり得ないと思っています。万が一、長州が復帰なんてことになったら、もうレスラーの引退は絶対に信じられません。 引退興行などというものに特別な思いを込めて駆けつける必要はまったくありません。
 長州復帰の噂の真偽は別にして、天龍ほどのレスラーが、引退したレスラーを引っ張り出すなどと言っているようでは、引退−復帰がファンに対する裏切りだとは、レスラーは思っていないようです。ちょっと考えが甘いのではないかと思います。
 そして毎度お騒がせ、引退−復帰の大仁田が「長州と電流爆破」などと発言しています。復帰後の大仁田の言動には何一つとして共感できるものはありませんでしたが、今度の新日参戦は正直言って、楽しみにしています。新日の会場に乱入なんて、久しぶりにワクワクする事件でした。結局ここに行き着くしかないんだろうなあというのは分かります。電流爆破を主張するのも大仁田としては当然のことです。しかし、引退している長州をターゲットにするというのは納得いきません。
 結局、大仁田の復帰も認めてしまっているファンですが、復帰したレスラーの試合は絶対に観ないくらいのことをした方がいいのではないかと思います。でも、東京ドームの大仁田は観たいんだよなあ。