Vol.48 新日ドームその後、近頃のF、そして全日


「猪木さんありがとうございました!」橋本の叫びで幕を降ろした新日ドーム大会でしたが、あれから早くも3週間が経過し、新シリーズも開幕しました。橋本は欠場しましたが、10月20日には成田空港に現れ、渡米する猪木に「自分もアメリカへ行きます」と伝え、見送りに来ていた小川には再戦を要求しました。橋本はもともと猪木に憧れてプロレスラーになりました。世代的には最後の猪木世代のレスラーでしょう。ハ猪木が小川サイドに付いたことで、一時は猪木を否定していましたが、ここに来て完全に猪木回帰の方向に進んでいます。藤波社長のストロングスタイル指向は、橋本だけでなく新日本全体に猪木回帰現象が起こっていることを示しています。そんな流れは私にとっては待ちわびていたことですし、10.11の東京ドームは本当に居心地にいい空間でした。
 橋本が小川に再戦を要求、小川も受諾したことで来年1.4東京ドームでの再戦も囁かれています。一方であれだけ一方的に負けたのだから橋本はもう終わり。再戦なんてとんでもないという声もあります。厳しいですが、もっともな意見です。しかし、橋本は「あることに気づいた」と言い、小川も橋本を認める発言をしているということは実際に闘った2人にしか分からない何かがあったのかも知れません。橋本は体を張って何か伝えたいことがあったのかも知れません。橋本がもう終わりということはありません。ただ、完全に負けたというのは事実です。いきなり1.4に再戦というのは早すぎる気がします。欠場はプロとして恥ずべき行為です。それなりの実績を積んでから再戦すべきだと思います。
 さて、しかしながら新日本が完全にストロングスタイルの復興に向かっているかというとそうでもありません。相変わらず大仁田の影がちらついています。私としてはもう大仁田は2度と起用して欲しくないし、長州の復帰も絶対に許せません。でも、大仁田が1.4ドームに出る可能性はあると思いますし、その場合、まず間違いなく長州が復帰するでしょう。
 橋本と同世代でありながら、猪木に憧れてレスラーになったわけではない武藤と蝶野は独自のやり方で、自分たちのプロレスをアピールしています。橋本が不在だったこともあるでしょうが、新日本隊の影はすっかり薄くなってしまいました。新シリーズでは、武藤がnWoジャパンを、蝶野がT2000を率いて、引き抜き工作をしたりしながら、軍団抗争を展開しました。この1年の武藤の試合の充実ぶりは充分に評価出来るものですし、蝶野も一時は完全に猪木色を消し去るような存在感を示しました。しっかりとしたレスリング技術を持った2人が自分たちのやり方でプロレスをすることに異議はありません。ただプロレスのおもしろさだけをアピールするのではなく、プロレスの強さをアピールして欲しいと思います。
 さて、話は変わって29日にはFMWの後楽園に行って来ました。最近のFはエンターメント路線で、どうも好きになれなくて、足が遠のいていました。ここに来てその路線も極まったという感じなので、一体どんなふうになったのか見ておこうと思いました。11.23の横浜アリーナもありますが、やはり後楽園ホールの方がいいだろうということで久しぶりに観戦して来ました。
 結論からいうと、つまらなかったです。プロレスのエンターテイメント性は否定しません。アメリカン・プロレスも好きです。アメプロは生で見たことはありませんが、ビデオやアメリカに行った時にテレビで見ました。とてもエキサイティングで魅力たっぷりです。それはアメリカがショービジネスの文化を持っているからであって、日本人がただアメリカン・プロレスの真似をしてみても猿芝居にしかなりません。素人をリングに上げて、レスラーもつき合って、じゃれ合っているのは見ていて不愉快でした。単純に楽しんでいる人もいましたが、私にはこれは違うと感じられました。
 翌30日は全日の武道館大会でした。全日も最近、少し変化を見せています。ノー・フィアーの台頭によりバーニング、アンタッチャブルを交えた軍団抗争の様相を呈しています。そんな中での武道館大会では、バーニング対ノー・フィアーの世界タッグ戦が行われました。個人的には大森&高山はまだまだ口だけと感じてしまうのです。だから小橋&秋山には、もうコテンパンにしてやってくれという思いでしたから、内容的には不満でした。いい試合もいいのですが、たまには圧倒的な勝利も見てみたいのです。
 三冠ヘビー級選手権は、毎度のことながら、そこまでやるか、それでもまだ立つか、という凄い試合でした。本当にケガが心配です。さすがに、三沢もボロボロの状態なのでしょう。ベイダーにあそこまでやられたら、仕方ないです。来年は新三冠王者のベイダーに他の選手がどう絡んでいくのでしょうか。